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第315話 番外編~拓真(23)~

「あと1カ月もすればクリスマスですね?クリスマスの日は早く帰れそうですか?煌君とクリスマス会しようかって話してるんですけど?」 「もうそんな時期なのか?クリスマス…か。その日は何が何でも早く帰るようにする!」 「本当ですか⁉︎ 煌君、喜びます!」 煌だけ…か。 少し寂しい気がするが、煌の嬉しそうな顔を見るのも良いしクリスマスに森本と煌と3人で過ごせる事が何よりだ。 煌と俺だけじゃぁ~寂しいクリスマスだろうな。 森本が居ると明るく楽しいクリスマスになるだろう。 「そうだ! 煌のクリスマスプレゼント買うの付き合ってくれないか?さり気なく煌が何が欲しいか?聞いて貰えると助かる」 煌の事を出しにして、森本と2人で出掛けようと思った。 それくらいは許されるだろう。 「良いですけど…煌君はどうするんですか?」 「土曜日か日曜日にでも、森本君が都合良い日に実家か叔父さんの所に預かって貰うよ。喜んで煌を預かってくれるはずだ」 「そう言う事でしら……じゃあ、僕の都合で悪いんですけど、今週は予定があって……来週ならバイトの時間までなら土曜でも日曜でも大丈夫です」 今週は予定があるのか? そうだよなぁ~学生だし、俺と煌の相手だけしてる訳にはいかないだろうしな。 「解った。来週の土曜日で頼む。時間や場所はまた連絡する」 「解りました。煌君へのリサーチはしておきますね」 「頼む!」 こうして初めて2人で出掛ける事が決まった。 俺は顔には出さなかったが、心の中ではワクワク…して居た。 こんな気持ちになるのも随分久し振りだ。 楽しみができたと喜んでた。 森本が用があると言った週末に煌を連れて叔父さんの所に遊びに行き、来週預かって貰う事もお願いした。 いつもは俺と一緒なだけに煌1人だと解ると、大喜びで叔母さんとどこかに連れて行こうか話してる程に大喜びで了承してくれた。 叔父さん夫婦には子供が居ないから俺の事も可愛がってくれ煌に至っては孫のように接してくれてる。 叔父さんの所から電車で帰り最寄り駅で降りた時に、数m先に森本の姿が見えた。 同じ電車に乗ってたのか? 森本は1人じゃなかった。 森本より随分背が高く今時の若い子で、どちらかと言うとカッコいい系の男と一緒だった。 森本と並んで歩き仲良さそうに笑って話し、森本を揶揄ってるのか?森本も笑いながら肩をぶつけて怒ってるような拗ねてるような仕草をし、2人で顔を見合わせ笑ってた。 誰だ? やけに仲が良さそうだ! 改札口を抜け別階段へ向かう2人の後ろ姿を見ていた 「パパ?」 煌は人混みで森本には気づかずに居たらしく、俺が立ち止まってるのを不思議そうな顔で見てた。 「何でもない。家に帰ろう」 「うん♪おじちゃん所のワンワンね~」 煌が無邪気に話すのを笑顔で聞いて家までの道を歩いてたが、俺の頭の中では森本と仲良さそうに戯れあいながら歩く男が気になっていた。 専門学校の友達か? 保育科だけあって圧倒的に女の子の方が多いはずだ、少ない男子生徒は自然と仲良くなるに決まってるが……何だか、それにしては慣れ慣れしくし森本の方も気を許してる気がした。 この時間まで一緒にどこかに行って、森本の最寄り駅で2人で降りたって事は泊まりか? それとも今からどこかに行くのか? 森本を揶揄い戯れ合う2人の姿が頭から離れない‼︎ その日からその事がずっと頭に残り、月曜日に帰宅した時に森本に会っても普段と変わらなかった。 いつも通りの森本でいつも通りに煌の今日の様子を話し、それからたわいない話しをする森本は普段のままだ。 何気なさを装い聞けば良いんだ。 土曜日に駅に居なかったか? 森本君に似た人を見たんだが? そう聞けば良い。 世間話だ。 だが……俺は言い出せなかった。 聞いて何と答えが返ってくるのか?が、怖かった。 そしてあの男に嫉妬してる自分を見せてるようで……気になって仕方ない癖に。 俺は嫉妬深いし変なプライドがあって、素直になれないのは充分に知ってる。 ‘今日こそは…今日こそは…’ と思いながら聞けずに、その癖気になって仕方ない癖に森本と2人で出掛ける日になってしまった。

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