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第304話 番外編~拓真(12)~
森本がベビーシッターとしてバイトするかようになりそろそろ1カ月近くなろうとしてた日だった。
仕事関係者との打合せが多い俺達の仕事は相手方の都合に合わせ動く事も多い。
その日も午後3時からの打合せ予定だったが、相手の都合で6時からとなった。
仕事相手との電話を切り、直ぐに森本にLineする事にした。
“済まない‼︎ 打合せで帰りが遅くなる。煌を頼めるかな?たぶん9時までには帰れると思うが”
数分後に森本からの返信があった。
“了解しました。時間は気にせずに、お仕事頑張って下さい”
良かった~、これで煌の事は頼めた。
“助かった、ありがとう。終わり次第連絡する”
“了解です”
今までは急ぎの仕事も無かったし新規の仕事も無かった為、比較的早く帰宅するようにしてたが、新規の仕事で店舗のリニューアル工事の仕事が舞い込んできた
その打合せが今日だった。
今までは急な用事も無く、特に森本にもLineする事もなく今日初めてLineした。
何だが、奥さんに帰宅時間を連絡するような感じだ思った。
そう思った自分が気恥しく思い頭を切り替えるように打合せの資料とインテリアの見本などを確認した。
「やべぇ~遅くなっちまった~」
9時前には家に帰れると思ったが……。
もう既に9時を回ってる。
俺はいつも夕飯の弁当を買う為にスーパーかコンビニに寄る所だが、その時間も惜しいともう少しでマンションに着く道を急いで小走りしてた。
少し荒い息でマンションのエレベーターに乗り息を整え、今から森本も連れてファミレスでも行くか?と考えながら居た。
玄関のドアを開けると煌が「パパ~」と走って抱き着く体を受け止めた。
「遅くなった。ごめんな、腹減っただろ?」
「早く~.早く来て~」
「何~があるんだ?」
俺の手を笑顔で引っ張る煌と一緒にリビングに行く。
「お帰りなさい。お疲れ様でした」
森本が笑顔で迎えてくれ、その手には電子レンジで温めようとする皿を持ってた。
「遅くまで済まなかった」
詫びを入れダイニングテーブルには料理が乗ってたのに気が付いた。
「これは?」
「すみません。勝手にキッチン使わせて貰いました。煌君がお腹空くと思って」
「それは構わない。煌は食べたのか?」
「うん! あのね~、ひなとスーパー行ってね。それから2人で作ったんだよ~」
「そうか、偉いな。煌も手伝ったのか~。じゃあ、ちょっと着替えてから食べるな」
玄関のドアを開けた時に何だが良い匂いがしたと思ったんだよなぁ~と思いながら寝室に行き部屋着に着替え、2人が待ってるダイニングに急いで行った。
キッチンの電子レンジで他にも温めてる森本の側に煌も居た。
テーブルに着くと白飯.サラダと人参とピーマンの炒め物があり、チン!と鳴ると中から取り出し、俺の目の前に置いた皿にはハンバーグ2つ乗ってた。
「こっちは煌君が作ったんですよ~」
1つは綺麗な形で森本が作ったんだろう、もう1つは不格好な形で小さめなハンバーグだった。
煌が一生懸命作ったと思ったら感激がひとしおだった
森本が近くの椅子に座ると「ひな~抱っこ~」と甘え、森本に抱っこされ2人で俺が食べるのを見る体勢を取る。
「美味しそうだ~。じゃあ、煌が作ったハンバーグから頂くか」
小さな不格好なハンバーグは2口.3口も食べれば無くなってしまう位だが、煌が作ったと思うと直ぐに食べ終わるのも勿体無いと小さく切り口に入れた。
ソースは家庭にありがちなケチャップとソースを混ぜたものだったが、店で食べるより美味かった。
俺の感想をドキドキ…しながら見てる煌が可愛いらしい。
「凄~く、美味いよ! 今まで食べたハンバーグの中で1番だ!」
「やった~! ひな~美味しいって~♪」
「良かったね。煌君が一生懸命作ったんだもんね~」
膝に抱き背後から煌の頭を撫で、にこにこ優しい顔で話す森本と嬉しそうな煌。
「2人は食べたのか?」
「すみません、先に頂きました」
「そうか。それなら良かった」
俺も腹が減ってた事もあり食べながら話す。
この部屋で聡美が出て行ってから久しぶりの家庭料理だった事もあり、尚更美味く感じた。
「あのね~、ご飯食べてね~、ひなとお風呂も入ったんだよ~。ひなとシャボン玉作って遊んだんだ~」
「すみません! 勝手にお風呂も頂いて! ご飯とお風呂済ませておけば、本郷さんが楽かなっと思って…煌君がお風呂はいつもパパと一緒だから~ひなが入るならお風呂入るって言うもんですから……すみません、考えてみれば1人で入らせるのも…と思って……すみません!」
「ひな~何で謝るの?」
何度も謝る森本に俺も煌と同じ意見だった。
「いや、助かったよ。時間的にも寝る時間だし」
俺がそう話すとホッとしたようだ。
「森本君は料理は結構するのか?」
「僕の両親は共働きですし、兄弟も多いのでお腹空かせてる弟と妹の夕飯作るようになりました。簡単な物ですけど、一応料理は出来ます」
「兄弟多いって何人?」
「僕の下に3人居ます。1番下とは7歳も離れてます」
「4人って事か⁉︎ 今の時代では多いな。それで子供の扱いに慣れてるのか?」
「そうかも。でも、子供って無垢で素直で可愛い~です。あれ?煌君、寝ちゃいました~」
俺達が話し込んでる内に煌は森本に寄り掛かり膝の上で寝て居た。
「いつも寝る時間だからな」
「じゃあ、このままベットに寝かせて来ます」
「申し訳ないが頼む」
そのまま森本に抱かれて連れて行った方が目が覚めないだろうと頼む事にした。
煌を抱っこし寝室に連れて行く森本の後ろ姿を眺めてある事を考えてた。
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