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第276話 後悔②(拓真)

武史の部屋に行っても何も得られず、俺は部屋に戻り内田や中嶋.山瀬にも電話してみた。 大袈裟にする事は避け、たわいのない話しから和樹の話しを持ち掛け「体調崩して入院してるって聞いたけど、見舞いに行きたいが病院知ってるか?」 「和樹が入院?聞いて無いぞ。和樹の事なら武史が知ってるんじゃないか?」 皆んな口を揃えて同じ返答をする。 やはり武史か。 俺は山瀬に武史に聞いてくれるように頼んだ。 俺が武史を苦手だと思ってるのは、皆んな承知してる事だ。 山瀬も気にも留めずに了承してくれた。 数時間経って山瀬から連絡があった。  「武史はたぶん病院は知ってると思う。けど、教えてくれないんだ。見舞いに行きたいと言っても、今は安静にするようにって医師から言われてるらしい。皆んなで見舞いに行ったら、迷惑になるから言わないんだろう。状態を聞いたら、前よりは良くなってるらしいが、武史も遠慮して会って無いって言ってたぞ」 「そうか。悪かったな」 「そのうち元気になって戻ってくるさ」 「そうだな」 そう言って電話を切った。 ダメだったか。 武史がダメならと、次の日に大学に行き事務局に向かった。 事務員に和樹の実家の住所と電話番号を聞くが 「プライバシー保護で教えられない」 冷たく突き放された。 実家に連絡すれば、何か情報が得られると思ってただけにがっかりした。 大学の構内をトボトボ…どうするか?考えてると、大野とその友人が歩いてるのを見掛けた。 大野か。 一応、念の為に大野にも聞いてみた。 俺から声を掛けられ驚いてたが、大野も「夏休み明けに飲んだ以来会ってない」と言い、逆に「和樹、どうかしたのか?」と聞かれた。 上手く誤魔化し、その場を去った。  やはり武史に聞くしかない! 武史は高校からの和樹の友達だ。 実家の住所も電話番号も知ってるだろうが、武史は教えてくれないだろうな。 構内のベンチに座り、どうにもならない状態に頭を抱えてた。 「あれ?拓真?何してんの?」 女が2人声を掛けて来た。 こんな時に……。 無視をしてると「会えて、ラッキー♪」「遊びに行こうよ♪」とか言ってきて、煩い! 「煩え~んだよ! どっか行け! 目障りだ!」 俺が睨み大声で罵声を浴びせると 「キャッ。機嫌悪~い」 「最悪! 行こう」 怒ってどっかに行った。 おめぇ~らの相手なんかしてる場合じゃね~んだよ! 前の俺ならイラついてる時に、女から誘われたら憂さ晴らしに付き合ってた。  改めてバカな事をしてた……子供だな。 和樹が俺の事信じようとしてたのに……。 裏切ったのは、俺だ! 和樹…和樹…和樹…… 何とか実家の連絡先だけでも…… そうだ! 確か、和樹と武史の他にも1~2人同じ高校出身の奴が居たっけ! 殆ど付き合いは無いって前に言ってたけど……何度か構内や学食で会った時に、和樹が挨拶程度の会話してたのを思い出した。 良し! 見つけ出して、何とか実家の連絡先を教えて貰おう! 同じ4年生だ、もう殆ど大学には来る事がないし、大学で見つけるのは困難だと判断し、顔が広い中嶋に聞いてみた。 中嶋との連絡はなかなか取れずLineを送った。 “久し振り。和樹の高校出身の奴の連絡先知ってる?武史以外に居たはずなんだけど……” 一先ずは待つ事にしアパートに帰った。 何をするでも無くどうしたら和樹に会えるか?だけを考えてた。 夜にやっと中嶋から返信があった。 “久し振り。和樹の高校出身の奴のLineなら知ってるよ。送っておいた” 流石に顔が広い奴だ。 俺は早速そいつに実家の電話番号を教えて貰うようにLineした。 そいつは殆ど俺と付き合いも無いがLineの返信はきた “本郷からLineきて驚いた😱明石の実家の連絡先は知らないけど、地元の奴に明石の友達だった奴が居るから聞いてみる。解ったらLineする” “ありがと。頼む” これで何とか解れば……。 頼む! それから2日経った頃にLineがきた。 まだか?まだか?と催促したい気持ちを抑え、待ちに待ったLineだった。 祈る気持ちでLineを開いた。 “遅くなった🙏 明石の実家の電話番号はxx(xxxx)xxxxだ” “助かった。ありがと” 実家の電話番号は解った。 ドキドキ…しながら、和樹の実家の電話番号に掛けた ♪♪♪♪~♪♪♪♪~……♪♪♪♪~ 「はい、明石です」 お母さんらしき人が出た。 「すみません。和樹君の高校の同級生の本郷ですが、同窓会を企画してまして和樹君は御在宅ですか?」 「和樹は東京の大学に通ってて、ここには居ないのよお盆とお正月に帰って来る位かしらね~」 「そうなんですか?お正月にいらした時に、連絡すれば良かったなぁ~」 「今年の正月は帰省してないのよ。大学最後だから友達と過ごしてるんでしょ」 「解りました。和樹君から連絡有りましたら、携帯の番号教えますから ‘連絡下さい’ と伝えて下さい」 「はい。でもね、あの子携帯落として壊したらしく今連絡取れないのよ。携帯って壊れたら他の連絡手段が無いから困るわよね」 「そうですね。じゃあ、すみません。同窓会の件ですが、まだ企画段階で人数の確認だけと思いまして……また、連絡しますので、宜しくお願いします」 高校の同級生の振りして電話を掛けた。 家族の人が和樹が入院してるのを知ってるかどうか解らないからだ。 もし知らなかったら心配させるだけだと思った。 あのお母さんの様子から……何も知らなさそうだ。 やっぱり武史か。 俺はそれからは何度も何度も武史のアパートに行き、和樹の居場所を教えてくれるように頼んだ。 俺の必死さは解ってくれてると思うが……武史は絶対に教えてはくれなかった。 ただ 「どうするか?は、和樹が決める事だ。和樹の許可無しでは教えられない。俺も今は会う事すらしてない。お前もそっとしてやれよ」と話すだけだ。 頑なな武史に途方に暮れる。 一目会いたい! 一言謝りたい! そればかり考えてた。

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