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第313話 番外編~拓真(21)~
部屋に帰り、少し休んでから煌と2人で風呂に入った
湯船の中で煌を抱きながら入り、今日の動物園での事を1つ1つ楽しそうに話す煌に耳を傾け聞いてた。
「キリンの首長かったね」「ダチョウが怖かった」「象は大きくお鼻が長かった」「お猿さんが可愛いかった」…etc…永遠に続くかと思われる程良く話す。
よっぽど楽しかったんだろうな。
ふっと何気無さを装い煌に聞いて見た。
「煌は新しいお母さんとか欲しいと思う?」
「……僕のお母さんは……ん~、ひなが良い‼︎ ひなが良い!」
母親は煌の中では、産んでくれた聡美なんだろう。
「そうか」
「パパは?」
「……そうだなぁ~……パパもひなが良い~な」
「パパも⁉︎ 一緒だね~。ひなとずっと一緒に居たいな」
「そうだな」
煌の問いに、俺の正直な気持ちが口に出てた。
俺は……森本に惹かれてるのか⁉︎
「パパ~もう出る~」
「そうだな、出るか」
煌と一緒に浴室を出て体を拭きパジャマに着替えさせ先にリビングに行かせ、今度は自分の体を拭き部屋着に着替えた。
自分の気持ちに戸惑ったまま後で考えようと、煌の待ってるリビングに向かった。
ソファでうとうとしてる煌を抱き上げ寝室に向かいベットに寝かせ暫く寝顔を眺めて寝室を後にした。
キッチンに行き、冷蔵庫からビール缶を持ちソファに座る。
もう自分の気持ちから目を晒す事は出来ない‼︎
ここ最近ずっと森本へのモヤモヤ…した気持ちがやっと解った!
プシュッ! ゴクゴクゴク……
「ふう~」
スマホを取り出し、今日撮った写メを眺めた。
煌も楽しそうに笑って、森本も笑顔だ。
仲良くピースサインする2人やひよこを持ち顔を寄せる2人や3人で仲良く撮った写メが今日がどれ程楽しかったのか解る写メだった。
写メの中の森本はいつも笑ってる。
この笑顔に惹かれてたのかもな。
初めて会った時も、にこにこ笑顔で好印象ではあった
小さな体だけど元気良く煌と遊び面倒見も良く、顔だって笑顔で童顔な印象が強く見過ごしてしまいそうだが、目も大きく.鼻筋も通り小さめな鼻.唇は薄く良く見ると美形だ。
森本の姿を思い浮かべてハッとした。
小さな体と童顔⁉︎
俺はそう言うタイプに弱いのか?
久し振りに……本当に久し振りに和樹を思い出した。
スマホをスクロールし学生時代の和樹の写メを眺めた
確かに…雰囲気は似てるが……顔は全然違う‼︎
和樹の方がもっと子供っぽい。
久し振りに見た和樹の写メを懐かしく眺めてた。
「懐かしい…な」
俺の中の和樹は学生時代で止まって懐かしく思う事が…やっと思い出になったと思った。
聡美と居ても煌が生まれても時折和樹を思い出して居たが…そうか、森本と出会ってからは和樹を思い出す事は無かった。
聡美と別れて煌を育てるのに必死だった事もあるが、俺は……森本のいつも絶やす事なく笑ってる笑顔に癒されてたんだ……そしていつの間にか気付かないうちに惹かれていってた。
でも……俺は自分の幸せを考えて良いのだろうか?
聡美の彼氏への一途な想いを知って、自分は幸せになる権利は無いとそれなら聡美が幸せになる為に応援するのも良いと思った。
それが契約結婚を決めた要因だ。
その代わり聡美からは煌を貰った、それで充分だと……。
また……好きになって悲しい想いや辛い想いをさせてしまうんじゃないのか?
また間違えてしまうんじゃないのか?
でも……和樹と森本は違う。
それに俺も若かった!
和樹は俺には何も言わずに心に溜めて1人で耐えてたし、俺もそんな和樹の変化には解らずに自分勝手にしてた、和樹なら俺から離れないと言う自信もあり傲慢だった。
でも…森本は和樹よりしっかりしてるし自分の意見は言い難い事でもきちんと話す。
和樹は ‘拓真は誤解され易いんだよ。本当は優しい人なのに…解り難いんだよね’ と言う言葉で、森本は ‘本郷さんは愛情深く愛されたくって幸せになりたい人なんですね’ と言った。
共通してるのは俺の事を理解しようとしてくれてる所だ。
生活していくうちに癒され知らず知らずに惹かれていたんだろうな……今日言われた言葉が俺の心に染み渡り森本への気持ちに気付く決定的な事になった……でも不安はある。
俺は森本を好きになっても良いのだろうか?
武史が ‘和樹も幸せになってる。もう拓真も自分の幸せを考えろ’って言ってた。
自分の幸せを考えて良いのか?
和樹を辛い目に合わせておいて……許されるのか?
今なら……思い出となった和樹の幸せを心から願う事ができる。
もう和樹は居ない……俺も一歩踏み出して良いのだろうか⁉︎
幸せになりたい気持ちとまた同じ過ちを犯してしまうんじゃないか、また大切な人を失うんじゃないか……そう思うと怖い‼︎
俺は本気で愛する事に臆病になってた。
グビグビグビ……
結局、幾ら考えても結論が出ないままだ。
解った事は和樹は思い出の人となり、森本に惹かれてると言う事だった。
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