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第327話 番外編~拓真(35)~
森本が露天風呂に行ったのを見届けて、鞄からローションとコンドームを取り出し、隣の寝室に向かいベット横にあるサイドボードに入れて置いた。
「これで良し‼︎」
露天風呂に行こうかと思ったが、ふっと煌の事が気になった。
動物園に連れて行くと叔父さん達行ってたが…。
21時…か。
いつもなら寝る時間だ。
鞄からスマホを出し、叔父さんに電話した。
「もしもし、叔父さん。拓真です。今日は煌の面倒見てくれてありがとう。で、煌は?」
「拓真か?動物園に連れてって大喜びでな。帰りにファミレスでご飯食べてきた。はしゃぎ過ぎて風呂入って直ぐに寝たよ」
「ありがとうございます。明日は遅くならないようにします。19時頃までには迎えに行きますから、それまでお願いします」
「そうだな、あまり遅くなると煌が不安になるかも知れないからな」
「じゃあ、宜しくお願いします」
「ああ」
そうか、煌はもう寝たか。
楽しかったんだろうな。
よっぽどの事がない限り、1度寝たら朝まで起きないから、もう大丈夫だろう。
これで煌の事も一安心だ。
俺は寝室で服を脱ぎ浴衣を羽織って、森本が待つ露天風呂に向かった。
バサッ!
羽織ってた浴衣を籠に入れ裸になる、冷たい風が肌に突き刺さる。
「う~、寒~」
露天風呂の縁にタオルを置き、その上に頭を乗せ寝そべって星空を見てる森本の姿があった。
俺の声が聞こえてるはずだが、決して俺の方を見ようとしない。
恥ずかしいのか?
露天風呂に足を入れると膝頭位までの深さで3~4人位なら入れるが、小さめな露天風呂だった。
バシャバシャ…
森本に見習って、俺も縁にタオルを置き頭を乗せ隣に寝そべった。
「気持ち良い~な。こうやって寝そべって、星空を見る為の露天風呂だな」
俺も星空を見て話す。
触れそうで触れない程の距離が、お互いが意識してるのが解る。
「……本郷さんが言ってた通りですね。本当に、空が星でいっぱいです。落ちて来そうな程の星で凄いです都会では見られない。こんな星空見られて感激です」
そう話す森本の横顔をチラッと見た。
星空を見上げてる顔は露わになり、やはり美形だと思った。
普段は笑ってる顔が印象深いが……綺麗だ!
また、星空を見上げた。
「1番綺麗に見えるとはネットでもあったが、これ程とはな。俺も森本君とこうやって見られて嬉しいよ」
「空気が綺麗で澄んでるから、こんなに星も輝いて見えるんでしょうね。外気は冷たいけど、こうやって露天風呂に入って体は温かいし、いつまでも見てられます。あっ! 今、流れ星が」
そう言って少し動いた拍子に、足が触れ.腕が触れた。
「「…………」」
体が一瞬触れた事に、お互い意識し緊張してしまい沈黙になった。
森本もだが、俺も相当緊張してる。
このままだと拉致が開かない。
俺は隣で星空を眺めてる森本の手を取り、湯の中で恋人繋ぎした。
手を取る時に一瞬肩がピクっとしたが、構わずに手を繋いで星空を眺めた。
「ツアーでも、こうやって山から寝そべって星を見る事が出来るらしい。ここより標高が高いから、もっと近くに見えるだろうな」
「……それも素敵ですけど、こうやって露天風呂入りながら見るのも贅沢です。それに…どこに居ても、2人でこの星空を見るって事が重要です」
森本の話を聞いて、思わずギュッと手を握り締めた。
景色や状況ではなく誰と一緒に居るか?が、重要って事か⁉︎
森本にとって、それは俺だと言う風に聞こえた。
俺も同じ気持ちだ!
告白したクリスマスから数ヶ月経ち、恋人同士であって恋人未満のあやふやな状況が続いたが……森本の気持ちも固まったか?
やっと恋人として見てくれたのか?
そう思ったら、もう我慢は出来ない‼︎
「森本君、好きだ。あれから俺にしては焦らずに、ゆっくりと森本君の気持ちを考えて過ごしてきたつもりだ……どうかな?……俺を恋人として考えてくれたかな?俺は…森本君の恋人になりたい。年もだいぶ上だし1度結婚もしてるし子供も居る……第一…俺は男だ……色々あるが、全部ひっくるめて俺と言う人間を受け入れてくれないか?俺の恋人になって下さい‼︎ これから先の人生を森本君と煌と笑って過ごしていきたい」
俺はこの数ヶ月の思いの丈を、隣に居る森本の横顔を見て口にした。
森本は黙って星空を見上げ聞いてた。
「あっ! また流れ星! この短時間に何度も流れ星が見れるなんて凄い!……僕は……僕も本郷さんが好きです。本郷さんの恋人にして下さい……正直言って、この数ヶ月は葛藤が無かったか?と言ったら嘘になります。本郷さんの事を好きだと思ったのは憧れと勘違いしてるんじゃないのか?とか男の人との恋愛はどうなのか?とか色々僕なりに考えたりしました……でも最終的には本郷さんが好きだって言う気持ちに辿り着くんです。本郷さんはモテるし……恋人になったら大変だと思う気持ちも正直あります。でも…そんな解らない先を考えて、本郷さんと疎遠になるより自分の気持ちに素直になろうと決め、この旅行に来ました。僕こそ恋人になって下さい」
やっと俺の方を見てくれた。
森本の気持ちも解るし、男との恋愛に踏み出す勇気も必要だが……正直に話してくれた事と俺を受け入れてくれた事が嬉しくって仕方無かった。
俺は上体を起こし、寝そべってる森本を起こしガバっと抱きしめた。
「ありがとう。幸せにするとは言い切れないが大切にする‼︎ 俺を幸せにしてくれ‼︎ 森本君、好きだ! 愛してるんだ‼︎」
「大切にしてくれるなら、それで充分です。前にも言ったでしょう?本郷さんは幸せになりたい.愛されたい人なんだって。僕が本郷さんを幸せにして愛していきます‼︎…から」
だいぶ年下で、いつも笑顔でほんわかしてる森本だがこう言ういざって時には男らしさを発揮し、はっきりと自分の考えを話す。
俺とは真逆な所に惹かれる。
俺はそんな森本が好きなんだ。
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