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第294話 番外編~拓真(2)~

和樹が俺の前から何も言わずに消えた日から、俺はずっと和樹の行方を探してた。 それは社長である叔父さんの会社に入社して、社会人になっても変わらずに居た。 和樹は必ず東京のどこかに居るはずだ。 実家にも何度も電話したが連絡無いと言い張り埒が明かないし、仲の良かった内田や中嶋.山瀬に聞いても解らないと俺と同じ状況だった。 やはり武史なら行方を知ってるはずと闇雲に探してもだめだと思い、武史の就職先は出版社だと解ってるがどこかは聞いて無かったし、大学生の時の俺は武史を毛嫌いしてた位だったから武史の就職先には興味も無く聞きもしなかった。 今思えば仲間の1人だったし聞いておけば良かったと後悔した。 その武史も誰にも連絡先を知らせず、大学卒業と同時に俺達から行方を晦ましてた。 そんな状況の中で、社会人1年生と言う事で覚える事が沢山ある仕事で手一杯だったが、俺は今年中にはインテリアコーディネーターの資格を取り早く1人前に仕事をしたかった。 毎日、勉強の日々で忙しかったが仕事を覚えていくとやはり俺はこの仕事が好きだと思った。 そんな忙しい日々の中でも、休日や仕事の合間に出版社に電話を掛けまくり武史を探した。 大小と様々な出版社は数限り無くあり、百社以上の色んな所に電話しても見つからず、挫けそうになる気持ちを奮い立せ根気強く電話しまくった。 そしてやっと武史を見つけた時には、和樹が俺の前から居なくなって1年が過ぎてた。 武史は小さな出版社で主に外国小説を翻訳にするのが強味で、他にも芸術作品や特殊な分野の本を扱い専門誌発行する出版社だった。 なかなか見つからないはずだった。 またも空振りかと期待も薄い中で、でも掛けずには居られないとその出版社に電話を掛けた。 「OO出版社さんですか?そちらに保田武史さんいらっしゃいますか?」 「保田は今出払ってますが、どのような御用件でしょうか?」 居た~~~~‼︎ 心の中では叫んでた、そしてやっと……少しの光が見えた。 「先日、保田さんにお会いした時に少しお話聞かせて頂きもっと詳しい話を聞きたいと思いまして、お電話させて頂きましたが外出中でしたら保田さんがいらっしゃる時に、またご連絡させてもらいます」 そう言って一方的に切った。 あとはパソコンやスマホから出版社の住所を調べれば解る。 これで……やっと和樹に会える。 そして週末に武史が勤めてるだろう出版社の前で、待ち伏せする事にした。 営業なのか?それとも編集者なのか?解らないが、出版社は勤務時間が不規則で自由と言うイメージがあり俺は夕方に社に戻るか.退社する所を捕まえようと考えて夕方に出かけビルの出入り口が見える所で待って居た。 1時間程待ってると、武史らしき人物が歩いて来る姿が見えた。 たぶん、武史だ‼︎ 社に戻って来たって感じだな。 手に持ってる封筒の中身を確認しビルの中に入ろうとする武史に声を掛けた。 「久し振りだな。武史」 確認してた封筒から声を掛けた俺に目線を移し、目を丸くし驚いてた。 殆ど顔の表情を変えない武史だけに、驚いた顔を見るのは珍しい。 驚いた顔から直ぐに気を取り直し、威嚇するように低い声で話す。 「どうして、ここに?俺は話す事は無い! 帰れ! もう2度と来るな!」 想定内の対応だ、そう言われて帰る訳無いだろう。 やっと和樹の行方が解るんだ、和樹に会えるんだ。 「武史に無くても俺の方には話しがある。話しをする位良いだろ?それとも話しをするまで毎日ここに通おうか?今から一緒に出版社に行って、ある事ない事言ってもいいんだぜ」 俺も必死だったから半分脅す。 「ストーカーとして警察を呼ぶぞ⁉︎」 「別に構わない! 話しをするまで何度でも来るからな‼︎」 睨み合いが続く中で、武史がこれでは埒が明かないと仕方無く折れた。 会社の前と言う事もあったかも知れない。 「解った! 今日だけで2度と来ないでくれ‼︎ 約束出来るなら話しをしても良い」 武史も俺とは会いたくないのが態度と言葉で丸わかりだった、それは俺もだ。 「約束する!」 「じゃあ、そこに喫茶店がある。先に行っててくれ。会社に書類置いてから行く!」 武史が指差す方には少し古びた喫茶店がひっそりとあった。 「必ず、来いよ!」 そう武史に釘を刺し、指定された喫茶店に歩き出した やっと、ここまで辿り着いた。 和樹に会える最後のチャンスだ‼︎ たぶん、武史は俺と会うのはこれで最後にするだろう 俺も今日が最後のチャンスだと思ってる。 俺は先に古びた喫茶店に入り、奥のテーブルに着きコーヒーを注文し武史を待つ事にした。 武史が来たら、和樹に直接言えない俺の気持ちを話し和樹に会えるよう取り待って貰うか.居場所を聞き出そうと考えてた。 唯一の頼みの綱である武史が来るまで、ずっと考えを巡らしてた。

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