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第321話 番外編~拓真(29)~
リビングのラグに座り、改めて残り少ない白ワインをグラスに注ぎカチンッと合わせた。
「今日は本当にありがとう。煌も喜んでた、もちろん俺も喜んでる。森本君が居なかったら、俺と煌だけの寂しいクリスマスだった。俺は気が利かないから……森本君のお陰で賑やかなクリスマスを過ごせた」
こんな賑やかで楽しいクリスマスが出来たのも、森本のお陰だと心から思い感謝の気持ちを話す。
俺1人ならプレゼント渡して、ショートケーキ食べて終わりだったと思う。
「僕の方こそ、煌君や本郷さんとクリスマス迎えられて良かったです。じゃなきゃ寂しいぼっちのクリスマスになる所でした」
そう言って笑って話す。
森本なら誘えば友達の1人や2人一緒に過ごす相手は居ただろう、それでも俺達と過ごす事を選んでくれた。
そうだ! 今、渡そう‼︎
さっき煌を寝室に運んだ時にクローゼットから持ってきて、チャンスがあったら渡そうとソファに置きクッションで隠しておいた。
クッションを退け、クリスマス用の包装紙に包まれた箱を森本の前に差し出した。
「…これ……何ですか?」
「いつも頑張ってくれてる森本君へ感謝を込めて、俺からのクリスマスプレゼントだ。良かったら受け取って欲しい」
俺の気持ちを話すと嬉しそうに笑い、箱を大事そうに胸に抱いた森本の姿が愛しい。
先週の週末に2人で煌のクリスマスプレゼントを買いに出掛けた時に、煌のプレゼントを選びながらふっと森本にも何かプレゼントしたいと思ったが、その時は本人も居るし買う事は出来ず、唐突に思い浮かべた事だっただけに、何をプレゼントするか?考える時間も無かった。
今週になって、仕事で外回りに行った時や帰りに何軒か店に行き選んだ物だった。
「本当に?……嬉しいです……でも僕…何にも用意してなかった。気が利かないのは、僕の方でした。すみません」
「別に、気にしなくて良い。ただ俺の気持ちだから」
またプレゼントをギュッと抱きしめた。
「……開けて良いですか?」
「ああ、気に入ってくれると嬉しいが……」
カサカサカサ……
包装紙を綺麗に破り箱を開け、嬉しそうな顔をした。
良かった! 喜んでくれたようだ。
「凄~く綺麗な色のエプロンですね。僕、この色好きです」
「何にしようか迷ったんだが……どうせなら森本君が使う物にしようと思ってエプロンにしたんだ。学校でも使うだろうし、これから幼稚園の先生になるなら幾ら有っても良いかな?と思って。その色見た時に、森本君に似合いそうだと思ってその色にした」
森本へのクリスマスプレゼントは全体がライトブルーで、胸元と両ポケットの所に水色でワンポイントがあるエプロンだ。
色々迷った末に、青空のような色合いのエプロンは森本のようだと思って、そのエプロンにした。
「嬉しいです♪着てみますね」
「ああ」
箱から出し、エプロンを広げ身につける。
「どうですか?似合います?」
少し照れ臭そうにしながらも喜んでるのが笑顔で解る
本当に、良く似合ってる!
このエプロンを身につけて、子供達と歌を歌ったり遊んだりするんだろうな。
子供と一緒に遊んでる姿が想像つく。
可愛い~な。
「ありがとうございます。大事に使わせて貰います」
森本の笑顔が可愛いらしく……やはり好きだ‼︎
そう思いボーっと森本の姿を見てたら、心の中で思ってた事が自然と口に出してた。
「好きだ!」
「えっ⁉︎ 今……好きって⁉︎」
嬉しそうな顔から驚いた顔に変わった森本の表情を見てハッとした。
今度は自分の言った事に驚いたが……誤魔化す事はできるが……もう森本への気持ちが溢れて誤魔化す事はできない…いや、したくなかった。
振られても良い…森本を失う事になるかも知れないが……もう自分の気持ちに正直になろうと思った。
このまま何も言わずに居ても、前にも後ろにも行けない!
この気持ちを森本に知って欲しかった、それだけで充分だ‼︎
「俺は……森本君が好きなんだ‼︎ 男同士で気持ち悪いと思うかも知れないが……俺は好きになる人は男でも女でも性別は関係ないと思ってる。人として好きとかじゃなく……恋愛対象として……好きなんだ‼︎ 俺の気持ちを知って欲しかっただけだが……そんな気持ち抱いてる人と関わり合いになりたくないって言うなら……ベビーシッターは辞めても良い。こんな事言って済まない。もう森本君を好きな自分の気持ちを誤魔化せないんだ‼︎」
もっとたくさん言いたい事はあったが…本人を目の前にすると半分も言えない。
でも……俺の正直な気持ちは伝わっただろうか⁉︎
俺が森本を好きだって気持ちだけ知っててくれれば、それで良い‼︎
「困るだろうから返事は要らない。バイトを辞めるかどうかだけ教えてくれれば良い」
バイトを辞めるって言うなら、それは森本の俺に対しての気持ちだろう、遠回しだが、それが返事だと思う
いつも笑顔の森本の顔が真剣な顔で、俺の目を見て黙って俺の話を聞いてた。
暫くの沈黙の後に森本が口を開いた。
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