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第297話 番外編~拓真(5)~

また自堕落的生活を送ると、暫くは傍観してた叔父さんから、また見合い話が舞い込んできた。 「今度は仕事関係でも多少は繋がりがある会社の社長のお嬢さんだ。会社自体は兄が継ぐ事になって、お嬢さんは父親の会社では働きたく無いと、全く別な会社で働いてる。1度会った事があるが、はきはきして綺麗なお嬢さんだ。今度は失礼無いようにな」 仕事関係だと聞かされ、会う事は決定事項だと言う雰囲気に断る事は出来ず、また相手に断って貰うつもりで会う事を渋々了承した。 以前の2回のお見合いと同様にホテルのラウンジで会い、レストランで食事をする肩苦しく無いお見合いだった。 その3回目のお見合い相手が聡美との出会いだった。 写真では綺麗な顔立ちで付き合う相手も選り取り見取りだろうとなぜお見合いするのか?と思う程だったが箱入り娘で大事に育てられ出会いが無かったのだろうか?と考えてた。 ラウンジでも一際目立ちチラチラと見てる男も居たが本人は気にも留めて無い様子だ。 見られる事に慣れてる⁉︎ 聡美に声を掛けた。 「お待たせしました。本郷です」 「あら、そんなに待って無いわ。柏木聡美です。今日は宜しくお願いします」 にっこり笑顔を見せ話す聡美は過去に会った見合い相手とはどこか違ってた。 俺を見て頬を染めない⁉︎ 俺はそれだけで聡美には良い印象を持った。 そして上のレストランで食事をしながら話す事にした 俺が見た中では上の部類に入る位に良い女だった。 今日はワンピースだが、胸の大きさとウエストがキュッとし顔の造作も良いが、スタイルもバツグンに良いのが解る。 テーブルに着き予約してた食事が運ばれて「美味しいわ」と、食事を楽しむ聡美は俺に興味が無いのか?過去の見合い相手とは違ってお決まりの質問はしてこなかった。 ただ食事を楽しみに来たような感じだ。 不思議な女だ。 俺はそんな聡美に興味が湧いた。 「お見合いって感じじゃないな。食事を楽しみに来たのか?」 「もちろん。こんな豪華な食事を楽しまなきゃ損じゃない?」 にっこり微笑む聡美に嫌な感じはしなかった。 「最初っから断るつもりで?」 「あなたもそうでしょ?」 「ああ、できれば君から断って欲しいんだが。叔父さんの顔を立て来ただけだ。俺には心に決めた人が居る……その相手とは結婚は出来ないが……俺はそいつ以外は愛する事が出来ないし、結婚には向いてない」 相手に断れるように話すと、俺の話しをジッと見つめたまま聞いて暫く何かを考えてるようだった聡美が口を開いた。 「そう、あなたも心に決めた人が居るのね。実は、私もそうなの。でも、事情があって直ぐには結婚できないの。父は早く結婚して良い家庭を持つ事が女の幸せだと思ってる人だから……あなたでお見合い相手は5人目よ。今までは何とか断ってきたけど……流石に限界かもと思ってたの」 「俺は君で3人目だ。叔父さんも早く結婚して落ち着け!って煩い。限界って…君から断ってくれると助かるんだが……俺から断っても良いが君が恥をかくんじゃないのか?」 「………あなたさえ良かったら……期間限定で結婚しても良いわ。そうしてくれた方が今後煩わしい見合い話が無くなるし、あなたとなら上手くやれそうだわ」 「どう言う事だ?」 「あなたも私も心に決まった人が居る。あなたの事情は良く解らないけど、あなたも結婚するまで叔父さんは見合い話しを持ってくるわ。私の方は彼が年下でまだ学生なの。直ぐには結婚できないし父も認めないと思うの。今は内緒でお付き合いしてるのよ。でも彼が社会人になって経済力がついたら結婚するつもりよ、彼ともそう話してるわ。だから、煩わしい見合い話はもうどうにかしたいと考えてたの。それに1度結婚して失敗した女なら彼と結婚する事にしても認めて貰いやすいでしょ?」 成る程な、将来的な事を良く考えてる。 「だが、結婚したとして俺に惚れる事はないのか?あと、彼はこの事はどう思ってるんだ?後々、面倒な事になっても困る。そして君のメリットは多いが、俺には見合い話しがこなくなるだけの小さなメリットだけだが?」 「あなたに惚れる事は無いわ。私はこう見えても男の人を見る目はあるつもりだわ。確かに、あなたはカッコいいしモテるでしょうけど…あなたに本気になっても幸せに慣れないと思うの、私の直感だけどね。それに私一途だしね。彼?前に、あまりにもお見合い話が続いた時にこう言う話した事があって、でも、そんな都合の良い人なんか見つからないって冗談半分で諦めてたの。そしたら今日あなたが現れたってわけ。彼には私から話すわ。あと……あなたのメリットね。そうね~、あなた今後結婚するつもり無いんでしょ?私が去った後に1人じゃ寂しいわね…………子供産んであげるわ。それで、どう?」 「……直ぐには、返事はできない」 「じゃあ、考えて! そうね、今直ぐは無理よね。1週間後に会いましょう。その時に返事くれないかしら?私も彼ともう一度話し合うから」 「……解った」 何だかとんでもない話しになってきた。 相手からの提案が世間では有り得ない話しと突然の話で、俺の頭のキャパを超え部屋に帰って良く考えてから返事しないと思い保留にし、来週の同じ曜日.同じ時間に、このホテルのラウンジで会う約束をし、その日はお互い食事をして帰った。 聡美の印象は悪くない。 俺と同じ種類の人間だと思う。 自分に自信があり、見られる事に慣れてる風だった。 確かに綺麗だしスタイルも良いが、話しを聞いてると女と意識するより兄妹的な同志的なものを感じる。 面白い女に出会った。

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