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第287話 …1年後 ④

「メリークリスマス♪」 「メリークリスマス♪」 シャンパンで乾杯した。 「美味しい♪ シャンパンなんて、お洒落♪」 「後で、白ワインも出そう」 「うん。さあ、食べよう♪♪」 「2人だけなのに多いな」 ダイニングテ-ブルではなくリビングのラグに座り、目の前のテ-ブルにはチキン.ポテト.チ-ズとクラッカー.サラダ.ビ-フシチュー.パンが並べられてる。 「だって~、クリスマスだよ?でも、買ってきた物も多いけどね。後で、ケ-キあるからね♪」 「ケ-キまで腹が待つかな~」 「食べられそうも無ければ、俺のケ-キ1口あげるね?折角だから一緒に食べたい」 「解った。1口分は空けておこう」 和樹に頼まれ、チキンやポテトとパンを買いに行き、帰りに予約してたケ-キ屋にケ-キを取りに行ってる間に、和樹はビ-フシチューを作り部屋の飾りをして居た。 クリスマス仕様の部屋はキラキラ…と明るかった。 クリスマスの日はどこかのレストランで食事でもして、街のイルミネーションを見てロマンチックに過ごすつもりだったが、和樹が「部屋で2人っきりで過ごしたい」と言うからそうしたが、部屋を飾りクリスマスツリーもあったりと、こう言う家庭的なクリスマスも良いと思った。 シャンパンを飲みながら、和樹お手製のビ-フシチューを口にした。 「う.美味い! 和樹、このビ-フシチュー絶品だ! 和樹、どんどん料理が上手くなるなぁ~」 お世辞じゃなく本当に美味かった。 肉は柔らかく口に入れると、ホロホロ…崩れる程だ。 「良かったぁ~♪」 「どこかレストランで食事でもして街のクリスマスツリーとかイルミネーションでも見て歩こうと思ってたが、部屋で2人っきりのクリスマスも良いな。和樹の美味しい料理も食べられるし」 イルミネーションと言う言葉に、和樹が微かにピクッと反応したが気付かない振りをした。 そう言えば、毎年彼とクリスマスにはイルミネーションを見に行ってたと、だいぶ前に聞いた事があった。 まだ、彼の事は完全には忘れられないか? それでも良いと言ったのは俺だ。 今更、どうこう蒸し返すつもりは無い。 今が幸せであればそれで良い。 時間を掛けて俺の事を知り、その上で好きになってくれたんだ。 和樹に俺の想いを伝えて半年程経った時に 「朝倉さん……俺、朝倉さんの事好きです。会社での社長として率先して働く姿や社員が働き易い環境作りをしてる事も尊敬できるし、プライベートでは頼り甲斐があって優しい所が好きです。ずっと側で、見守ってくれてありがとう。返事が遅くなったけど……好きです。今後とも宜しくお願いします」 前触れも無く突然言われ驚いたが、凄く嬉しかった。 思わず和樹の体をギュッと抱きしめた。 こんなに側に居てもやはりダメなのか?と、何度思ったか解らない。 その度に、焦るな.焦るな! と自分に言い聞かせて、ゆっくり想いを伝える事に時間を掛けた。 特に何もせず側に居ただけだが、たまに想いが溢れ何度か好きだ.愛してるとは伝えてた。 やっと想いが伝わった日だった。 その日和樹と暮らし始めて、初めて和樹を抱いた。 それまで和樹が不安定な事もあってずっと一緒に寝てたが、手を出す事は自分でも禁じてた事もあり生殺し状態でシャワー浴びてる時に処理する日々を送って居ただけに、何度も確認するように朝まで和樹を抱いた事を今でも覚えてる。 そのくらい嬉しかった。 1度っきりと言われた時のセックスは、俺もまだ和樹への気持ちがはっきりしてなかった。 その時は好きになりかけてたが、自分で気付かない振りをして庇護欲だと誤魔化してた。 セックス自体は凄く良かったが、やはりお互いの気持ちが伴い愛しさに溢れたセックスは格別なものだった そうだな、こうやって2人で居る事が1番大切な事だ。 俺との時間より彼と居た時間の方が長いんだ、直ぐには忘れられないのも解る。 少しずつゆっくりと時間を掛けて思い出に変わってくれれば良い。 想いに耽ってると、和樹が口を開いた。 「海、どこかに行くのも嬉しいけど、初めて過ごすクリスマスは部屋で過ごしたかったんだ。それに、ここからの景色も凄く綺麗だよ。ベランダから見下ろすと街の灯りがキラキラと光って宝石みたいで」 「そうか、食事済んだらワインを持ってベランダに出て見るか?」 「うん!」 嬉しそうに笑いポテトを口に入れた。 俺もチキンを食べ、和樹が2人で過ごすクリスマスを楽しみにしてた事が解り微笑んだ。 いつもの食事風景と同じようでどこか違う恋人との過ごすクリスマス。 久しく、こんな時間を過ごして無かった。 結婚前には、彼女とクリスマスを過ごしたが、結婚してからは2人共仕事優先になりクリスマス所じゃなかった。 彼女も仕事優先させてたし……もしかして、クリスマスとかイベント事は俺から誘うのを待ってたのかも知れないな。 今更だが、離婚の原因の一因かも知れないと思ったがそれも何年も前だ。 それからはそう言う煩わしさを嫌がり、セフレを作りイベント事は誤解を招くと、誰とも過ごす事を避けた 和樹と過ごすクリスマスに昔の事を思い出した。 好きな人と過ごすクリスマスは改めて感慨深い。 ご馳走がありツリーがあり好きな人が側に居る。 良いもんだなぁ~♪

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