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第347話 番外編~和樹ver.~

やはり柏原君と一緒に仕事をする事になった。 パソコンに商品掲載と説明文とアピールポイントを入力する毎日だ。 心配してたけど一緒に仕事をするうちに、柏原君も俺に打ち解けてきてくれた。 仕事中は、お互い集中しカタカタ…パソコンを打つ音が近くで響いてるけど、困った事や解らない事を直ぐに聞いてくれて、説明したり指示をすると「解りました」「ありがとうございます」と、素直に言いってくれて仕事も凄くやり易く捗った 無口なイメージだったけど、仕事も一緒に作業して年も近い俺には話し易いらしく、仕事以外の話しも休憩中や仕事の合間にも話すようになり笑ったりする。 俺も何だか後輩ができたような気がして、俺からも話し掛けたり他の社員との輪にも入れるように心掛けた。 1週間も過ぎると、他の社員も柏原君の真面目な所と意欲的な所が解って、少しずつ話すようにもなり柏原君も和かに対応してた。 最初のイメージで損してるな。 神谷君と一緒だから、尚更、最初のイメージが暗く思うのかも知れない。 その神谷君は最初のイメージ通り明るく誰とでもフレンドリーに話し直ぐに仲良くなるタイプらしく、携帯班の方からは仕事中も笑い声や話し声が聞こえ楽しそうだ。 同じネットショップの仕事をしてるが、主なシステムなどはパソコン班でするし、俺と柏原君がしてる商品掲載したものを携帯班にも送り、それをパソコン用から携帯用に変換する作業が神谷君の主な仕事だった。 笑い声が聞こえるオフィスで、カタカタ…作業してる柏原君に声を掛けた。 「柏原君、携帯班が良かったんじゃない?」 「何でですか?」 パソコン画面を見ながら手は休めず返事が返って来る、俺も手は止めずに話す。 「だって、携帯班楽しそうだし。柏原君には忙しい割には単純作業で同じバイトなのに悪いなぁ~って」 「俺、どっちかと言うと黙々と作業してる方が性に合ってるんで。それに今からはネット販売多くなりますから勉強になります。あとで、木村さんに商品管理システムとか色々教えて貰おうかなって思ってます」 「そっか~。ここに居る間に、たくさん吸収して行ってね。俺も教えてあげられる事があったら聞いてくれれば教えるよ」 「ありがとうございます。明石さんには良くして貰ってます。実は、凄く頼りにもしてます」 「じゃあ、今日は頑張ってここまではやろう!」 「はい!」 あとは黙々と作業に没頭した。 柏原君の言葉が凄く嬉しく、俺は更にやる気が出た。 あまり表には出さないけど、本当に意欲もあるし真面目で良い子だと思った。 カタカタ…カタカタ……黙々とキーボードの打つ音の中に明るい声がした。 「岳~、お昼行こう」 神谷君が柏原君を昼食に誘いに来た。 殆ど毎日2人は昼食を一緒にする。 「あっ! ごめんね。良いよ、お昼行っておいで」 ここでは昼休憩も皆んな一緒に取るわけじゃなくそれぞれが仕事に一段落したり、人によっては時間だからと昼休憩とったりとマチマチで、俺も仕事の進み具合で昼休憩をとってたから、柏原君に言うのをいつも忘れてしまう。 柏原君は申し訳無さそうな顔をするが 「俺も適当に休憩に行くから。バイトなんだからきちんと昼休憩取らないと」 そう言って送り出し、切りの良い所まで俺はまた黙々と作業をした。 柏原君も作業にも慣れ2週間程経った時だった。 朝から同じ体勢でずっと作業をしてた所為で、肩と背中が凝り固まりを感じ椅子に座りながら背伸びをし首を回した時に社内の掛け時計が見えた。 「あっ! 柏原君、昼休憩過ぎてる!」 「あ~、もうそんな時間ですか?」 いつも昼食を誘いに来る神谷君が来なかった事で気づかずに時間が過ぎてた。 神谷君の方も忙しいのかな? 「ごめんね。昼休憩行って良いよ。神谷君、待ってるんじゃないの?」 「俺、切りが良い所までやります。響には、昼休憩は別々にしようって言いましたから。途中で作業止めるのも嫌だったんで」 凄く意欲満々で良いな。 その気持ちが単なるバイト気分じゃない事が解って俺も嬉しかった。 「じゃあ、俺も切りが良い所まであと少しだから一緒に昼ご飯食べに行く?今日だけ奢ってあげるよ」 柏原君の気持ちが嬉しく、先輩風吹かしそう言ってみた。 「え~、良いんですか?ラッキーだな。ゴチになります!」 そう言う所は学生らしい。 「今日だけだよー。じゃあ、早い所終わらせて行こう!」 「はい!」 その日を境に、俺と柏原君とで昼食を食べに行く事が多くなった。 柏原君は仕事が中途半端になって昼休憩を取る事と俺がまだ仕事してるのに先に行く事がずっと気になってたらしく、どうせ同じ仕事してるなら一緒に行った方が効率も良いと考えてたようだった それでいつも誘いに来る神谷君に ‘わざわざ誘いに来なくて良い’と言ったらしい。 「響は俺が人見知りな所があるから、昼休憩に誘いに来てたんだと思うけど、俺の事は気にせずに響も携帯班の人と一緒の方が良いと思って」 なる程ね。 神谷君は神谷君で柏原君の性格を知って気を遣ってたのかも知れないし、柏原君は神谷君が携帯班の人と一緒に昼休憩取った方が仕事でも人間関係も上手くいくと考えてたようだ。 お互いを思って……2人が長い友達関係だと解る 仲が良いんだな。 それからの昼休憩は2人の時もあるけど、時間が合った他の社員と一緒に行く事もある。 柏原君が言った通り、一緒の仕事をしてる事もありその方が効率が良かった。 それを良く思わずに居た人が居たとは思いもしなかった。

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