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第288話 …1年後 ⑤
食事を終えワインを持ってベランダ行き、2人で1つ毛布に包(くる)まい和樹の小さな体を背後から抱きしめて外の景色を見た。
「寒く無いか?」
「俺は大丈夫。海は?」
「和樹を抱きしめてるから温かい。お子ちゃまの体温だもんな、和樹は」
「海~! 俺、お子ちゃまじゃないってば!」
頬を膨らませ怒る和樹が可愛い~♪
この可愛い和樹が見たくって、つい揶揄ってしまう。
ははは…ははは…
「冗談.冗談だって。怒るなよ」
背後からギュっと抱きしめた。
「今度言ったら……許さないからね?」
「悪かった、謝る。ごめんな」
「……許す」
可愛い~な♪
直ぐに気を取り直して、外の夜景を見て喜んでる。
「海~、見て.見て♪ やっぱここから見ても凄~い綺麗だね。キラキラして輝いてる~♪」
「本当だな。街路樹にはイルミネーションが施してあるし、店の灯りとマンションの明かりもあって綺麗だ。和樹が言う通りここでも充分だな。それも特等席だ」
都内で星も無い暗闇の中で人が行き交う場所は、イルミネーションと店と住宅の灯りで輝き宝石が散りばめられてるようだった。
「でしょ?ロマンチックだね。ほら見て、部屋の中も」
和樹に言われ部屋の中を見た。
部屋の照明を消しツリーの灯りを点けベランダに出て来てた。
ツリーのオーナメントとライトがチカチカと白と青の電飾が光り輝き、クリスマスの雰囲気を盛り上げてる
「綺麗だ。和樹がツリー飾りたいって言った時には、正直……直ぐに仕舞うしこの歳でツリーも……と思ったが飾って良かった。2人で飾ってる時も楽しかったが……こうやって見ると良いな」
「でしょ?クリスマス終わっても少しの間は飾っておこうよ」
「そうするか」
「うん♪」
ワインを飲みながら暫く外の夜景を見てたが、風邪を引かせても…と思い部屋の中に入った。
「暖か~い。外に居ると部屋の暖かさが解るね」
「そうだな。体、冷えただろ?毛布を掛けた方が良い」
ソファじゃなくラグに座り、2人並んで膝に毛布を掛けワインを飲む。
ここからが俺の正念場だ!
「そうだ、ケ-キ食べる?」
和樹が俺に問い掛けてきたが、俺はそれを制した。
「まだいい。……和樹……これクリスマスプレゼントだ。受け取って欲しい」
ソファに隠してあった細長い箱を渡した。
「ありがとう♪ 何かな♪ 何かな~♪」
嬉しそうな顔をしながらリボンを解き包装紙を取り箱を開ける。
俺はどんな反応をするか?ドキドキ…しながら固唾を飲んでその姿を見ていた。
和樹は箱の中を見て驚いた顔をし、直ぐに破顔した。
良かった~♪
喜んでくれた事もだが、俺の意図してる事も解ってくれたようだ。
箱からネックレスを取り出し喜ぶ顔で話す和樹。
「こんな高そうなネックレス良いの?」
そう、俺がクリスマスプレゼントに選んだのは'"ネックレス'' だ。
和樹の首元には、まだ彼から貰ったネックレスがぶら下がってる。
それを解った上で贈った。
和樹が不安な時や考え事する時に、服の上からそのネックレスを握る癖を知っていた。
付き合う前にさり気なく聞いた時には「お守りに近い」って、笑って話してた。
俺はずっと気になってた。
そのお守りが、俺が贈ったネックレスで有れば良いのに……と。
「和樹に似合いそうだと思った……何にしようか悩んだが……正直に話すと…和樹がお守り代わりにしてるネックレスは彼から貰った物だろ?和樹にとって大切な物だと言うのは解ってる……けど…もし代わりが効くお守りなら俺が選んだ物を身に着けて欲しい。俺…心が狭いかな?……それに……そのネックレスを見ると……和樹が彼を想って握り締めて泣いて辛そうにしてた姿を思い出す」
和樹は頭を横に振り俺の目をジッと見た。
「ごめん。俺…海の気持ちに気付かなかった。そうだよね! 俺が逆の立場なら、やっぱ嫌な気持ちになる。ごめんね。これを身に着けてると拓真と通じてる気がして、確かに前は大切にしてた。けどね、色々あって散々泣いて.泣いて、今は思い出になりつつある。そうなると不思議だね、拓真との楽しかった事だけ思い出す。時間が経つと美化しちゃうのかな?だから、このネックレスは前の気持ちは無く本当にお守りになってた。それに今の俺は辛い時にも温かい目で見守って、ずっと側に居てくれた海都が好きです! 」
辛そうな顔で話す海がどれだけ俺の事を心配し支えてくれた事が解った。
「和樹!」
和樹の小さな体を抱きしめた。
「和樹、ありがと! 俺は和樹が好きだと言ってくれた事は凄く嬉しかったし、その言葉を信じてるが……そのネックレスを外さない事に少し不安があったのも事実だ。でも、もう良い。そんな事に拘った俺が大人気が無いんだ」
抱きしめてた体を少し離し、和樹は彼から貰ったネックレスを外した。
「海のネックレスを着けて」
俺は和樹の為に選んだネックレスを和樹の細い首に着けた。
「良く似合ってる!」
ネックレスを愛しそうに手に取り見つめ顔を上げ、俺に嬉しそうに微笑んだ。
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