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第289話…1年後 ⑥

和樹の胸元で、揺れてるネックレスは本当に良く似合ってた。 散々、迷った末にGUCCI(グッチ)のシルバーをベースに、ブランドアイコンをモチーフにデザインされた上品なネックレスにした。 年代は関係なく使えるデザインにした。 長く着けて貰えるように……と願いを込めて。 「ありがと。大切にするね!」 そう言って隣に座ってた俺の膝に跨り抱きついてきた 「和樹、良く似合ってる。これからは、それがお守りだ! 和樹の胸にはそのネックレス.そしていつも側に俺が居る。俺を好きになってくれて、ありがとう!」 「俺の方こそ、好きになってくれてありがとう。……海……このネックレスは…捨てた方が良い?」 和樹の手にある元彼から貰ったネックレスを持ち迷ってるようだ。 和樹にしてみれば思い出の1つだろうし、今まで辛かった時や不安な時には、お守りにしてた品だ。 捨てる事を躊躇してるのは解ったが、俺の判断に任せようと思ってるに違いない。 正直、捨てて欲しい気持ちはあるが……和樹の胸に俺が贈ったネックレスをこの先ずっと着けてくれるなら……。  俺の返事を待ってる和樹。 「捨てなくって良い。それも思い出なんだろ?和樹はそう言う事はできないだろうし。但し、どこか俺の目につかない所に仕舞って置いて欲しい」 「……海がそれで良ければ…。ごめんね。これも青春の1つの思い出の品だから」 「そうだな。この箱に入れて仕舞えば良い」 プレゼントした空箱を渡すと、それに入れ箱を閉じた 何となくしんみりした雰囲気になったと思い、俺は和樹を膝に抱いたまま自分の胸元から和樹とお揃いのネックレスを取り出した。 「俺も同じ物をしてる。俺の方がチェーンは太いがモチーフのデザインは一緒だ。和樹とお揃いの物を何か欲しいと思ってたんだ。勝手にペアにしたが良いよな?」 和樹は一瞬驚いた顔を見せ破顔した。 「もちろんだよ。海がそう言う事するとは思って無かったからちょっとだけ驚いたけど、嬉し~に決まってる!」 そうだよな、俺もペアの物は結婚指輪を買った時以来だ。 彼女とはお互いの仕事の事も理解し敢えて、上手くやっていけると愛してはいたが、そんな打算的な考えもあった結婚だった。 彼女は頭も良く容姿も良かったし、サバサバした性格で計算高く束縛もせず一緒に居るには最適だと思ったが、彼女の方が俺よりもっと打算的だったのが俺には誤算だった。 ‘結婚しても一緒に居る意味が無い’と言われ、俺は自由で仕事に慢心でき良かったと思ってたが、彼女の方は違ってたのが離婚の原因だった。 愛してたとは思ってたがその彼女とも上手くいかず、それからは縛られない関係の恋愛をする様になった。 セフレ作る前に何人か付き合ってた人も居たが、プレゼントは渡す事があってもペアまで考えた事は無かった、ましてやセフレには誤解の元だと決してそう言う真似はしなかった。 結婚指輪以来そう言う物は意図的に避けていた。 和樹とはペアの物が欲しいと、何も考えず自然に思った。 そんな事を考えながら、和樹の頭を撫でていた。 「海、これ仕舞ってくる!」 そう言って、俺の膝から退き和樹用の部屋にしてる客間に歩いて行った。 和樹の重さが無くなった膝は何だか寂しく感じた。 海が俺用の部屋にしてくれた客間にはベットは無く、今でも2人で大きなベットで寝てる。 どこに仕舞おうか迷い、クロ-ゼットの奥にするか?机の引き出しの奥にするか?迷った。 机の上にはノートパソコンとIT関連の本.専門書があり、スマホゲ-ム作成を目標に独学で勉強中な事もあって机に向かう時も多いし……結局、クロ-ゼットの奥の奥に仕舞う事にした。 クロ-ゼットを開け仕舞う前に、もう一度だけ箱の中を開けてジッと見つめた。 さっき海がペアにしたと言われた時に……デジャブだと一瞬驚いた。 海には、このネックレスがペアとは言わなかったと思うけど……。 拓真との、このペアのネックレスを貰った時に、凄く嬉しかった事を思い出した。 その時に、やっと拓真との事は思い出になったんだと感じた。 「拓真……ありがと」 箱を閉じ、クロ-ゼットの棚の上の奥の奥に仕舞った これで拓真との事も何だかすっきりした。 部屋を出て、リビングで待ってる海の元に行った。 「海、これ俺からのクリスマスプレゼント」 隣に座った和樹から綺麗なラッピングに包まれた小さな箱を渡された。 「ありがと」 自分が和樹にプレゼントする事だけ考えてたから、まさか?和樹からプレゼントが貰えるとは考えても居なかった。 すっげぇ~嬉しい♪ 「中、見ても良いか?」 「あっ、うん」 リボンを解き包装紙を破り小さな箱を開けると、中にはGUCCIの名刺入れだった。 グッチの黒のレザーカードケース。 「ありがと♪ 丁度、替えようと思ってた所だった」 「良かったぁ~。海は何でも持ってるから迷っちゃった。名刺入れなら仕事柄、結構使うでしょ?GUCCIにしたんだけど…被っちゃったね」 「俺と和樹の趣味が合うって事なんだろ」 「そうかも~」 「ありがと。大切に使うよ。これでまた仕事に張り合いが出来た。この名刺を取り出す度に和樹の顔が浮かぶ、それとどんどん名刺配って仕事もバンバン取ってくるぞ!」 「海の仕事に打ち込む姿は凄い尊敬出来るけど……恋人としては……無理しないでね」 和樹の口から初めて ‘恋人’ と言う言葉を聞いた気がする。 その言葉を聞いた時には、感動して嬉し過ぎた。 思わず和樹を引き寄せ抱きしめた。 「和樹、ありがと。俺の恋人になってくれて! 」 そのまま和樹の後頭部に手を宛て深いキスを仕掛けた クチュクチュクチュ…チュ-チュ-…レロレロ…クチュクチュ…チュッチュ… 思う存分に蹂躙し唇を離した。 「和樹、このまま和樹を抱きたい! 」 「良いけど……ケーキは?」 ロマンチックな雰囲気の中で、ケーキの話をする和樹に笑ってしまう。 「ケーキは逃げない! 明日、食べよ。今は和樹を食べたい!」 「美味しく食べてね?」 照れて戯けて話す和樹が可愛く、直ぐに抱き抱え寝室に向かった。 リビングの部屋はツリーのイルミネーションが輝かせていた。 愛しい人との初めてのクリスマスの夜はまだ終わらない!

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