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第310話 番外編~拓真(18)~
「ひな~~♪」
最寄りの駅で待ち合わせてた森本の姿を見て、俺と手を繋いでた手を離し森本の元に走って行く。
「煌君!」
森本の足に抱き着く煌の頭を撫でる光景は何とも微笑ましい。
「ひな、おはよ♪」
「おはよう、煌君。今日は楽しみだね?」
「うん♪」
そんな2人の側にゆっくり近づいて
「おはよう、森本君。今日は宜しくな」
「はい! こちらこそ」
「ひな~、早くいこう♪」
「行きましょう♪」
煌と森本は手を繋ぎ駅の階段を登って行くその直ぐ背後から俺も着いて行く。
普段はパーカーやTシャツなどのラフな格好が多いが今日は白地の長Tにブルーのシャツを合わせ黒スキニーパンツで爽やかコーデだ。
清潔感があり若い森本に良く似合ってた。
童顔な顔と笑い顔が印象強いが、良く見ると顔立ちは整って美形だしな。
「パパ~早く~」
「悪い.悪い。直ぐに行く」
切符売場で待ってる2人の所に急いだ。
目的地まで切符を買い、電車で近場の動物園に行く。
電車は割と空いて座る事ができた。
煌を真ん中にし、両端に俺と森本は座った。
煌は車窓からの風景を見て、森本に一生懸命話し掛け楽しそうだ。
動物園に着くと、入口から駆けてく煌は振り向いて「早く.早く~」と急かす。
俺と森本はそんな煌を見て、顔を見合わせ笑った。
少し歩くとキリン.シマウマ.ガチョウのゾーンで柵から家族連れで見てる人達が居た。
「あっ、キリンさんだ~」
煌も柵に足を掛けキリンを指差し「シマウマもいる~。あっ、ガチョウも」順番に動物の名前を連呼し、子供らしい~と思った。
「キリンさんは首が長いね~。見て.見て、よ~く見るとまつ毛長いんだよ~」
「そうなの?遠くてわかんない、こっち来て~キリンさ~ん」
森本と煌の会話が本当の家族みたいだ。
「ガチョウさんは飛べないけど、鳥の仲間なんだよ~。足も凄~く速いんだよ」
「凄~い♪パパ~知ってた?」
「知ってた」
「じゃあ、ワンワンより速い?」
「ワンワンよりずっと速いぞ」
「すご~い♪」
それからサイの大きさに驚き、ライオン.虎.チータ~.黒豹.ヒョウと猛獣科のゾーンでは少し怖がる素振りをし俺に抱っこし見て回った。
「檻があるから大丈夫だ。絶対に出て来ないから」
「やだ! 怖いよ~」
「ライオンは動物の王様なんだよ~。強くてカッコいいからね」
「パパみたい‼︎」
「本当だね。パパみたいにカッコいいね?」
「うん!」
煌がライオンを怖がらないように例えで言ってる事だとは解ってるが、何だか森本にそう言われるのは嬉しかったが照れる。
「良し。次はペンギンの所に行こう」
「うん♪ペンギン.ペンギン…ペンギン」
はしゃぐ煌を降ろし手を繋ぐと、煌は空いてる片方の手で森本とも手を繋ぐ。
煌は俺と森本と手を繋ぎ間に挟まれて嬉しそうだ。
マジで! 家族みたいだ‼︎
ペンギンの優雅な泳ぎやヨチヨチ歩きの可愛さに大喜びし、象とカバの大きさに驚き楽しく笑う。
歩いて移動する時も、ずっと俺と森本の手は煌と繋いだままだった。
鳥のコーナーではフクロウや鷹.インコ.オウムなどカラフルな色合いの鳥に喜ぶ。
「さて、次は猿山に行ってお猿さん見たらお昼にしよう。お昼食べても、まだまだ見る所あるからね。少し休憩もしないとね?」
「うん♪お猿さん.お猿さん♪」
もう昼か⁉︎
色々見たが時間が経つのが早く感じる。
俺も楽しんでるって事か。
煌が喜び森本も楽しそうにしてるその2人の姿を見てるだけで、俺も楽しくなってくるから不思議だ。
片手をグイっと引っ張られ「パパ~お猿さん見に行くよ~♪」煌に言われ、猿山に向かった。
山に見立てた岩山にたくさんの猿達が居た。
毛繕いしてたり.ロ~プで遊んだり.追いかけっこしたり.寝そべったりと思い想いに生活してる。
ぐるりと柵で覆われた岩山を上から見下ろす。
煌を抱っこし、森本は猿を指差し煌に話しかけ楽しそうに猿山を見てた。
俺はそんな2人の直ぐ横で猿山を見てる振りして2人の会話を聞いてた。
「見て.見て~、あのお猿さんお尻真っ赤だね?」
「わぁ~♪本当だ~。ひな~お猿さん達喧嘩してる~。お猿さん! 喧嘩はだめ~~」
クスクスクス……
「煌君、あれはね。遊んでるんだよ」
「そうなの?良かった~」
2人で笑顔で話してると、煌が急に無言になった。
「どうしたの?」
「………ママ」
一言 ‘ママ‘ と小さく呟いた。
煌がジッと見てたのは親子の猿で、母親に抱かれながら乳を飲んでる子猿が羨ましく、聡美を思い出したようだ。
聡美と離婚してから1度も言った事無かったしそんな素振りも見せた事が無かったが……やはり母親が恋しかったのか⁉︎ 黙って聞いて居た。
「見て.見て~。あのお山の1番高い所に居るの、この猿山のボスだよ~。やっぱり他のお猿さんと違って大きくてカッコいいね。パパみたいだね?」
森本も煌の呟きは聞こえてたはずだが、親子猿から煌の気を逸らしボス猿に向けるように話す。
「本当だ~。パパみた~い♪」
やはり子供だな。
子供特有の気を散らし直ぐに違う方に興味が移ったが……煌の心の底では……母親が恋しいのが解った。
子供なりに母親の事は言っちゃいけないと思ってるのかも知れないな。
そんな煌が愛おしい。
「そんなに貫禄があってカッコいいか?」
俺も森本と煌の話しに乗っかる。
「うん!」
「カッコいいのは認めますけど……貫禄って言うか.太々しい?」
「何だと~~。俺は奥ゆかしいで通ってるんだ!」
「そんな冗談も言うんですね」
クスクスクス……
くっくっくっくっ……
煌は俺と森本の会話は解らない言葉もあり目が点になってたが、俺と森本が笑い合うと煌も何も解らずに笑顔を見せた。
森本は煌の笑顔を引き出す為に、わざとボス猿の話しをしたんだな。
本当に良い子だ‼︎
一緒に居ると、元気を貰い癒されると思った‼︎
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