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第283話 未来へ…と(海都)
祈るような気持ちでいた。
「……でも…」
言い淀む和樹君に畳み掛けるように話した。
「和樹君の気持ちも解る。俺に悪いと思ってるんだろ?そう思うなら、ここに居て欲しい! 仕事の事も本当に良い人材が欲しいんだ! 嘘だと思うなら並木に聞いても良い!」
和樹君は暫く無言で考えていた。
その時間が凄く長く感じた。
和樹君の人生も掛かってる事だ。
直ぐには、決められないかも知れない。
そう思ってると、和樹君が真剣な顔で話した。
「……朝倉さん。図々しいけど…仕事の事は、お願いしても良いですか?」
俺は喜んで微笑んだ。
「もちろんだよ。初めは申し訳無いが、並木の補佐を頼む事になる。並木は秘書の他にも事務的な事もして ’時間が無い’ と、ぼやいてたから喜ぶよ。もちろん、IT関係も勉強したんだから、そっちも手伝って欲しい」
「ありがとうございます。俺、以前に朝倉さんが会社の事や仕事を楽しそうに話してて、‘凄く良いなぁ~’ って思ってたんです。仕事内容も興味あったし ‘やり甲斐がありそうだな’ って、ずっと思ってました。拓真の事が無ければ ‘就職試験受けてただろうなぁ~’ って。……本当の事言うと凄く嬉しいです」
「和樹君、ありがとう。こちらこそ頼むよ。和樹君がそう思ってくれた事も嬉しい。うちの会社は人数的には少ないが、皆んな優秀で仕事には厳しいが人間的には面白い奴らばかりだ。和樹君なら皆んなとも仲良くできる。ありがと」
和樹君が俺の会社をそう思ってくれた事も入社を決めた事も嬉しかった。
「……でも、住む所は探します。社長と一緒に住むなんて……他の人に対しても………それに俺…まだ拓真の事好きだから……直ぐには…忘れられないし……そんな俺がここに居て…朝倉さんが辛いんじゃないか?……と」
俺の事を気遣ってくれる事は嬉しいが……和樹君が辛かった時に比べれば、そのくらいは大したことない。
どう話せば、ここに居てくれるのか?
取り繕っても仕方ない。
正直な気持ちを伝えるだけだ!
「和樹君、俺はそれでもここに居て欲しい。和樹君が彼の事を忘れられないのも、まだ好きだと言う気持ちもあるのも承知で頼んでる。言っただろ?俺は和樹君の一途な気持ちが好きなんだって。その気持ちが一緒に生活して俺の事を知り、俺に傾いてくれれば嬉しい俺は焦らず気長に待つよ。だから和樹君も無理して忘れなくって良いよ。彼の事を思い出になるまで待つから」
「……でも……いつまでも好きだったら……どうするの?」
「そうだなぁ~……彼の事を好きでも……それよりもっと俺を好きになって貰えば良い話だ。和樹君は俺を好きになるよ。その為に、俺は愛情を惜しみ無く注ぐし努力もする。今は、人として好きかも知れないが、男として俺を好きにさせて見せる。絶対に好きになるから、俺には自信がある」
本当は自信があるわけでもなく、何の根拠があるわけでも無かった。
いい大人がこんなずっと年下の子に必死になり、周りから見たら滑稽かも知れないが……俺には、この子が必要だ!
なりふり構わない。
この瞬間を逃したら……必死にもなる。
和樹君は俺をジッと見て、何やら考えてるようだ。
まだ伝わらないのか?
「……和樹君が俺の事を男として好きになるまで、抱くような事はしないと誓う。信じてくれ!」
和樹君は微笑み口を開いた。
「それは信じてますって言うか、あの時に一度きりって約束をずっと守ってくれたし、もし朝倉さんがそのつもりなら、俺がここに住んで今日までに抱く機会はいつでもあったでしょ?それをしなかった朝倉さんの話は信用できます」
「そうか、解ってくれてたか。ありがと」
そうか、解ってくれてたのは嬉しいが……自分で言っておきながら ‘これで安易には、手出し出来なくなった’とも思った。
「和樹君、どうか俺に時間が欲しい。必ず俺を好きにさせてみせるから。好きなんだ。いや、愛してる。必ず幸せにする。約束する!」
困ったような、それで居て嬉しそうな顔を見せ考えて居た。
頼む! 俺にチャンスをくれ!
「和樹君! 頼む! 直ぐには無理でも、少しずつで良い俺の事を考えてくれ! 側に居て、俺を見ててくれ!」
必死に想いの丈を伝えた。
和樹君は俺の目を正面からジッと見た。
俺も晒さずに見ていた。
数秒間見つめ合う瞳。
和樹君は何も言わずに……頭を縦に振った。
俺は想いが伝わったと確信し、ガバッと和樹君を抱きしめた。
頭を縦に振ったと言う事は ‘了承した’ と言う事だろう
「ありがとう。必ず、和樹君を幸せにするし好きになって貰う。俺はこの先ずっと守って愛し続けると誓う!」
小さな体を抱きしめ話すと、また頭を縦に振ったのが解った。
そして俺の耳元で小さく呟いた。
「朝倉さんは…約束……守る人だ…から」
これからが俺の正念場だ!
今は、まだ俺の事を考えられないかも知れないが、必ず ‘好き’と言わせてみせる。
俺の一途な愛で……必ず。
〜Fin~
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