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第308話 番外編~拓真(16)~

「今頃、アンパンマンの映画観てる時間か?」 昼前に煌を迎えに来た森本と一緒に映画を観に2人で出掛けて数時間が経つ。 俺は午前中に溜まってた洗濯物をし煌を送り出してから掃除し、それから仕事に取り掛かった。 インテリアカタログを見てパソコンに向かいレイアウトを考えたりして過ごした。 今は一息ついて休憩中だ。 いつもの週末は土曜日の午前中に家事を済ませ、午後から煌と近くの公園で遊ばせ帰りにスーパーに寄り帰って来る。 そして日曜日は俺の実家か叔父さん夫婦の所に遊びに行くと言うお決まりのパターンだ。 煌も居ない部屋はシーンとし物音や声がしない。 1人だと、こんなに寂しいもんなんだな。 久々に1人で自由に居れると思ったが……寂しい。 森本は18時から焼き鳥屋のバイトがあると言ってたから、遅くとも17時頃には帰ってくるだろう。 あと少し仕事して、カレーでも作って待ってるかな。 明日は実家にも叔父さんの所にも行かず煌と2人で過ごすかな。 煌の居る有り難みと存在に感謝した。 バタンッ! 「パパ~、ただいま~」 玄関から走って来た煌を抱き上げた。 「楽しかったか?」 「うん! あのね~」 「話し聞く前に、森本君は?」 「あっち」 玄関の方を指差す煌を抱き抱えたまま玄関に向かうと玄関に立ったままの森本が居た。 「今日はありがと。入らないのか?」 「このままバイトに行きますから。今日は僕も楽しかったです。ご挨拶だけ。じゃあまた、月曜日に」 「ひな~バイバイ」 「バイバイ」 俺にペコリとお辞儀をし帰って行った。 森本が去った玄関ドアを見つめたままふっと思った。 上がらないのか? 煌と森本の2人から楽しかった話を聞きたかったな。 「あのね~パパ。ひなとハンバーガーとポテト食べたんだよ~、美味しかったよ~♪」 「そうか、マックに行ったのか~。良かったな」 煌を抱いてリビングに行きながら話しを聞いた。 「夕飯は、カレーだぞ」 「わぁ~い♪ 」 俺のレパートリーと言ったらカレー.シチュー.焼そばか肉を炒めたり位なもんだが、それでも喜んでくれる煌が愛おしい。 2人で俺が作ったカレーを食べ、その間も煌は今日森本と出掛けた時の話しをずっとしてた。 「でね~、アンパンマンがoxoxoxox……oxoxox ……それでバイキンマンがね~……oxoxoxox…… アンパ~チして~ oxoxox…………oxoxoxox…」 余程楽しかったんだな。 楽しそうに話す煌は止まらない。 俺はその話を相槌を打ちながら笑顔で聞いて居た。 それから2人でお風呂に入り、その時も同じ話を何度も聞き風呂を出て寝室に寝かしつける為に本を読むと直ぐにスヤスヤ…眠りに就いた。 出掛けて疲れもあっただろうし、興奮もしてたしな。 可愛い~寝顔に癒される。 俺も少しだけ横になり煌を抱きしめてたら、いつの間にか寝てしまった。 夜中に目が覚め、そぉっと寝室を出てリビングのソファで仕事関係のインテリアカタログを何冊か眺めてた 変な時間に目が覚めたな。 良さそうな家具や照明やらチェックしておくか? 暫くすると、俺のスマホのLineが鳴った。 時計は12時半を回ってた。 誰だ?こんな時間に? 一応、Lineを確認すると森本からだった。 「森本⁉︎」 どうしたんだ?と思いながらLineを開く。 “遅い時間にすみません。まだ、起きてますか?” 何か重要な事か? それとも今日何かあったのか? そう思いながら返信した。 “起きてるが、何かあったのか?” “バイトで唐揚げや焼き鳥をたくさん貰ったので、もし良かったら待って行こうと思って” 何だ~そんな事か~。 ホッとしたと同時に森本の心遣いが嬉しかった。 “嬉しいが……わざわざ持って来て貰うのは悪いな。疲れて無いのか?” “大丈夫です。直ぐに向かいます” 今日は煌と出掛け、そのままバイトに行き疲れてるだろうに。 森本のLineから20~30分経った時に、またLineが鳴った。 “今、玄関の前に居ます” 玄関チャイムを鳴らさないのは煌が寝てるだろうからと言う気遣いと解った。 森本らしい優しさだ。 玄関を開けると、少し息が荒い森本が居た。 「すみません、こんな遅くに。これ、明日にでも温めて食べて下さい」 ビニール袋を手渡しされた。 「ありがとう、助かるよ。お茶でも飲むか?」 「いいえ、もう遅い時間ですから。それ持って来ただけなので。じゃあ、これで失礼します」 「帰りは、大丈夫か?」 「はい。ここからなら自転車で僕のアパートまで20分位ですから大丈夫です。じゃあ、おやすみなさい」 「気を付けて帰れよ」 「はい」 そのまま帰って行く森本の後ろ姿を玄関から見送った まだ、ほんのり温かい唐揚げや焼き鳥は森本の優しさと温かさを感じた。 次の日に、森本に言われたように温めて食べ、煌も美味しいと喜んでた。 俺は煌が喜んで食べた事や美味しかったと、お礼のLineをした。 “喜んで貰えて良かったです” 森本からも返信のLineがきた。 今までは業務的な帰宅に関する事でLineする事はあったが、この事がキッカケで俺と森本はよくLineする仲になった。 主に煌の事が多かったLineが頻度が増す事に、学校.バイト.仕事と個人的な事もLineするようになり、俺と森本の仲も親密になっていく感じがした。 そして煌とは違った意味で、森本にも癒されてた。

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