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第318話 番外編~拓真(26)~

「先週の土曜ですよね?……たぶん、本郷さんが見たのは弟です」 「弟?それにしては…似てないが?」 弟と言われ安堵したと同時に、本当に?と疑ってしまう。 弟なら森本に似てても良いはずだが……遠目では合ったが似た要素はなかった…と思う。 疑問系で話すと、ちょっと嫌そうな顔をした。 何か、気に触る事でも言ったか? こんな顔も珍しいが、思ってる事が顔に出る森本は凄く解り易い。 「……僕より…大きいですからね。中学まで僕と一緒で、そんなに大きくなかったんですけどね。部活でバスケ部に入って中3くらいから急に背が伸び出して、高2でもまだ伸びてるらしいです。2人で歩いてると、兄弟って言うより友達に見られる事が多いんです」 高校2年⁉︎ 俺が180近くあるが、俺より少し小さい感じか? 森本は165か7位か?170はないよな。 弟に背丈抜かれたから、その話題は嫌だったのかもしれない、背の事は気にしてるんだろうな。 童顔の顔に体型も合って可愛いと思うけどな。 そうか、弟か。 嘘では無いだろう、森本は嘘はつけない子だ。 森本の事を知る良い機会だ‼︎ 「弟と仲が良いだな。森本君は実家はどこ?たまに弟は遊びに来るんだ?」 「仲が良いと言えば割と良い方だと思います。兄って言うよりそれこそ友達感覚みたいですよ。実家は神奈川県の外れの方で泰野市って所です。神奈川って言っても田舎の方ですから、こっちに来るのにも時間掛かりますから、そんなに遊びには来ないです。今回はクリスマスに彼女とお台場に行きたいから下見に付き合って欲しいって頼まれて一緒に行って、僕の所に1泊して帰りました」 「彼女居るのか?」 「はい、生意気に居ますよ。高校に入って3人目かな?クリスマスプレゼントも買いたいからって、それにも付き合って…あとは…原宿にも行きました」 「弟思いなんだな。そう言えば森本君は彼女居ないのか?今更だが、クリスマスは俺と煌と過ごして大丈夫?」 良い機会だと、遠回しに恋人が居るのか?聞いてみた 「彼女居たらクリスマスに本郷さん達と過ごしませんよ。僕からクリスマス誘ったんですから、そこは悟って下さいよ……彼女は居ません」 彼女居ない⁉︎ よっしゃ~‼︎ 保育の専門学校で女子が多いし森本は性格良いから居るかも……微妙だと思ってた。 「気に触ったなら申し訳ない。学校も女の子が多いし居るのかな?って思ってた。森本君には悪いが…彼女居なくて良かった。彼女居たら一緒にクリスマス過ごす事が出来なかった」 一緒にクリスマスを過ごす事を楽しみにしてると遠回しだが意思表示すると、森本も嬉しそうな顔をした。 「学校の子達は僕の事は弟かペット位にしか思ってませんよ~。同級生なのに失礼ですよね?僕こそ一緒に過ごす事を楽しみにしてます。じゃなかったら1人ぼっちのクリスマスでした」 そう言って笑った。 森本も俺達と過ごしたかった⁉︎ そう思ってくれた事が嬉しかった。 「じゃあ、寂しい者同士、賑やかに楽しく過ごそうな」 「はい!」 今日は森本の事を色々知る事ができた。 いつもは煌の話題が2人の中心だったが、森本自身の事はこの数ヶ月で性格や人柄は解ってるが、それ以外はなかなか話す事もなかった。 兄弟が多いとか親が共働きだとかは知ってたが……。 あの仲良さそうな男が弟と解り、彼女が居ない事も解り……この1週間のモヤモヤ…がなくなった。 この事で、自分の嫉妬深さが解ったと同時にやはり俺は森本に惹かれて…いや好きだとはっきり解った。 今まで自分の気持ちに気付かないように考える事を放棄してたが……もう自分の気持ちを誤魔化す事はできない‼︎ 何より森本と一緒に居たい‼︎ にこにこ話す森本を見てそう思ってた。 遅い昼飯をゆっくりと過ごし、俺達はまたショッピングモールを見て歩いた。 森本が楽器屋に寄りたいと言うから行き、俺は楽器屋なんて早々来るもんじゃないから色々店内を見て歩いた。 ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪…… 「ん⁉︎」 ピアノ? ピアノの音がしたと思って店内を見回すと、森本がピアノを弾いてた。 キラキラ星?続けて、赤鼻のトナカイを弾く。 店の前を歩く人も足を止め数人聞いてた。 音を確かめながら楽しそうに弾く森本を俺は少し離れた店内で見つめてた。 2曲を弾き終わると足を止めて聞いてた客からパチパチ…と拍手が起こった。 そこで森本もハッとし照れた様にお辞儀して、店内に居る俺の元にやってきて直ぐに俺を引っ張り店を後にし歩き始めた。 「ピアノ上手いんだな」 「授業でありますから……僕はまだまだです。本当に上手い人は小さい時からやってます。僕は習って無かったし家にもピアノ無かったので、幼稚園の先生になるって決めた時に…高校の時ですけどね。音楽室のピアノ使わせて貰って、時々音楽の先生にも教えて貰って殆ど独学です。今もアパートなので、学校でなるべく練習で弾いてます。こう言う楽器屋さんに来ると、つい練習しちゃうんです」 「頑張り屋なんだな」 「そうじゃないですよ。必要な事ですから」 自分の夢に向かって努力してる。 また森本の事を知った。 それから玩具屋で決めていたレゴを買い複合商業施設を出て駅に向かう。 「このまま煌君を迎えに行くんですか?」 「いや、荷物あるし煌にはプレゼントバレたくないから、一旦家に帰り当日まで隠しておく。それから車で迎えに行くよ。たぶん疲れて寝るだろうから車の方が良い」 「そうですか。煌君、絶対にプレゼント喜びますね⁉︎ 煌君の喜ぶ顔楽しみですね⁉︎ じゃあ、僕もこのままバイト行きますから、一緒に電車で帰りましょう」 2人で俺達が住む最寄り駅まで一緒に電車に乗り帰る事にした。 もう少し一緒に居られる。 電車の中で世間話のついでに色々聞いてみる事にした折角のチャンスだ。 電車に揺られ何気なさを装い 「そう言えば彼女居ないって言ってたが、これまでには?」 また嫌そうな顔をして見せる。 解り易いな。 「……中学の時に1人と高校では2人です。それ以降は居ません……本郷さんはモテるでしょうね?羨ましいです」 3人か……思ってたより多いな。 森本からの反撃に遭いどう答えようか⁉︎ 正直に言ったら引かれそうだし嘘を言ってもバレるだろうし……結局そのまま正直に話す事にした。 森本には嘘を吐きたく無かったのもある。 「ん~学生の頃にはそれなりにモテたが、今じゃあ子持ちのおじさんだ」 クスクスクス……可愛く笑う森本。 何か、おかしな事言ったか? 「本郷さんがモテたって言うと嫌味には聞こえないから不思議です! さぞモテたって解りますよ。正直に言う方が好感持てます。子持ちのおじさんって…クスクスクス…まだまだイケテますよ」 「森本君から見たら、もうおじさんだろ⁉︎」 「否定はしません!」 クスクスクス……冗談で言ってるのが解り、腹も立たない。 「そこは否定して欲しかった。ひでぇ~な~」 クスクスクス…… くっくっくっくっ…… 森本と話してると楽しいし癒される‼︎ 今日は色々森本の事を知る事ができたし新たな発見もあった。 俺は……森本を好きな気持ちを止められない‼︎

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