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第356話 番外編~和樹ver.~

「ただいま~」 「お帰り~」 リビングから声が聞こえ、急いで部屋に入った。 「ただいま、海。先に帰ってたんだ?」 「ああ、遅くならないって言ったはずだ」 ん?何か機嫌悪い? 「そう言ってたね。ごめん.ごめん」 「和樹はどこに行ってた?俺は和樹が待ってると思って、早めに切り上げて帰って来たんだが」 俺の為に? こんな時だからこそ、海の気持ちが嬉しくって、俺はソファで座ってる海の膝を跨り座り抱き着いた。 パフッ! ギュッ! 「海、大好き~~」 俺の体を受け止め、背中に手が回り抱きしめてくれた。 「こら~! 可愛い事するなって~。このまま食べてしまいたくなる」 「食べても良いけど、美味しくないよ?」 「いや、俺には和樹のどこもかしこも甘くって美味い!」 クスクスクス… くっくっくっくっ…… 甘い雰囲気に自然に笑いが洩れた。 幸せってこう言う時に感じる。 「で、どこに行ってた?」 「少し残業してたら、並木さんが戻って来て。‘社長も出掛けてるし、たまには夕飯一緒に食べよう’って誘ってくれました。で、奢って貰っちゃいました」 「並木の奴。俺が居ない間に~。で、何、食べた?」 「ん?ファミレスで良いって言ったんですけど… ‘若いんだから、肉を食べなさい’って……焼肉屋さんに連れてって貰いました」 俺が元気無かった事を知って、肉を食べて精をつけさせようという並木さんの優しさだ。 「焼肉⁉︎………俺と行く約束だったはず!」 あっ! また機嫌が……折角、ご機嫌になってたのに~。 「もちろん、海とも一緒に行くよ‼︎」 「上肉だったか?」 普通だったと言えば並木さんに悪いし上肉だと言えば海の機嫌が……こんな事で嘘言っても仕方ないし……。 「うん! もう噛まなくても良いって感じで口に入れた途端に蕩けるって言う感じ。凄く美味しかった~」 「………良かったな」 「海~~、機嫌直して。今度は海が美味しい焼肉屋さんに連れてってくれるんでしょ?楽しみに待ってるからね」 「もちろんだ‼︎ 並木が連れてった焼肉屋より何倍も美味い店に連れて行く‼︎ くそぉ~~並木の奴!」 クスクスクス…… 「並木さんの前で同じ事言える?」 「………言えないから、今…言ってる」 クスクスクス……可愛い~んだから。 「それで、海は神谷君をどこに連れてってあげたの?」 お寿司屋さん?ステーキ屋さん?それとも焼肉屋さん?社長である海なら、それなりのお店に連れてってあげたんだろう。 「ん?ファミレスでハンバーグ食べた」 「えっ! ファミレス⁉︎ 何で?社長なんだから、どこか高級なお店に連れてってあげなかったの?」 「どうして?話しするだけならファミレスで充分だ。若い子なら高級な所より、その方が話し易いと思ったんだけどなぁ~。別に、社長だからってカッコつけなくても良いかなって。どうせ良い店に行くなら和樹と一緒の方が良いし」 何だかホッとしたのと嬉しい気持ちとで……カッコつけない海が逆に大人だと感じた。 海らしいって言うか…そんな海が好きだな。 「まあ、行き慣れてるだろうから気疲れはしないと思うけど。それで神谷君の話しはちゃんと聞けたの?」 探ってるように思われただろうか? でも……聞きたい。 「昼に少しだけ話しを聞いたんだが、時間無かったからな。神谷君もちゃんと話したかったんだろう。和樹にも言ったけど、これから就活するだろそれでこのまま神谷君と柏原君をうちの会社に就職させて貰えないか?って言われたんだ」 えっ‼︎ うちに…就職⁉︎ また、会う?ううん、これから先ずっと…だ。 俺の不安が顔に出てたのかも知れない…海が俺の頭を撫でた。 「神谷君は結構必死にアピールしてきたよ。バイトして見て会社の雰囲気が良いとか.皆んなの人柄も凄く良いとか.仕事もやりがいがありそうだとかな。そう言って貰えると社長としても嬉しいが…うちの会社は結構学生にも人気があるんだよ。会社自体は大手じゃないが、自由な社風と仕事自体も結構好きにさせてるだろ?俺は営業回って仕事を取って来て社員が納期までに仕上げる事も1つの仕事だが、逆に社員が自由に好き勝手にアプリ開発や考案したりゲーム等も開発したりして、良いものは企業に売り込むのも俺の1つの仕事だ。イメージ的に自由な会社って事で密かに人気なんだ」 そう言うイメージが確かにある。 社長や並木さんには一目置いてるけど、社員全員楽しい人達でちょっと変わってて面白いのも働き易いし仕事もやりがいがある。 学生に人気があるのは解る。 「確かにね。働いてる俺が1番解ってる」 「和樹が入社してからは、和樹には悪いが新人はとってないんだ。仕事は切れずにあるし忙しいが今の人数でやれない事もない。本当に、多忙な時期だけ短期で派遣やバイトを頼む事にしてた。それは並木と相談して決めた事だ。今の人数がベストだと思ってるし、人件費の事を考えるとそれなら皆んなの開発費用に充てたり機器類に充て仕事環境を良くした方が良いって話してた。来年、新人をとるかどうかはまだ決めてないし、試験や面接で良い人材が居たら考える。それに、まだ皆んなに言ってないんだが、パソコンや携帯関係だけじゃなく、これからはバーチャルやA Iの時代になる。そっち方面もこれからは開発していきたいと考えてる。出来ればそっち方面に詳しい人材を考えてる所だ。後は…目の不自由な人にスマホのカメラと連動して道案内出来るアプリを開発し、杖と一緒にスマホを首からぶら下げてイヤホンから音声が流れれば、もう少し目の不自由な人達も怖がらずに道を歩けるんじゃないか?と思ってる。例えば、駅の階段もカメラで段数を確認して音声で流れるとかな。スマホだけに頼られても困るが杖と一緒に上手く使う事が出来ればと……。そう言う人の役に立つ事も仕事に繋げていきたい。今後の事は考えてはいるんだが、新人を取るかどうかはまだ解らないな。その話はしてないが、神谷君がうちにどうしても入社したいなら、他の学生と同様に試験や面接を受けて欲しいと話した。神谷君や柏原君がどうとか言うんじゃなく、学生皆んなに平等にチャンスを与えたいんだ。俺の言ってる事、解るか?」 これからの仕事への意欲と社員を大切に思ってる事や学生皆んなに平等にチャンスを与えようとする海の社長としての責任や姿勢に感動した…また改めて海って言う人間性の凄さを感じ、更に尊敬した。 「うん! 解るよ」 「ま、そう言う事を神谷君に話した。うちの会社を気にいってくれたのは本当に嬉しいが、他の学生が一生懸命に就活すると言うのに、神谷君のやり方が俺は好きじゃない。早く就職を決めたいとかチャンスを逃したくないとかって言うのも解るが、直に俺に頼んだりするのはフェアじゃない気がする。それだったらまだ就職試験受けようと思ってます!ぐらいのアピールなら、まだ俺的には良い印象を持った。それに就活して見て他の会社を見るのも良いと思ってるしな。俺から色良い返事を貰えなかった事でがっかりしてたけど、さっきも言ったが、人件費や人が増えれば機材も増やす事になるし他にも諸々ある。こればっかりは幾ら俺が社長でも一存では決められない」 「確かに就活って本当に大変なんだよね。俺も経験してるから早く決めたい!って気持ち凄く解る。でも、海の話す事も解るし海が言うように就活を通して色々な会社を訪問したり聞いて見たりする事も凄く勉強にもなる。神谷君も柏原君も色々な会社に就活してみて1番自分が合う会社に就職して欲しいね」 「そうだな。来年、うちに試験に来るかどうかは解らないが、頑張って欲しい」 「で、来年は新人とるんですか?」 「解らん! けど、無理にとる事も無いとも思ってる。もし、とるとしても1人かな?今の人数が俺と並木の目が届くし、直ぐに意思伝達ができ仕事もスムーズにできるからな。毎年、就活の時期になると並木とそう話してるんだ」 「人気の会社の社長も大変ですね?」 「まあな。社長業は大変だし責任もあるが、その分やりがいと自信もある! ま、和樹には悪いが、会社でも家でも疲れた俺の癒やしになって貰うからな」 「喜んで‼︎」 「じゃあ、話しが終わった所だし癒やして貰おうかな~」 フワッ! えっ! 海の腕に抱かれ寝室に運ばれてた。 「海⁉︎……その癒やし?」 「今日はその癒やし~! 明日は仕事だから1回で済ませる」 「……お願いします」 海の社長としての責任や覚悟を聞き…俺も海と抱き合いたかった。 そして神谷君の事を正直に話してくれた海の誠実さが伝わった。 そんな海の隣に居る俺が誰から見ても相応しい人間だと見られたい.言われたい! でも…その一方で……海が凄い人だと感じれば感じる程、俺は……‘大した事ない’ ‘似合わない’ って言葉が頭の中で声がする。 それを打ち消すように、いつもより淫らになった。

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