274 / 379
第275話 後悔①(拓真)
俺は大学の冬休み明けまで実家に居た。
ずっと部屋に閉じ籠り後悔ばかりして過ごしてた。
和樹のスマホに何度も電話やLine入れても連絡が取れない。
何で、連絡取れないんだ?
なぜ、連絡して来ない?
このまま和樹に会えずに、謝る事もできないのか?
ずっと和樹の事を考え、自分のしてきた事を後悔して過ごした。
卒論も提出し、殆ど行かなくて良い大学が始まったと同時に、俺は自分のアパートに帰って来た。
久し振りのアパートの部屋を見て、和樹と過ごした日々を思い出す。
胸のネックレスを握り「和樹、会いたい」と、無意識に言葉が出た。
荷物を置いて、俺は直ぐに和樹のアパートに行った。
大学が始まるし、和樹も部屋に戻ってるかも知れない
謝りたい!
会いたい!
その一心だった。
最寄り駅から和樹の部屋まで走り、部屋の前に着いた
「はぁはぁはぁ……」
荒い息を整え一呼吸し、和樹の部屋のチャイムを鳴らした。
ピンポン♪♪…ピンポン♪♪…
「居ないのか?まだ、戻って無いのか?」
もう一度チャイムを鳴らすが物音すらしない。
ドアノブに手を掛け回すが、鍵が掛かっていた。
直ぐに合鍵で部屋の中に入った。
部屋の中は………何も無かった。
和樹の物は全て無くもぬけの殻だった。
「…………何で?」
シャッターも閉め暗い部屋の中で立ち竦む。
目の前が真っ暗になり、頭がガンガンしてた。
「どこに…どこに行った?」
どうしても信じられなかった。
暫く部屋の真ん中で何も考えられず立って居た。
「和樹…和樹……嘘だろ?……嘘だよな」
涙を拭い部屋を出た。
玄関ドアに背中をつけ考えた。
武史なら知ってるのか?
いや、その前に不動産屋に行って事情を聞いてみよう
ガス、水道の所にぶら下がってるカ-ドを見て不動産屋の住所と電話番号をメモし、電話で聞いても怪しまられると思い直接行く事にした。
不動産屋に行き和樹の友達だと名乗ったが、信用して貰えず身分証を見せ同じ大学だと話した。
しつこく聞く俺に渋々話してくれた。
「一昨日だったかな?明石さんの代理の人が来て、本人は体調悪くし長期の入院になるからって引越しすると言われましてね。まあ、どうせ2月末までだったんで」
「本人じゃなかったんですか?」
「はい、代理の方って言われました」
「どなたか解りますか?」
「それは言えません。守秘義務がありますから。引越しの事も本来は言えないんですよ」
「………解りました。ありがとうございます」
本当に……引越したんだ。
俺に何も言わず……。
駅までフラフラと歩き、今度は武史のアパートに向かった。
武史のアパートのチャイムを鳴らすが出ない。
まだ、実家から戻って無いのか?
それともバイトか?
今日一日で色々あり過ぎて、俺はヘトヘトだった。
武史のアパートのドアに背中をつけ座って待つ。
武史なら何か知ってるはず!
和樹が俺から離れて行く……嫌だ!
絶対に見つけてやる!
暫く経って武史が帰って来た。
俺を見て驚き「……拓真」と声を出した。
俺は武史に詰め寄った。
「武史! 和樹の部屋に行った! もぬけの殻だった! 不動産屋に行ったら引越したって! どこに行ったんだ! 武史なら知ってるだろ?教えてくれ!」
「拓真、取り敢えず部屋に入れ」
武史はやけに冷静だった。
たぶん和樹の居場所を知ってると確信した。
部屋に入って武史は話し始めた。
「和樹はまだ体調が良く無い。食事も受け付け無いし精神的にもかなり参ってる。その状態で1人暮らしは無理だろ?」
「なら、俺の所に……携帯も繋がらない」
「それは無理だ。和樹があ~なった原因は、お前だろ?そのお前の所に行かせる訳にはいかない! それは解るだろ?携帯は、あの雨の中で壊れたようだ」
武史に ‘原因はお前’ と言われ、何も言い返せ無かった
側に居て看病もさせて貰えないのか……。
ギュッと両手を握り締めた。
それでも連絡が取れないのはスマホが壊れた所為だと知り無視してる訳じゃないと……それだけが救いだ。
「和樹の体と精神面の回復を優先させる為にも、お前との距離をとる為にも引越したんだ。和樹も納得してる。いや、そこまで考えられないのかも知れない。取り敢えず、和樹が体と精神面が回復し冷静に考えられるようになったら、和樹も何らかの決断をするだろう」
「いつまで?」
「それは解らない。和樹次第だ。俺達はどう和樹が決断しても和樹の意思を尊重する!」
「和樹…和樹……謝りたい」
「俺は今でもお前を許せない! 和樹がどう決断するかは解らないが、俺は別れてくれた方が良いと思ってる! どんなにお前が後悔してても、この先また浮気するかも知れないし、和樹を泣かすと俺は思ってる! 俺はお前には和樹を任せられないと思ってる。でも、和樹はお前を好きだと……」
「浮気は今後絶対にしない! 誓う! 和樹の側に居たいんだ!」
「どんなに言われても何も言えない! 今は静かに和樹の回復を待つだけだ! 本当は、お前となんか話もしたく無いが……。和樹の様子を教えただけでも良いと思ってくれ! 俺も会ってないんだ、これ以上は解らない。もう良いか?帰ってくれ!」
「………俺は諦めない! 和樹が戻るまで探す!…謝って謝って許してくれるまで謝る! そして2度と和樹を悲しませ無い!………武史、もし和樹と会う事があったら ‘いつまでも待ってる' と伝えてくれ! 頼む!」
「………ああ」
武史の返事を聞いて、ここに居ても武史はこれ以上は話さないと思い立ち上がり玄関に向かった。
部屋を出る前に、武史に「また、来る」と言って部屋を出た。
ともだちにシェアしよう!