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第350話 番外編~和樹ver.~

「「おはようございます」」 『おはよう』 就業間際に柏原君と神谷君が挨拶しながらオフィスに入って来た。 俺も2人に向かって挨拶する。  「おはよう」 「おはようございます。明石さん」 「…………」 2人に向かって挨拶したのに返ってきたのは、柏原君だけだった。  神谷君は聞こえなかったのか?無言で自席に着いた。 確かに、少し離れてたけど……。 皆んなには和かに挨拶するが、俺にはこう言う事が何度かある。 それが聞こえなかった感じにも見えるし和かに挨拶を返す時もあるから、俺も最初は気にもしてなかったし皆んなも気付かないと思う。 でも、商品掲載の件で携帯の方の進捗状況を聞きに行った時に、神谷君の側で聞いた時にも…。 「どう?携帯の方は?」 「……………」 あれ?集中して聞こえないのかな? 「携帯の方の進捗状況はどうかな?」 もう一度確認すると 「あっ! ………順調です」 今、気付いたと言う感じで口数少なく返事が返ってきた。 「パソコンから携帯に変換する時に、何か不都合な事とかない?」 「……有りません。何かあれば土屋さんに聞きますから」 いつも明るく和かな神谷君とは思えない程、辛辣で素っ気なかった。 確かに、土屋さんに聞くのが1番だし仕事に集中してる所に話し掛けたからだと思い直した。 「じゃあ、宜しくね」 俺はそう言って自席に戻り、また仕事を再開した その時も、何かいつもの神谷君じゃないと思ったけど……それから朝の挨拶の時も……皆んなと話してる時も俺が話しに加わるとさり気なく席を外したり……最初は気のせいと思ってたけど……最近では気のせいじゃないと思う事が多くなった。 何か、神谷君の気に触る事をしたかな?  俺が気付かないだけで、嫌われるような事してたのかも……。 ずっと気になってた。 その事もあり、神谷君と少し距離を取ってたけど…海の事をカッコいいと言ったり最近では…‘社長の好きなタイプってどんな人かな~‘ とか ‘社長の恋人になる人は、やはりそれ相応の人でしょうね’と、俺に聞こえるように周りの人と話してる声が聞こえたりする。 柏原君の話しだと、俺と海の関係は知ってるはずなのに……知らない振りでそんな事を話す。 まるで、俺が海には相応しくないと遠回しに言ってるように聞こえた。 それは……俺が一番解ってて気にしてる事だった パソコンに集中してる振りして……聞こえない振りで……しっかり聞こえてたけど…反応してしまうと泣き出しそうになるからパソコン画面をジッと見てた。 そう言う事が重なり、俺は神谷君からは好かれてないと……理由は解らないけど……嫌われてると確証した。 やってる仕事は一緒だけど…パソコン班と携帯班で席は離れてるし、仕事中はそんなに話しをする暇もないし……俺としては嫌われる理由が解らなかった。 そして唯一の理由とするなら……海の事かもと最近では思うようになった。 神谷君……海の事が好きなのかな? だから…海には相応しくない俺の事が気に入らないのかも……。 皆んなが俺と神谷君が似てると話してるのを聞いて……それなら自分の方が相応しいと思った? そう考えると、神谷君が俺に対して素っ気なかったり軽く無視したりする態度を取るのも納得がいった。 「明石さん?明石さんってば」 「えっ! 何、ごめん。ボーっとしてた」 「疲れてるんですか?」 「違うよー。で、何?」 「この商品ですが、色が書かれてないんですけど……」 資料を見ると色の表示が抜けてた。 「本当だ。電話で担当者に聞くから…次いでに、他にもミスやおかしいと思う所あったら一緒に聞くから、今日の分を取り敢えずザーっと見てくれる。俺の方も確認するから」 「解りました」 資料を見始めた柏原君に話し掛けた。 「柏原君、今日のお昼休憩なんだけど。神谷君と3人でご飯食べに行かない?」 2人だと気まずいし、柏原君と3人なら話しもどうにかなるしコミニュケーションを取れば、何か誤解が解けるんじゃないか?と……神谷君との仲を改善しようと…良い考えだと思い柏原君を誘った 「えっ! 何でですか?」 「ん、たまには良いかなって。前は、柏原君と神谷君は一緒に食べに行ってたじゃない?でも、俺に気を遣って…仕事も切りの良い所までって言うのもあったけど……。俺も柏原君とだけお昼ご飯行ってるから神谷君ともゆっくり話す時ないなって思ってさ」 「別に、俺は構わないですけど。そんな気にしなくても良いと思いますが。でも、明石さんが響とも話したいなら良いですよ」 「じゃあ、昼休憩前には切り良く終わらせよう」 「はい!」 柏原君の良い返事を聞き、お互いまたパソコン画面と睨めっこした。 世間話でも何でも良いから、話せば俺の事も解ってくれるんじゃないか? 何か誤解があったのかも知れないし、取り敢えず話す事が第一だと思った。 もしかしたら、これが良い機会になるかも知れないと心の中では思ってた。 俺の勘違いかも知れないけど…俺なりに何とか解決したかった……解決の糸口を掴みたかった。

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