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第319話 番外編~拓真(27)~
今日こそは、早く帰ろうと思ったのに~、くそぉ~。
帰り際の、あの電話がなけりゃ~。
約束してたクリスマス当日の金曜日に、俺は家路を急いで居た。
玄関ドアを開けリビングに入ると煌が裸のまま走り回り、その後を森本がバスタオルを持って追いかけてた
「あっ、パパ~」
「ただいま~」
「捕まえた‼︎ お帰りなさい」
「風呂に入ったのか?」
「すみません。クリスマス会始めたら、あとは寝るだけの方が煌君も楽だと思って、早めにお風呂に入りました」
煌の頭と体をバスタオルで拭きながら話し、森本の髪の毛も濡れていた。
森本も一緒に入ったのか。
「そうだな、その方が良い。じゃあ、着替えて来る」
「本郷さんもお風呂に入って下さいね。その間に料理の準備してますから。さっぱりした所でクリスマス会しましょう」
「解った。ツリー飾ったのか?おっ! 部屋も飾ってる」
「幼稚園から帰って来て、一緒にツリーを飾ったりお部屋も一緒に折紙で飾ったりしたんですよ」
1m程の小さなクリスマスツリーに沢山の飾りとイルミネーション、部屋には折紙で輪に連なって飾ってる。
家庭的な雰囲気が良いなぁ~。
「そうか、ありがとう。煌もありがとうな。上手にできてる。楽しいクリスマス会になりそうだ。じゃあ、俺も着替えて風呂に入って来る」
ザァザァザァ…ザァザァ…
シャワー浴びてゆっくり風呂に浸かる。
「ふう~」
煌と一緒に飾ったのか。
何だか2人が笑って楽しそうに部屋を飾ったりツリーを飾る様子が目に浮かぶな。
自分の気持ちにはっきり気付き、この1週間は森本と会う度に好きだと言う気持ちを抑え普通に接するように心掛けてたが……。
森本は俺の気持ちには、気付きもしないだろうな。
「今日は、楽しく笑って過ごそう」
自分に言い聞かせる様に口に出した。
ザバァ…
「良し! 待ってるだろうから、出るか⁉︎」
体を拭きドライヤーで髪を手早く乾かし浴室を出て、待ってる2人の元に向かった。
リビングに行くとテーブルには料理が並んでた。
「今日はダイニングじゃなく、こっちで食事しましょう。ほら、ツリーも近くにあるし、クリスマスの雰囲気出るでしょ⁉︎」
「そうだな。料理も美味そうだ」
「煌君と散らし寿司作ったんですよ~」
「うん! 僕ね~ひなの横でうちわを振ってたんだ~」
「そうか、ありがとうな」
散らし寿司.唐揚げ.ウインナー.チーズカナッペ.ポテトフライ…煌の好きな物も入ってる。
「乾杯しましょう」
煌にはオレンジジュース.俺にはシャンパンを注ぐ。
置いたシャンパンを手に取り
「今日位は、森本君も少しだけ付き合えよ。少しは飲めるだろ?」
「良いんですか?じゃあ、少しだけ」
森本のグラスにもシャンパンを注ぐ。
本来なら、まだ19歳で未成年だが今日位は良いだろう
今までも誘いたかったが自制してた。
今時の学生なら何度か飲んだ事もあるだろうし、何より飲んだ森本の姿も見てみたかった。
「じゃあ、クリスマスに乾杯~」
「「メリークリスマス♪」」
俺が音頭を取ると、2人もグラスを持ってカチッと合わせ笑った。
「ふう~美味い!」
「美味しいですね」
「ふう~美味い!」
「こら、煌。真似したな~」
ジュースを飲んで俺の口真似をする煌を嗜めると、2人は笑う。
「早速、食べましょう♪煌君、何、食べる?」
「ポテトとウインナーと唐揚げ♪」
「じゃあ、少しずつ取ってあげるね?」
「うん♪」
煌に数種類を少しずつ取り分け、俺にも散らし寿司を取り分けてくれた。
「美味し~♪」
「ん! 美味い♪」
散らし寿司は程よい酸味と卵やカニカマ.きゅうり.海老.味付けとびっ子と色鮮やかで目にも楽しい。
煌も散らし寿司と唐揚げを口いっぱいに頬張ってた。
食事しながら幼稚園で、友達から折紙で作ってくれたプレゼントを貰ったとか.絵を書いたとか話してくれ、帰って来てからも2人でツリーを飾ったり部屋を飾った時の事を楽しそうに話す煌の話を森本と2人で笑顔で聞いてた。
ある程度食べ腹も満たされて、俺は白ワインをキッチンから持って来て、俺のグラスと森本のグラスに注ぐ
森本は何も言わずに口をつけ「美味しい♪」と笑顔を見せた。
そして部屋を暗くしツリーのイルミネーションを点灯すると、クリスマスの雰囲気が尚更出た。
「煌君が幼稚園で習った歌を2人で歌います」
「ひなと練習したんだよ~」
「せ~の!」
真っ赤なお鼻の〜♪
森本の膝の上に座り2人でクリスマスソングを顔を見合わせ歌い始めた。
1曲めが終わり、次の歌が始まった。
キラキラ光る~お空の~♪
楽しそうに歌う2人を見てるだけで、こっちも笑顔になり気持ちも高揚する。
あっ! 2曲共、先週あの楽器屋のピアノで弾いてた曲。
煌が練習してたって言ってたな。
歌い終わった2人にパチパチパチ……と拍手を送った
「凄く上手だったよ」
褒めると煌は照れてたが嬉しかったんだろう、森本から離れて俺に抱きついて来た。
頭を撫で、今度は俺の膝の上に座らせた。
薄暗い部屋にツリーの明かりの中で、煌を中心に話し笑い合う。
「煌、ちょっと待ってろ!」
煌を膝から下ろし、俺は寝室に向かいクローゼットの奥からプレゼントを持ち出し、煌の元へ向かう。
「煌、これはパパと森本君からのクリスマスプレゼントだ」
「わぁ~♪本当⁉︎ ありがと♪パパ~、ひな~。大きい~ね。開けて良い?」
「良いぞ」
リボンを取り包装紙を破る姿は、目をキラキラさせ楽しみで仕方ないって顔をしてる煌が子供らしく、森本と目が合い微笑む。
「うわぁ~♪ブロック~だ~♪やった~♪」
「これはレゴって言うブロックで、色々自分の好きに組み合わせて作るんだよ~。煌君が好きなのを自由に作って良いからね。小さいから無くさないように気をつけてね。あと、お片付けはちゃんとしようね」
「うん♪今、少ししても良い?」
俺の顔を見て聞くから「良いぞ」と言うと、嬉しそうにし早速中を開けて遊び始めた。
最初は小さなパーツに手こずってたようだが、5分もすれば直ぐに慣れ色んな形を作り遊んでた。
森本も一緒に作り遊んでた。
どっちが子供か?解んねぇ~な。
さっきまでは煌に先生みたいな口振りで話してたが、今は煌と同じ位に必死でパーツを組み合わせて遊んでる。
こんなに煌も喜んでくれたし、クリスマスプレゼントをやはり森本に相談して成功だったな。
俺はワインを飲みながら、その光景を眺めてた。
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