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第326話 番外編~拓真(34)~

旅館に戻り、時間的にも夕飯時だった。 「丁度良い時間だな。夕飯食べに行こうぜ」 「はい、楽しみ♪」 部屋を出てロビーを抜け大広間に行き、もう既に何組かは食事をしていた。 従業員に部屋番号を伝え、テーブルに案内して貰った 「懐石料理になります。食前酒とお料理をお運び致します」 従業員が去り、森本はキョロキョロ…大広間を見回す 「どうした?」 「凄いなぁ~って。もっと和風のインテリアか?と思ったら、ここだけヨーロッパ調で別世界に来た感じです席も間隔が開いてゆったりしてるし落ち着きますね」 「旅館なのにヨーロッパの内装で、食事は懐石料理って面白いよな」 そんな話しをしてると懐石料理と食前酒が運ばれ、テーブルの上は色彩豊かな山の幸や川魚や肉料理が並ぶ 信州和牛の頰肉煮込み.豚味噌陶板焼き.サーモンのお造り.きのこと山菜の天婦羅.一口サイズの前菜が5種類.釜飯.林檎グラタン.茄子田楽など盛り沢山。 食前酒のあんずワインで乾杯した。 「このワイン凄~く飲み易い♪」 すっきりと爽やかなワインたが、食前酒にぴったりだ 「そうだな。軽いし口当たりも爽やかだな。長野はワインも良い品があるからな。このあんずワインと……氷結ワインを1本ずつ、いや、叔父さんの所にもお土産に買ってってやろう。2本ずつ買って帰ろう」 「お土産は解りますけど、2本って?」 「あとは俺達のだ。森本君とたまに2人で飲むのも良いだろ?この間も少しだが、一緒に飲めて嬉しかったしな」 「僕も楽しかったです。そんなに飲んだ事なかったので、ワインの美味しさが少し解りました」 「甘いのが良ければカクテルも良いかもな。20歳過ぎたら、美味しいカクテルを出すバーに連れてってやるよ。それまでは内緒で家飲みだな。ん~この頰肉美味いぞ♪」 「凄~い、箸で切れちゃう位柔らか~い! ……本当だ~‼︎ めちゃくちゃ美味しい♪」 「だろ?天婦羅もサクサクで美味い♪」 「どれどれ~……本当だ~サックサック…美味しい♪」 どれを食べても笑顔で美味しいを連呼する森本と一緒に食事するのは楽しいし、こっちまで思わず笑顔になる。 ゆっくり食事してデザートの林檎シャーベットまでペロリと完食した。 小さく細い割には良く食べるなぁ~、見てて気持ち良いくらいだ。 「良く食べたな」 「だって、全部美味しかったんだもん! ん~でもお腹いっぱいです」 「部屋に戻って、ゆっくりするか?少しSAで買って来たワインを飲むから付き合ってくれ。ワイン位なら入るだろ?」 「少しだけなら」 暫くして大広間を出て、ロビーで庭園を眺め館内を見て歩きながら部屋に戻った。 森本は部屋に入った途端に、足を伸ばして座り腹を摩ってた。 「お腹いっぱい~♪ 幸せ~♪」 子供みたいだな。 「腹がいっぱいで幸せなんて安いもんだな。それで幸せになるなら、美味しい店にいつでも連れてってやるぞ?」 「ん~嬉しいですけど……たまにだから幸せ感が出るんですよ。それに美味しいものばかり食べちゃうと太りますから……でも……たまにならお願いします」 「解った。俺も腹は満足だが、食前酒だけだったからな、少し飲みたい気分なんだ。少しなら付き合えるだろ?」 「少しだけ」 森本の返事を聞いて、冷蔵庫に冷やしてたSAで買って来てたワインを取り出し、ワイングラスは無いから普通のコップを2つ持ち戻った。 「ちょっと味気ないが、コップで悪いな」 「良いですよ」 コップに半分程ワインを入れ、カチンっと合わせ飲む 「このワインも、割と美味いな」 「ん、飲み易いですね」 「やはり山の方だから寒いよな?それに暗くなるのも早い」 「部屋は暖房ついてるから解りませんけどね。確かに都会ならまだお店もやってますし明かりがありますよね。でも静かで良いです」 俺はロビーにあったパンフレットをテーブルの上に出した。 「何?」 「本当なら、この星空ツアーに参加しようと思ってたんだが…。これな、ロープウェイで星空遊覧しながら山頂駅まで行って、山の上で寝っ転がって星空を見るツアーなんだ。自然のプラネタリウムとプロジェクションマッピングで、光の演出や天体望遠鏡で星を見たりと色々イベントやってる。最初は、これに申し込んでと思ったんだが…流石に、今の季節は寒いし山頂なんか尚更だしな。今度、季節を考えて参加しよう」 パンフレットをマジマジ見て 「楽しそうですね。山の上なら星も近くに感じるでしょうね。花桃以外にも、また1つ楽しみが出来ました! また、ここに来ましょうね。充分に、ここからでも星は綺麗だと思います。あとで、外に見に行きましょうね」 「そう言って貰えると嬉しい。今度は暖かい時期に来ような。俺もまた森本君とここに来れると思うと楽しみだ」 ‘ここに来るのが楽しみだ’ と話す森本とまたここに来れるんだと思うと、嬉しさが込み上げて来る。 「本郷さん、旅行に誘ってくれて、ありがとうございます」 改まってお礼を言われると照れるが。 「俺が森本君と一緒に旅行に行きたかったんだ。こっちこそ一緒に来てくれて、ありがとうな」 話してるうちにコップに注いだワインもなくなった。 そろそろ良い時間だな。 21時になろうとしてた。 「そろそろ露天風呂に入って星空を見ないか?」 「はい、露天風呂も楽しみです」 無邪気に笑顔で話すが……2人で入る意味解ってるのか? 少しアルコールでも入れれば緊張も解れるか?と思ったが……アルコールに免疫ないから許容範囲超えたか? 何にも考えてないような森本に、こっちがどう対処すれば良いか考えてしまう。 「先に、入っててくれ」 そう話すと、初めてハッとした顔をした。 今頃…気付いた? 「……あのぉ~、やはり…一緒に入る…ですよね?」 「そうだが?一緒に露天風呂から星空を見ようと言ったはずだ」 俺は当たり前のように話し、一歩も引かないと念を押した。 「そ.そうですよね?……じゃあ、先に入ってます」 俺の態度と口振りに観念したように浴衣を持ち、早速さと露天風呂に行った。 くっくっくっ…… 焦って、可愛い~な♪ さてと、俺も準備して行くか‼︎ ドキドキ…ワクワク…が止まらない。

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