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第323話 番外編~拓真(31)~

「大丈夫…か?」 コクンっと俺の肩口で頭を縦に振った。 抱きしめるのも大丈夫…か。 殆ど力が入ってない腕で背中に手を回し抱きしめた。 嫌なら、いつでも振り解けるようにしてた。 戸惑う森本の気持ちを大切にしたいから。 「森本君……このままの体勢で聞いて欲しい。これで今日は最後だ……キスしても…良いか⁉︎」 キスっと言う言葉に、背中がピクッと反応した。 やはり今日の今日でハードルは高いか? 「……悪い……焦らずに、森本君の気持ちを考えながら俺との接触に慣れるまで、ゆっくりいこうって言ったばかりなのにな……拒否されずに、抱きしめられるだけでも充分なのに……欲張ってしまった…」 反省の意味を込め話し、今度はぎゅっと抱きしめた。 俺に抱きしめられたままだった森本が俺の背中に、そっと手を回してきた。 俺はそれだけで抱き合う事だけで嬉しさが溢れて仕方なかった。 森本が俺を受け入れてくれた気がした。 もう、これだけで充分だ‼︎ 「……男の人とキスするの初めて…です」 キスなんて夢のまた夢で随分先になるだろうと半端諦め掛けてたが……森本の突然言い出した事に、今度は俺が嬉しさと同時に驚いた。 背中に回してた手を解き、森本の両肩に乗せ確認する 「……良いのか?……無理しなくて良いんだ‼︎…今日は抱きしめられただけでも充分だ。少しずつ慣れてくれれば良い」 頭を横に振り、俺を見つめた。 「今、しないと…もうできないかも…知れないから……決心が鈍らないうちにお願いします」 男とキスするのは相当な決心が必要だと思う。 俺との事が少しでも前に進める為に、森本も努力してくれてるんだ。 そんな森本が愛おしい程好きだ。 俺は初めてキスする面持ちで、緊張でゴクっと喉が鳴る。 中坊じゃね~んだから、何を緊張してんだ‼︎ このキスで森本とこれからもキスできるかどうかが決まりそうで、指先と唇が微かに震える。 「ありがと」 森本の頬を触る指先が震え、目を閉じ待ってる森本に顔を近づけ、震える唇でチュッと触れるだけのキスをした。 キスと言うより口づけだ。 軽く触れた唇を離し、目を開け茫然と見つめる森本の額に額を合わせ見つめ合った。 「ありがと。もう充分だ。これ以上は俺も緊張して…嫌じゃなかったか⁉︎」 俺の気持ちを正直に話すと森本はクスクス…笑った。 「ん?どうした?」 「だって~、本郷さんでもキスする時緊張するだと思ったら、イメージと違うから」 「どんなイメージを持ってるか解らないが、遊びとは違う本気の相手を前に緊張するに決まってるだろ……それに今後もキスしたいし」 「ありがとうございます。僕の為に……本郷さんとのキス……嫌じゃありませんでした」 嬉しいと思った時に、森本からチュッと触れるキスをしてきた。 今度は俺の方が茫然としてしまった。 森本から…キス⁉︎ 確かに…触れるだけだったがキスした…よな⁉︎ 「僕からも……キスしたい…から」 やはり現実だ‼︎ 森本の小さく細い体を強く抱きしめた。 「あ.ありがと‼︎ 本当に嬉しい‼︎ 夢みたいだ‼︎」 「夢じゃありません……本郷さん、少し緩めて…苦しいから」 嬉しさのあまり力加減を失い強く抱きしめてたようだ 「悪い。もう大丈夫か?」 「はい。本郷さん、僕の気持ちはまだ気がついたばかりで……もう少しだけ待ってて下さい。焦らしてる訳じゃなく心と体が一致した時に、本郷さんの者になります。その時まで浮気とかしないで下さいね」 「もちろん待つよ‼︎ 俺は森本君には体より心が欲しい‼︎ 森本君の笑顔に癒され、俺の事を理解しようと言う心に惚れたんだ‼︎……でも、手を握ったりキスしたり触れる事は許して欲しい」 「僕も本郷さんに触れたいから…」 触れる事を許してくれた森本の気持ちに応えて、ゆっくり愛を育んでいこう。 「今日は記念すべき日になった……森本君、今日はこのまま泊まっていかないか⁉︎ もちろん何もしない‼︎ 離れ難いんだ‼︎ 煌を挟んで3人で川の字で寝よう」 「はい‼︎ 僕も離れたくないから。明日の朝、僕が隣で寝てたら煌君びっくりするでしょうね?」 「ああ、でも大喜びすると思うぞ」 「それも楽しみです」 そしてどちらからでもなく自然と触れるだけの口づけをした。 こうして森本は初めて俺達の家に泊まる事になった。 身に着けてたプレゼントのエプロンを丁寧に箱に戻し改めて「大切に使わせて貰います。ありがとうございます」とお礼を言われた。 「俺の方こそ最高のクリスマスプレゼントを貰った。俺の気持ちに応えてくれてありがとう。これから恋人で良いか?いや、まだ早いか⁉︎ 恋人前提の恋人未満って感じで宜しくな」 「はい‼︎ こちらこそ宜しくお願いします」 「何だか、今日はゆっくり寝られそうだ」 「僕もです」 そして俺は森本と手を繋ぎ、煌が寝てる寝室へ向かった。 クイーンサイズのベットは煌を挟んで3人で寝ても充分だった。 煌を挟んで向かい合い、煌の腹に手を置き繋ぎ合う。 煌が居て.森本が居て……幸せだ‼︎ 俺は幸せになっても良いだろうか⁉︎ 何度も自分に自問自答してた答えが、今この空間にある。 和樹を幸せに出来なかった後悔がずっと引きずってた俺だったが、和樹の分まで森本と煌を幸せにしたいと思う、いや、森本なら俺を幸せにしてくれる‼︎ 「本郷さん? 寝ました?」 「いや、まだだ」 「僕…今、凄く幸せです。煌君と本郷さんが居てくれるだけで。焦らず……ゆっくりと僕達のぺースで幸せになりましょうね」 「俺も今同じ事を考えてた。ありがと」 「おやすみなさい」 「おやすみ」 俺が考えてた事と同じ事を思ってた森本から答えを貰った気がした。 『幸せになって良いんだよ』……そう聞こえた。 俺は…和樹と別れたあのクリスマスの日から長い間止まっていた時間が動き始めた気がした。 やっと、あの日から1歩踏み出せた。 これからだ‼︎ 森本を愛し煌を愛し、2人に感謝して歩んでいこう‼︎ 煌の腹の上で繋がられた手をぎゅっと握り締め、優しい雰囲気の中眠りに就いた。 朝、目覚めると煌は俺より森本に抱き着き寝て居た。 森本も起きてたらしく「おはようございます」と笑顔で挨拶し、抱き着く煌が可愛いって顔を見せ眺めてた 「おはよ」 今日の朝はいつもの朝と違って、優しく温かみを感じた。 森本が居るからだな。 「ん、パパ…」 「起きたの?煌君、おはよ」 「ぅ~ん、パ…ひな?えっ!ひなだ~」 森本の顔を見て大喜びで、更に抱き着き喜びを表してた。 「何で?ひな居るの~。泊まったの~」 「うん! 昨日は遅くなったから泊めて貰ったんだ」 「直ぐに帰らない?」 俺の顔をチラッと見て確認する森本に ‘帰るなよ、居てくれ’ と目で訴えると森本も笑顔で「バイトの時間まで居るよ~、たくさん遊ぼうね」と話すと煌も大喜びで「うん‼︎ やった~!」と返事した。 枕元に置いてたプレゼントに気づき「サンタさんからだ~‼︎ わぁ~い♪」とプレゼントを開け、動物図鑑に大喜びする姿を ‘子供らしいな‘ と2人で笑顔で見守った こんな穏やかな朝も良いもんだ‼︎ 森本が居るだけで、こんなに違うんだな。 昨日からずっと居る森本に大喜びで煌は「ひな~」「ひな~」と何をするにも森本と一緒に居たがり離れなかった。 森本もそんな煌を可愛いくって仕方ないって感じだ。 当面の最大のライバルは煌だな。 楽しそうに動物図鑑を見てる2人を見てそう思った。 煌の目を盗んで、森本の手を握ったり軽い口づけを隙を見つけて何度かするのは忘れなかった。 森本がその度に頬を染めるのが愛らしく止められない‼︎

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