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第345話 番外編~和樹ver.~
また、寝坊してる海を起こしに行かなきゃ~。
毎日毎日…俺にあの手この手で起こされる海は、どこか楽しんでるんじゃないか?と最近は疑ってしまう。
だから、前にそれとなく聞いた時があった。
「俺が来る前には1人で起きてたでしょ?」
「一応、目覚まし掛けて起きたり…2度寝した時は並木の電話攻撃で起きた……朝は弱いんだよ~今は和樹がきちんと起こしてくれるからって、並木も助かるって言ってた。和樹様.様だな。俺の朝は和樹が起こしてくれる事から1日が始める。それって凄く幸せな事だよな~」
そんな風に嬉しそうに話すから……俺もついつい甘やかしてしまう。
でも……俺も実は……この朝の約束事が好きだったりする。
さてと…今日は、どうやって起こそうかな~。
寝室のドアを静かに音を立てず開けて入る。
ベットには、こんもりと布団が盛り上がってる。
ん?足だけ布団からはみ出してる。
良し!
ベットに近づき、海の足首を持ち脇に挟みこちょこちょ……擽る。
海は足をバタバタ…し抵抗するが、がっちり掴んで離さず擽る。
「くっ…あははは…和樹…止めろ…くっくっくっくっ…だめだ……降参.降参!」
「じゃあ、起きる?」
「あははは…起きる.起きるから…止めてくれ…くっくっくっ…あはは……」
俺は擽ってた足首を離し、寝室のドアに向かい出る前に海にもう一度念を押す。
「朝食できてるから早く起きてね。2度寝したらもう起こさないからね~」
そう言いダイニングに向かいテーブルに着く。
海は直ぐに起きてくるだろう。
カタッ…バタバタ…ドタドタ……
寝室のドアが開いて海の姿が現れた。
寝乱れたパジャマと寝癖、そして欠伸をしながら俺に近づく。
可愛い~な。
会社での社長としての威厳とできる男って言うイメージとは程遠い…こんな海を見れるのは俺と並木さんだけだろう。
並木さんに言わせると、だらしない男らしい。
俺から見たら、可愛い~んだけどな~。
やっぱり惚れた弱味?あばたもえくぼ?
惚れた欲目だよな。
俺の側に来た海は屈み、俺の唇にキスした。
「おはよー。今日も朝から可愛い~な」
朝のキスとこの台詞も毎朝の事だ!
約束事?ん~ルーティーンかな?
「おはよ。早く食べないと並木さん来ちゃうよ~」
「はあ~、並木は怖いからな」
そう言って笑いながら席に着きコーヒーを飲みながら新聞を見る。
もっと早く起きれば、ゆっくり新聞見れるだろうに……。
片手で食パンを囓りながら新聞を見て…そして新聞から視線を外し、俺に思い出したように言ってきた。
「和樹、前に言ってた派遣なんだが、今回は大学生が2人社会勉強がてら短期のバイトに来る事になった」
「そうなの。来年の新入社員候補?」
インターンと言う事かな?
「それはどうかな~。うちとしては社会貢献の一環のつもりだ。学生に、社会出る前の経験とか仕事場の雰囲気とか体験の場を提供するって事。派遣を1カ月頼もうと思ってたから、その話しがきた時に丁度良いと思ってな。何年か前にも頼まれた時あってな。それから時々社会貢献でな。もちろん良い人材なら入社して欲しいって言うのもある。明日から来るから色々教えてやってくれ、和樹も仲良く頼むな」
「解りました。俺もまだまだですけど頑張ります」
「1カ月だけだから、そんなに気負うなよ」
まだ下っ端で…1カ月でも後輩ができると思うと嬉しかった。
今までも忙しい時は、短期で派遣さんが来たけど……皆んな俺より年上だったからな。
嬉しさとやる気が顔に出てたのかも……海が笑ってるもん。
「年齢の近い人達だと思ったら…つい嬉しくなって」
先輩風は吹かさないように気をつけよう。
楽しい職場だったと思って大学に帰って欲しいし……出来れば、来年の就職先の1つにでも考えて貰えれば良いなぁ~。
「本当に可愛い~よな~。ま、宜しく頼む」
「はい!……早く食べないと並木さん来ちゃうよ。俺は先に出ますからね」
「そうだった。並木は煩いからな」
新聞を畳み朝食を食べる海を見て、それから俺は仕事に行く準備を始めた。
毎日がこんな朝だ。
俺は海との生活に安らぎと幸せを感じてた。
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