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第293話…1年後 ⑩

俺は夢を見ていた……。 暗闇の中を歩いて彷徨ってた。 「どこだろ?前が見えない。怖い! 誰か~! 誰も居ないの~!」 夢の中で、誰か居ないか?と思い叫んでいた。 シーン! とする暗闇に1人なんだと思ったら怖さが増してきた。 寒さに震え暗闇に怖くなり、その場で体を抱きしめ蹲りジッとした。 暫くして、また声を上げてみた。 「誰か~! 助けて~!……俺、ここに居るよ~!」 あ~寒い! ブルブル…震える体を抱きしめた。 もうダメかも……。 心が折れそうなその時に、どこからか声が聞こえた。 「和樹、ここに居たのか?探したぞ。迷子になるなよ~。ほら、手に掴まれ! また迷子になったら困るからな。危なく、迷子センターに行く所だったぞ」 くっくっくっくっ……そう言って笑う。 どこかで聞いた事がある懐かしい声だったけど……顔は見えず手だけ差し出された。 えっと……凄~く大好きな人の声に似てる…誰だっけ? 夢の中の俺は手の主は解らない。 ……良いか?この暗闇から抜け出してくれるなら……そう思い、その手を取ろうと手を伸ばし掛けた時に……また、どこからか?声が聞こえた。 「和樹‼︎ その手を取っちゃいけないよ! また同じ事の繰り返しだからね。和樹、俺の手を取って欲しい。一緒に歩いて行こう!」 大きい手がヌッと差し出された。 優しい口調で安心できる声……いつも側で聞いてた気がする……やはり、手だけで他は暗闇に紛れて見えない。 目の前に2つの手。 どちらを取るか迷う。 迷い悩み考えた末に、俺は片方の手を握った。 そうすると、もう1方の手はスッと消えた。 「ありがと。俺達の家に帰ろ!」 温かく大きな手を握り、俺は見えない人物と歩き出す 大きくて温かい手だな。 暫くすると暗闇の中に一筋の光が見えた。 そこに向かうと、どんどん明るさが増してきた。 やっと暗闇から脱出できた事に喜び、嬉しくなり手を握ってた人に話した。 「やっと明るい所に辿り着いた~。明るい光が綺麗で温か~い」 その人の姿は光が当たり逆光で顔が良く見えなかったけど……良く知ってる人物だと思った。 その人は手を離し、ギュッと俺の体を抱きしめた。 そして耳元で「和樹、愛してる‼︎」と囁かれ目が覚めた 俺の体を抱きしめ寝入ってる海が居た。 「あの手は海だったんだ。じゃあ、もう片方は……」 小さく呟いた。 あの暗闇は俺が辛かった時だったんだ。 その中で海が手を差し伸べて、その手を俺は取った。 温かく大きな手を。  夢でも海の手を取って良かった。 今の俺には、海が居る! 海の優しさや頼りになって安心できる所に、素直に甘えられる。 会社でも一緒に仕事するようになって、海の尊敬できる所をたくさん知った。 外回りが多く社長自ら営業に行き動き回り、偶に社員の皆んなに甘い物を買ってきたり、貰い物だと言って渡す姿や社長室があるのにも関わらず、社員の近くにデスクを1つ置いて、皆んなとの距離を近くに置き仕事の事を親身になり聞く姿を目の当たりにし、尊敬出来る人だと思った。 海から告白されて、俺の気持ちが落ち着いて考えられるようになるまで待つと言い、一緒に暮らし始めても俺が1人じゃ寝れないのを知ってる海はずっと何もせずに抱きしめて一緒に寝てくれた。 好きな人と1つのベットで寝てるのは……海も辛かったと思う。 けど、海は俺の事を1番に考え待ってくれた。 そんな海に癒されて仕事仲間にも救われた。 毎日一緒に生活して、優しさと仕事場でも海の事を尊敬し……好きになっていった。 ううん、出会って頼りになり相談に乗ってくれる海を好きでは居たけど……あの時は拓真の事で頭がいっぱいで他を考える余裕が無かった……心の奥では海に惹かれてたのかも……じゃなきゃ、海に縋り付き慰めて貰うにしても海との1度きりは……だってあの時……誰だって良いわけじゃない海だから……今となっては解らない。 海は大人でカッコいいしモテるだろう。 けど、俺との初めてシテ.慰める為にだったけど…それから自分の気持ちに気が付いて直ぐにセフレとは全て解消したと、武史からも後々聞いた話しで……俺はこの人なら信頼出来ると思った。 別に、俺とはその時には本当に何でも無い関係だったのにも関わらず、そのままセフレとの関係を継続しても良かったはずなのに……俺に誠意を示したいと俺には伝えずに自分の中だけで……そんな海が好きだ。  今の俺は勉強中ではあるけど、仕事も楽しいし何より海との生活が毎日楽しい♪ 俺のたわいも無い話をニコニコと「うん.うん」と笑って聞いてくれて、俺が海のダラし無い所を叱ると「和樹~ごめん。怒った?嫌いになった?」とシュンとして話す可愛らしさもあり、毎日笑ってる自分が居る。 海のお陰だ! 会社や世間では出来る社長で美丈夫で頼り甲斐のある良い男で通ってる海が俺と2人だけになると、甘えて拗ねたり誰にも見せない弱さや優しさ.やはり頼りになる所も懐の広さも全部が好き! 海を好きになって、日を追う毎にどんどん好きが溢れて愛するまでになった。 拓真との事も海に出会う為の試練だったのかも……と今は思える様になった。 俺、今が一番、ううん海と一緒に過ごす日々が1番幸せ‼︎ 海都、ありがとう! 海の胸にあるお揃いのネックレスにチュッとキスした 「海、愛してる。大好き‼︎」 温かい大きな胸に顔を埋めギュッと抱きついて、大好きな人の匂いを嗅いで幸せな気持ちのまま、また眠りに落ちた。 今度は海との楽しい夢を見よう。 その中で俺も海も笑ってるんだ。 いつもの様に……。                           〜 fin…〜

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