312 / 379
第312話 番外編~拓真(20)~
「でも、本郷さんもいずれは再婚も考えてるんでしょ?」
再婚⁉︎
聡美と別れてまだ1年経って無いし……俺は…。
「どうして?そう思う」
「まだ若いし煌君の為にも再婚するんだろうなって。もし再婚するなら早い方が良いですよ?煌君が小さい方が相手に懐くと思いますし」
俺はチクッと胸が痛んだ。
森本に再婚を勧められてる気がしてショックだった。
森本にしてみれば、ごく普通の世間一般の話をしてるんだろうが……。
「……再婚はしないな」
「どうして?まだ若いしカッコいいからモテるでしょう?」
「……モテるのは否定しない。だが……俺は人を幸せには出来ないんだ。だから無理だな」
「……そんな事無いと思いますよ⁉︎ だって、こんなに煌君を溺愛してるじゃないですか?じゃなかったら煌君はこんなに良い子に育ちませんよ。本郷さんは愛情深く寂しがり屋なんだと思います」
森本の言葉に驚いた。
初めて、そんな事を言われた。
「どうしてそう思う?」
「幸せにできないって何があったか?は、解りませんけど……本当は愛されてたくって、幸せになりたいんじゃないか?って、絶対に本郷さんの事解ってくれる人は現れます……すみません、生意気な事言って」
幸せにできないじゃなく…愛されたい.幸せになりたい⁉︎……森本に言われ、そうかも知れないと思った。
俺の本質を見抜く事を言う……こいつとなら……俺を理解してくれる……そう思った。
「いや、初めてそんな事言われたから面食らったが……嬉しいよ」
「煌君…はしゃぎ過ぎてぐっすりですね。可愛い寝顔です。煌君もパパに負けず将来はカッコ良くなりますよ」
「そうか?」
「だって、パパそっくりですもん。幼稚園でもモテてるみたいですよ~」
俺に似てるって言われて、俺は喜び微笑んだ。
体外受精で生まれたが……聡美も不妊治療する際 ‘妊娠するまで、彼とはセックスしないわ。疑われたくないもの。私があなたに感謝の印に贈ってあげられるものは子供だもの’ そう言った言葉を信じてた、いや信じようと思った。
でも、その間も彼氏とは会ってたのも事実だ。
もしかして聡美の彼氏との……一抹の不安があったのも確かだ。
聡美は裏切る人間じゃないのは理解してるし、聡美が言った言葉を信じたかった。
…もし、そうであっても煌は俺の子だ!と思ってた。
森本に言われて、心の奥底に誰にも言えずに封印してた気持ちがスーっと消えていく。
いつも俺の心を癒し軽くしてくれる森本は不思議な奴だ、スッと俺の心に入り込んで来る。
そうか、煌は俺に似てるか。
「そろそろ煌君、起こしますか?」
「そうだな」
「煌君.煌君?起きて。ひよこ見に行くよ~」
「ん~……ひよこ?」
「そうだよ。ひよこやうさぎさん触りに行こう」
「うん♪」
眠い目を擦り『ひよこ』と聞いて、嬉しそうな顔に変わった煌は子供らしく可愛い♪
そうか、煌は俺に似てるのか⁉︎
また一層煌が愛しく思えた。
「さて、起きて。片付けて行こうな」
「うん♪ひよこ♪ひよこ♪…ひよこ♪」
全て片付けて、俺達はまた煌を真ん中に手をつなぎ触れ合い動物広場に向かった。
入口で手を洗いひよこが居る場所に向かうと、ひよこは大きなプラスチックの箱にたくさん入って居た。
ピー.ピー……可愛く鳴く黄色いひよこは可愛い。
目をキラキラさせ、ひよこを見る煌と森本。
「煌君、そこに座って両手出して。今、ひよこ渡すね」
「うん♪」
木の長椅子に座り待ち切れないと両手を出して待ってる煌の手に、小さなひよこを手渡す。
「うわぁ~♪小さい~可愛い~」
「ぎゅっとは掴まないでね。ほら、足なんかこんなに細いんだから折れちゃうからね」
自分も1匹ひよこを手にし、煌の隣に座り仲良く話してた。
俺も1匹ひよこを手に取り煌の隣に座った。
「パパ~♪ひよこ可愛い~ね♪」
「そうだな。小さいから優しくな」
「うん♪」
素直で純粋な煌の方がひよこより可愛い♪
暫くひよこを取っ替え引っ換えし可愛いがり、次にヤギの居る場所に向かい餌やりをした。
最初はヤギの餌やりを怖がってた煌だったが、森本が一緒に餌を与えると次第に慣れ、自分の手から食べるヤギを見て喜んで居た。
うさぎ小屋は広めな場所に土管やら椅子があり、子供達はうさぎを追いかけて捕まえてた。
煌も最初は追いかけてたが、うさぎがピョンピョン…と跳ねながら結構素早い。
「パパ~捕まえて~」
「良し!」
煌の前で良い格好を見せたいと、うさぎを捕まえようとするがなかなか掴まらない。
やっと1匹捕まえ煌の元に連れて行くと、煌は嬉しそうにうさぎを抱っこした。
椅子に座らせ煌の膝で大人しくしてる白うさぎの背中を撫でてる。
少しは父親らしい所見せられたか⁉︎
森本も1匹捕まえて来て煌の隣に座った。
「ひなのうさぎは色が違うね」
「そうだね。白と黒だね。ほら、良~く見ると、色々な色のうさぎが居るし毛も長いのやら短いのも居るよ。同じうさぎでも違うね?」
「本当だ~」
「今度は、お絵かきの時に色んなうさぎの絵を一緒に描こうか?」
「うん♪」
森本は子供目線で話しをし、一緒に楽しもうとする。
良い幼稚園の先生になれそうだ。
それから煌にせがまれるままうさぎを何度か捕まえては煌に渡し、煌の嬉しそうな顔を見た。
うさぎ小屋を後にし、その後は亀を見たり蛇を見たりして触れ合い広場を後にした。
熊やゴリラ.猿山以外の猿.レッサーパンダを檻から見て楽しみ、広い場所で3人で追いかけっこをしたり、動物型の乗物に乗せはしゃぐ煌は楽しそうだった。
スマホで思い出にと3人での写メを撮ったり、触れ合い広場でも写メを撮ったりと数十枚撮った。
どれも笑って楽しそうな顔の煌と森本が映ってる。
「そろそろ、帰ろうか?」
「え~~! 嫌だ~」
「森本君はこの後バイトに行かなきゃならないんだ。また来れば良いだろ?」
珍しく駄々を捏ねる煌に話す。
それ位楽しかったのも解る。
「本当に⁉︎ ひな~絶対に来る~?」
「うん♪約束するよ」
「本当に.本当だね~」
「うん♪指切りしようか?」
「うん♪」
小指を絡め歌を歌う2人の姿は微笑ましい。
俺は知らず知らず微笑んでた。
それから楽しかった動物園を後にし電車で帰り、森本に寄っかかって寝てた煌を起こし最寄り駅に着き少し早いが、軽く夕飯を3人で食べ森本はそのままバイトに行き俺達と分かれた。
「ひな~バイバ~イ♪」
「バイバイ♪」
森本と離れるのが寂しそうな煌と一緒に手を繋ぎ、家までの道を話しながら歩く。
ともだちにシェアしよう!