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第298話 番外編~拓真(6)~

聡美と初めて会ってから1週間が経ち、今日また会う事になってた。 この1週間、俺なりに考え結論を出した。 ホテルのラウンジには、聡美が既にお茶をして待ってた。 前回と同様に「待たせたな」と声を掛けると、にっこり微笑み「大丈夫よ」と応える。 そして聡美と一緒に上のレストランで、また食事しながら話す事にした。 ブラウスにフレアスカートと言う出立ちで、品のある色使いの服は、聡美に良く似合ってた。 前回はフレンチだったから、今日はイタリアンの店を予約してた。 テーブルに着き予約してた食事が揃うと、早速口に運び「このサラダ美味しいわ」と、また今日も食事を楽しんでた。 これからの俺達の人生がかかってる時に……不思議な女だ。 面白い‼︎ 粗方食事が済みデザートとコーヒーの段階で、やっと本題に入った。 苺のムースを口に運び 「それで考えてくれた?」 俺はコーヒーを飲み 「俺の結論を話す前に、君達はどう結論出したんだ?先に聞かせて欲しい」 「解ったわ。彼氏とあなたの事を話したわ。彼はそんな人が居るのか?と驚いてたわ。前はそんな人が居たら良いのにって話してたけど、現実になると動揺して考えてたけどね。良く話し合って、ある程度の条件を出す事で納得してくれたわ。今のままでは、どちらにしても私達は結婚出来ないし、また父にお見合い話が持ち込まれたら……こんな好条件の人に会う事ないでしょ?有り得ない話しに乗ってくれる人はもう現れない、だから……」 「1つ気になる事がある。子供を作るって事は、セックスするって事だろ?彼は良いのか?あと、今の話しを聞いて2人で決めた条件とは?」 幾ら期限付きの結婚生活であっても子供を作るとなると、セックスはするんだろうと考えてた。 「その事ね。彼も子供の事は難色を示してたわ。セックスはしないわ。情が移ると困るしね。私の知合いに産婦人科医の人が居るから、不妊治療と言って体外受精で子供を産むわ。彼もセックスしないと言う条件で納得してくれたわ。あと、こっちの条件としては、結婚生活は3年位を目処とする事。セックスは無し。彼とは自由に会うって事。その3点かしら」 「良く考えてるな。でも、俺がセックスしたくなった時は?」 「それは外でして頂戴」 浮気は承認済みって事か。 「じゃあ、同居人って事でお互い自由な訳だ」 「そうよ。但し、家事はするわ。その位しなきゃあなたにも結婚したメリットがないでしょ?一応、同居人だけど奥さんらしい事もしなきゃね。私達の話しを聞いて、改めてどう?」 「そうだなぁ、俺にも1つ条件をつけさせてくれ」 「何?」 「体外受精でも、必ず俺の子を生む事。あとは、彼氏とのセックスは構わないが、結婚してる間は子供は作らないでくれ」 「解ったわ。最初から、そのつもりだったし」 「なら、俺はその条件で結婚しても良い」 こんなバカげた話しに乗るとは思わなかったのか?ほんの少しだけ驚いた顔をしたが、やはりにっこり笑い手を出してきた。 「ありがとう‼︎ こんな話し受けてくれるのは、あなたしか居ないと思ったわ。これからは同志として宜しくね」 その手を取り握手し、俺もにっこり笑った。 「契約結婚成立だな。これから宜しく頼む」 「こちらこそ」 こうして俺達の契約結婚は秘密裏に始まった。 俺は聡美の結婚したくってもできない境遇に応援したくなった。 自分が和樹と結ばれる事がないのが解ってる分、聡美の幸せの為に……これも自暴自棄なのかもしれない。 どうせ1人で生きていくつもりだったが、聡美の子供を産むと言う条件も俺には魅力だった。 子供が別に好きでもないが……今の俺には何も無い。 和樹の代わりに子供を愛して、これからの人生送っても良いと思った。 2回しか会ってないが、頭も良いしさっぱりした性格の聡美とは上手くやっていけそうだと思い、契約結婚を決めた。 それからの聡美の行動は早かった。 次の週には2人でマンションを見に行き、良さそうな物件を何件か見て、俺の職場にも近く彼のアパートにもそれ程遠く無い物件をその場で決め、次の週には2人共真新しいマンションに引っ越しも済ました。 頭の良さと行動力のある聡美には脱帽するばかりだ。 本当の奥さんなら、優秀な良い奥さんだろう。 2LDKのマンションで初めてお互いが顔を合わせた日に、テーブルの上には結婚届と離婚届の2枚が用意された。 「用意が良いな」 「この結婚が契約結婚だと認識する為に、離婚届も書いて置いた方が良いと思って。提出するのは3年後だけどね。大切に仕舞っておくわ」 「まあ、良いけどな」 聡美は既に書き終わってた。 俺も結婚届を書き判子を押し、直ぐに離婚届を書き判子を押す。 聡美が話したように離婚届を書くと、契約結婚だと認識するから不思議だ。 「明日には、結婚届け出して来るわ」 それを大切に仕舞い、聡美はテーブルに数種類のつまみを出しシャンパンを開け乾杯した。 「これから、3年間宜しくね」 「解ってる」 カチンッ! 微笑みグラスを合わせた。 こうして俺達の奇妙な契約結婚生活が始まった。

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