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第348話 番外編~和樹ver.~

仕事の事は殆ど家では話さない海が珍しく聞いてきた。 「和樹、仕事の進捗状況どうだ?」 「今の所は順調かな。柏原君も居るし、凄い助かってる。所々、商品説明文が抜けてたり変だなと思う所も良く気がついて指摘してくれる。不備な点があると進まないから、その度に相手会社の担当者に確認するのがちょっと面倒だけどね」 「そうか。単純作業だが、掲載商品を見て一般客は注文するんだからな。1番大切な仕事だぞ」 そうか、海に指摘され自分もネットショップ見た時に、掲載商品や説明文を見て注文してると考えたら大切な仕事なんだと改めて感じた。 「そうだね。何か黙々とこなしてたけど1番目に止まる事だったんだね。ありがと。また、やる気が出た」 海は笑いながら 「和樹は頑張り屋さんだからな。あまり根を詰めるなよ」 「うん。柏原君も居るし手が空いてる人も手伝ってくれるし、大丈夫だよ」 「システムと最初の掲載商品等が出来れば、あとは納期までに引き渡して、それからはあっちで追加で掲載していけば良いんだからな。こっちは半年事にシステムメンテナンスすれば自動的に収入になる。大変なのは、今だけだ」 先の事まで考えて営業する海の営業力にはいつも感心する。 そうじゃないと会社の社長はできないんだろうけど。 先見の明と行動力。 海の凄い所だ。 海のそう言う所が尊敬する。 「それと、バイト達はどうだ?」 「うん、柏原君は一緒に仕事してるから解るけど黙々と良く頑張ってるよ。神谷君は皆んなと仲良くやってるみたい」 「そうか。川上も柏原君は無口だが黙々と仕事をして助かると言ってたな。土屋も神谷君は明るく素直で良いと言ってた。今回のバイトは当たりだったかもな」 「当たりとか失礼だよ~」 「悪い.悪い。だがな、口では出来るような事を言う奴が居るが、実際は使えなかったりする奴もたまに居るからな」 「海、口悪いよ!」 「だから、悪いって先に言ったんだ」 海も半分本心で半分は冗談らしく笑って話すから俺も笑って応えた。 「そうだ。小林が神谷君と和樹が似てるって言ってたが、俺と並木とで ‘似てるのは、背丈だけだろ’ と言ったら ‘まあ、確かに2人ともちっこいですからね~’って、笑ってたぞ」 揶揄うようにニタニタ笑う海に、俺はムクれた。 「似てません! そりゃ~、最初見た時に親近感は湧いたけど…」 「親近感は湧いたのか~」 またニタニタ…笑う。 「でも、神谷君の方が社交的で顔立ちも華やかですよ。綺麗な顔立ちしてます。俺はどっちかと言うと地味だから全然似てないよ~」 最後の方は自分を卑下してるようで嫌だったが、本当の事だ。 「そうか?俺には和樹の方が可愛らく良いと思うがな。そうムクれるなって、可愛い顔が台無しだぞ」 俺の頬を片手でギュっと掴むから、口から空気が抜けていく。 「海~、痛いよ~」 「ほら、膨(ふく)れた頬がなくなった~。膨れた顔も可愛いが、やはり笑ってる顔の方が可愛い~ぞ」 海はいつもそんな嬉しい事を言ってくれる。 それは何年過ぎても一緒に生活しても変わらない ‘可愛い~’ とか ‘愛してる’ と言う言葉を、臆面も無く話す海にいつも安心と癒しを貰ってる。 海の側に居て良いんだ……と。 「海、大好き」 「俺は愛してる」 顔を見合わせ頬が自然と緩み 「俺も愛してる」 そう言うと、海ももっと幸せそうな顔で笑う。 そして、そのまま寝室に連れられたのは言うまでも無い。 最近、気になってた事があった。 それは…俺の気のせいのかも知らないと思い、社長である海には言えなかった。 俺の気のせいなら良いけど……。 気にし過ぎて、そう思い込んでるのかも……。 仕事には支障ない事で……俺は誰にも言えずに居た。

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