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第340話 番外編~嫉妬と幸せ③~
俺が頭を悩ましてる10分程で陽向が浴室から出てソファに座ってる俺の側に歩いて来た。
急いでシャワーを浴びて出たのか?髪を乾かさずにタオルを肩に掛け立ってた。
「早かったな。髪、乾かさなかったのか?水滴が…」
ソファから立ち上がり、陽向の前に立ち肩に掛けてたタオルを手に取り濡れた髪をガシガシ…拭く
シャワーを浴びた陽向の体からは、俺達の家で使ってるボディーソープの匂いがした。
俺と同じ匂いにホッとする。
陽向は俯き、俺にされるがまま拭かれてた。
俺は迷った末に、やはり何で遅くなったのか?聞こう!と思った。
若い時の俺ならイライラし嫉妬に狂い…だが、プライドが高いせいで聞く事も出来ずに、またイライラし1人で悶々と悪い事ばかり考え疑心暗鬼になってたはずだ。
だが、以前に陽向が ‘何でも言い合える関係で居たい’ そう言ってたし、俺もこのまま何も聞かずに蟠(わだか)りを残すのは良くないと判断した。
冷静に話す事ができるようになった俺は大人になったって事だろうな。
髪を拭きながら、陽向に聞こうと口を開いた。
「……ひ」
俺より少し早く陽向が俯いたまま話し出した。
「本郷さん、すみません! 僕、LINEで友達とご飯食べに行くって言ってたのに……実は……合コンに行ってました」
合コン⁉︎
懐かしい響きと陽向の口から『合コン』と言う言葉が出た事に驚いた。
それ程、陽向と合コンは結び付かないからだ。
「………何で、最初に言わなかった?俺に叱られると思ったのか?それとも俺が ‘合コンなんか行くな!’って言われると思って黙って行ったのか?」
冷静に! 冷静に!
合コンなら化粧や香水の匂いがしたのもある意味納得した。
拭いてた手を止め、タオルをそのままにし手を離した。
陽向は俯きタオルを頭から被った状態で軽く頭を横に振る。
「ち.違うんです。あっ! でも、合コン行ったのは本当です……けど、僕は合コンなんて知らないで……友達が昼休みに '何人かで、夕飯食べに行くから来いよ。いつも断るから偶には付き合えよ’ って言われて……他に行くメンバーにも誘われて……煌君のお迎えもあったけど……断れなくって、今回行けばまた暫くは断れるし……僕もこんなに誘うなら行っても良いかなって思って」
「で、友達と夕飯だけだと思ったら、店には女の子が居たって訳か?」
良くあるパターンだ。
俺も学生の時は人寄せパンダで良く誘われたし騙しうちで合コンに参加させられた事もあった、学生時代の事だが俺にも思い当たる節があり、陽向の話しはまんざら嘘でも無いと思った。
「……はい。それで言い出した友達に陰で話が違うって言ったんですけど……場の雰囲気を悪くする事も出来ないし帰る事も出来なくって……友達に1次会だけって頼まれて……」
それも有りがちだ。
「2次会には、行かなかったのか?」
「それは断りました。明日、用事あって朝が早いからって」
良く言った! えらいぞ!
「そうか。でも、それならそれでLINEでも電話でも連絡くれても良かったんじゃないのか?あまりにも遅かったから事故かなんかにあったのか?と心配した」
「すみません。LINEしようと思ったんですけど、スマホ取り出したら友達が雰囲気悪くなるからって言われて……」
「それならトイレに立った時にでも、スマホ持って行けば連絡出来ただろ?」
俺が学生時代に良くやってた事だ。
「あっ!……何で、気付かなかったのか?……ごめんなさい」
陽向はやっと顔を上げた。
合コン慣れしてない森本なら、そこまで頭が回らなかったかもな。
「で、良い子は居たか?」
嫉妬してると思われるか?
それとも嫌味だと思われるか?
そう思うが、俺の気持ちは嫉妬と嫌味の1つも言いたいと両方だった。
「居ません.居ませんよ! 僕、合コンするような女の子は好きじゃない。確かに、綺麗な人達だったけど……悪いけど、メイクもバッチリで服装も派手で…僕は苦手です」
俺の経験から言うと、合コンに来る女は大体がそんな感じでノリが良く遊び慣れてる女が多い。
合コンの目的なんて男も女も出会いを求めて、運が良ければそのままお持ち帰りだ。
最終目的はそれなんだから男共は皆んな躍起になってたし、俺はそんな奴らを馬鹿にし自分には関係ない事だった。
女を落とすのに躍起になってる奴らを尻目に、俺は黙って居ても女の方から寄って来たり誘われる事が多く、そんな女達の中から顔もスタイルもレベルが高い女か.遊び慣れてる女を選んでた。
陽向には理解できないかも知れないが、合コンの目的なんて男も女も出会いと駆け引きを楽しむ、そんな場だ。
今思えば学生の時に散々合コンやら飲み会で女を食い散らしてた癖に……陽向に嫌味を言うのは……そんな事を言える立場じゃないか……反省した。
「専門学校で男子がクラスでも数人なんです。だから自然と入学当時から仲良くなって、ご飯とか遊びとか……合コンも誘われました。けど、僕は幼稚園の先生になるって決めて、高3の夏休み位からピアノを始めて……それまで全然弾け無かったから……音楽の先生に昼休みや放課後に教えて貰ったりピアノ教室も通ったりして何とか譜面も読めるようになって弾けるまでなったけど……入学してピアノの授業の時には、男友達でも小さい時から習い事でやってたとか吹奏楽部に入ってたとかコンクールに出場したとか……僕とレベルが違ってて……皆んなに追い付くように居残りでピアノ練習をさせて貰ってたから……余裕なくて、誘われても断ってた事が多かったし……やっとピアノも何とかなるレベルまでなって…今度は、ベビーシッターのバイト始めたから……最近では、本郷さんと同居してバイトじゃなくお互いが協力するようになって……少し余裕できて、友達と偶にご飯も食べに行ってたりしてたから……学生時代しか遊べないからって……僕を内緒で合コンに誘ったみたいです」
陽向の真面目な学生生活が良く解った。
ショッピングモールの楽器店でピアノ弾いた時に聞いた事があった、その時に ‘上手い’ と思ったが凄く努力したんだな。
俺も陽向の友達みたいに学生時代にしか遊べないと思った方だから、その気持ちも解らないでも無いが……自分の恋人が合コンに行くとなると話は違ってくる。
確かに、陽向は家でも時々ピアノの鍵盤の紙を広げて弾く真似をしてる時がある。
そんな陽向が俺に嘘をついたりしない!
それに俺が聞き出す前に、陽向の方から合コンに行った話をしてきたのが、その証拠だ‼︎
「……学生の時しか遊べないってのは、ある意味本当だと思う。社会人になったら金や自由があるから遊べると勘違いするが、金はあっても時間は縛られるし責任も出てくる。学生時代程、馬鹿騒ぎはできない。陽向は遊びたいか?俺と付き合ってるし煌も居るし遊びたくっても遊べないのが現実だ。俺は……」
別れる事はできない‼︎
陽向が遊びたいと言うなら……俺が我慢するべきか⁉︎ できるのか?
飲み会や合コン……今日みたいに酒や化粧.香水の匂いをさせて帰って来るんだぞ。
耐えられるのか⁉︎
散々、学生の時に遊んだツケが今になって回ってきたのか?
まだ、飲み会や合コンだけなら……だめだ‼︎
酔った勢いで……女と一夜を……だめだ‼︎
やはり……無理だ‼︎
なら……別れられるのか?
それも無理だ‼︎
俺には陽向しか居ない‼︎
陽向を愛してる‼︎
どうすれば良いのか?頭を悩ます‼︎
陽向の返事は……聞くのが怖い。
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