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第311話 番外編~拓真(19)~
「そろそろ、お昼にしようか?」
「うん♪ お腹空いた~」
「だよね~。良く歩いたしね。木陰の所で休憩がてら、お昼にしようね」
「うん♪」
仲良く手を繋ぎ、木陰のある広場を目指し歩く2人の背後から着いて行く。
「ここが良いね?」
「うん♪」
森本はリュックからレジャーシートを取り出し広げると、煌は靴を脱ぎ嬉しそうに座る。
「用意が良いな」
「たぶん、煌君が疲れるんじゃないかな?って、これならゆっくり出来るでしょ?それにベンチも空いてるか解らないし探すのも大変だと思って」
良く気が付き煌の事も考えてくれてるな。
「じゃあ、俺はフードコートで何か買って来るから、待ってろよ。煌、何が食べたい?」
「あのぉ~、もし良かったらお弁当作って来たので」
「えっ‼︎ わざわざ作ってくれたのか?」
「大した物じゃないですけどね」
「わぁ~い♪ ひなのお弁当食べた~い♪」
「食べよ.食べようね。さあ、本郷さんも上がって」
俺も靴を脱ぎ煌の隣に座った。
レジャーシートの上には森本が作ってくれた小さめなお握り数個とタッパの中には卵焼き.ウインナー.ミートボール.唐揚げともう1つのタッパには桃.パインがデザートであった。
森本は ‘大した物じゃない’ と言ってたが充分だ。
それと森本の優しさと気遣いが心を温かくする。
割箸と煌にはフォークを渡し「いただきます」と森本に言われ、俺と煌も「「いただきます」」
煌は小さめなお握りを早速頬張る。
「たらこだぁ~。美味しい♪」
「煌君には、たらこが当たったんだ〜。あとね、昆布と鮭もあるんだよ~。どれが当たるか?は、食べてからのお楽しみ♪ 本郷さんも食べて下さい」
楽しみながらお握りを食べられるようにと、小さめにしたお握りと良く工夫されてた。
全て煌の為だと良く解る。
俺も1つ小さめのお握りを頬張る。
「……?」
「パパのは何~♪」
「パパのは何も入って無かった」
忙しくって中身を入れ忘れたのかもな。
「残念‼︎ 1つだけ中身無しにしたんだけど……こんなに直ぐに当たるなんて~♪」
笑顔で話す森本はなかなかお茶目な事をする。
「パパ~凄い! だって1コしかないのに当たったの~。凄いよ~♪」
凄いのか⁉︎
「本当だね~、逆に凄い.凄い!」
煌と森本は凄いの連呼し楽しそうだ。
卵焼きも綺麗な形になってるし、ウインナーはタコにしたり蟹にしたりと可愛い~弁当だった。
「タコさ~ん♪」
モグモグ…食べ「美味しい~♪」と、いつもより良く食べてる気がする。
「唐揚げまで…大変だっただろ?」
「それ程でも無いですよ。唐揚げはバイトで貰った物を冷凍して置いたものを朝にレンジで温めただけですしミートボールもレンチンです。作ったのって卵焼きとウインナー位です」
「そうか。それでも、ありがと」
デザートの桃とパインは缶詰を入れたと言ってたが、保冷剤で冷やしてあって美味かった。
煌も「美味しい.美味しい♪」と笑顔が絶えなかった。
お腹がいっぱいになった煌はウトウト…し始めた。
「煌君、眠いの?少しねんねする?ねんねして起きたら、次はひよこやうさぎさん達の所に行こうか?」
「う…ん……ひな~…」
眠くて仕方ないらしく、森本に甘え膝枕して貰ってた
森本も甘える煌を愛し気に頭を撫でて居た。
俺より森本に甘える煌はすっかり懐いてる。
「悪いな」
「いいえ」
スヤスヤ…眠る煌の頭を撫でる。
「すっかり森本君に懐いたな。森本君の子供が好きだと言うのが、子供には解るんだな」
「子供は素直で純粋ですから、そう言う所が好きなんです」
俺は気掛かりな事を森本に聞いてみた。
「……さっき猿山で…煌が ‘ママ’ って言っただろ?やはり母親が恋しいのかな?……今まで母親の事言った事無かったから、俺に気を使ってたのかな?……聡美はどっちかと言うと、煌には一線引いて接してたが……育児放棄とかじゃないぞ。それなりには愛情はあったとは思うが、深くは……自分から抱っこしたりしなかったし煌がせがむと抱っこしたり、寝る時も寝かしつけたら別の部屋で寝てたしな」
母親として最低限の愛情で接してたと思う。
契約結婚で、いずれ別れがある煌にお互いが辛く無いようにと言う聡美なりの気持ちだったと思う。
「煌君位の歳なら母親が恋しいのは当たり前だと思います。煌君は凄く頭の良い子ですし、何となく言っちゃいけない事とか察してたのかも知れません。そこは深堀りしないで、そっとして置きましょう。あと…夫婦の事や家庭の事情は解りませんけど……奥様の事ですが…煌君には愛情は伝わってますよ。前に、寝かしつける時に「ママも本を良く読んでくれた」「ママはお歌も歌ってくれるんだ~」と言ってました。煌君はちゃんと愛情は感じてますよ」
寝かしつけるのに本を読んでる事は知ってたが、あの聡美が歌を…ね。
知られざる事実だった。
「そうか」
「それに本郷さんの愛情もちゃんと煌君には伝わってますよ。大丈夫です」
「ありがと」
森本にそう言われると安心する。
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