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第361話 番外編~和樹ver.~

「響は表立っては今までと変わらない感じだったけど……それからの響は人が信じられなくなってた。女の子と付き合う期間が短くコロコロ相手が変わった。そして…あれ以来…俺だけは信頼して徐々に、俺に依存していくようになった。俺が誰かと仲良く話すと邪魔したり、女の子と良い感じになると響がその子を誘惑したりとかね。そんな響に嫌気が差して、俺から離れようとした時もあった……そうすると響は泣くんだ。‘信頼出来るのは岳斗だけだって離れないで側に居て欲しい’ってそれで俺も束縛は止めるように言って響も解ったと……でも、今日みたいに裏で画策してやるんです。大学進学も俺に合わせて進学して…ずっと響は俺の後を追って離れないようにしてる。今回のバイトだって教授から俺に話しがあった時に、響は自分もしたいって言い張って。仕事面で明石さんと良く話す事や俺が日を追う事に明石さんに懐いていくのが許せなかったようで、明石さんを困らせようと社長にちょっかい掛けたんですよ」 俺を困らせる為? その為だけに、海まで巻き添えに…? 「それなら俺に言ってくれれば…」 「響には俺が注意したんです! 明石さんへの態度や社長にちょっかい出す事も……俺の前では素直に謝るけど……逆に、俺が明石さんを庇ってるとか思って嫉妬心を更に煽ったみたいで…あと、最近聞いたんですが、社長に俺と響を就職内定させて欲しいって頼んだけど断られたって。俺は流石にそれは怒りましたよ。俺の知らない所で勝手に動いて……だから響に ‘確かに良い会社だけど、俺は他の会社も見てみたいし自分の就職先ぐらい自分で決める’ってね。そしたら響は ‘就職先が別になったら不安だ。離れたくない’って、俺が響の知らない所で就職して離れる事を怖がって、今日社長にもう1度話しに行ったんだと思います。キスしたのは……たぶん、それで社長が響の事を気に入って考えを変えてくれるとか.そんな事を考えたんでしょうね」 神谷君の自己中心的な考えで、周りは振り回されたのか…。 でも、神谷君の気持ち俺には解る。 俺も就活の時……拓真と離れたくない一心で、拓真の就職先の近くを考えたりしてた。 だから柏原君と離れたくない.不安な気持ちも解る 嫉妬、依存、束縛……もしかして神谷君は……。 「立ち入った事、聞いて良い?」 「はい、何でも」 「神谷君は柏原君の事が好きなの?2人は付き合ってるの?それなら何となく辻褄が合う気がして」 「響の好きな人は……たぶん俺です! 付き合ってはいません! 高校の時に、1度冗談ぽく言われた事がありました。その時は俺には付き合ってるの子が居て、響の事はそんな風に考えられなかったから俺も冗談っぽく断りました。それもやはり俺に依存や束縛する要因の1つだったのかも。それからの響は俺に当て付けるように付き合う相手をコロコロ変え、大学に入ってからは男とも付き合うようになり、俺が彼女出来そうになるとその子を誘惑したりね。全部、俺への当て付けと嫉妬です」 神谷君が自分を好きだと自信を持って話す柏原君にしか解らない何かがあるんだろう。 それは高校の時からの付き合いの中で、積み重なってきたんだろう。 「神谷君が柏原君を好きなのは解ったけど……今の柏原君の気持ちはどうなの?だって、そんな事されて本当に嫌なら、幾らだって突き放す機会はあったはずだし柏原君から離れる事もできたはずだよね?そうしなかったのは、なぜ?」 「俺の気持ちは……たぶん響を好きなんだと思います。響は俺がついてないと危なかしくて目が離せないんです。放っておけないんです」 「じゃあ、2人は両想いなんだ。なぜ、神谷君に言ってあげないの?喜ぶと思うけど、そうしたら不安も無くなってこんな事しないと思うけど」 「だから、最初に俺のせいだ!と言ったんです。俺、響に気持ちを話すつもりないから」 「何で?見てて危なかしいって言ってたよね?安心させてあげないの?」 「言わない事で、響はずっと俺を追い掛けて離れない努力をする! もし、俺から告白して今までは手に入りそうで入らなかった俺が手に入った事で響は安心し興味を無くすかも知れない。それと今の響では付き合ったとしても、俺は長くは続かないと思ってる。誘惑したり手玉に取ったりと、そう言う駆け引きめいた事をする響は好きじゃない……素直な気持ちで俺に真っ直ぐ自分の気持ちを言ってくるのを待ってる。自分で気付くまで…だから、俺からは言いません‼︎」 柏原君も神谷君にある意味依存してるのかも…。 「神谷君と柏原君の間には何も無いの?神谷君は男の人とも付き合ってたって、それは……良いの?」 聞きづらいけど……2人に体の関係があるのか?気になった。 「響は何人かの男と付き合ってたけど、最後まではしてないって言ってた。抜き合いぐらいはしてるとは思う。それは響を信じるしかないけど。俺と響は……キスだけしてる。響が ‘キスして’って言うから……俺は体より、もっと心とか気持ちで繋がりたいと思ってる。だから体が先の関係はしなくない。それ以上は今は考えてない」 「そう。なんかあやふやな関係で……神谷君の気持ちも少し解るな」 「明石さん、優し過ぎますよ。響にあんな事されて……でも、社長が好きになる気持ちが解るな」 「何か変な話しになったね。……就職先が違っても神谷君とは今まで通りに付き合うの?」 「ん~、響次第かな。就職先が一緒かも知れないし、別になるかも知れないけど……これからお互い色んな人と出会うだろうし、もしかして俺よりもっと響の事を考えて信頼出来る人が現れたら、響はその人を好きになるだろうし俺にも響以上に好きな人が出来るかも知れない……先の事は解りません。でも…響が俺から離れないなら……危なかしくて放っておけないんで」 確かに、先の事なんて誰にも解らない。 俺もずっと拓真と一緒に居ようと思ってた、色々あって海を好きになった。 まだ学生で若い2人には、この先まだまだ色んな人と出会うだろう。 その中で1番心から信頼でき安心出来る人がお互いだったら良いな。 「俺が絡むと嫌な奴になっちゃうけど……響はそれ以外では本当に良い子なんです。だから、響のした事は俺が原因なんです。すみませんでした‼︎」 頭を下げる柏原君は神谷君の事を本当に理解してあげてると思った。 神谷君が早く柏原君のこんな気持ちに気付いて素直になってくれれば……と思った。 「柏原君が謝る事じゃないよ。神谷君の事色々聞いて、今は冷静になれた。何だか……難しいね。もっと純粋に単純だったら楽に生きられるのにね」 「そうですけど……それはそれで楽しいと思います。難しいから理解しようとしたり優しくしたり話し合ったりするんじゃないのかな。皆んなが皆んな純粋で単純なら、そう言う努力しないでしょ?」 「柏原君って大人だよね。視野が広いって言うか………俺、年上なのに情けない」 「そんな事無いですよ。明石さんはたくさん良い所あります」 「はあ~~、海、心配してるだろうな」 「心配してると思いますよ。溜息吐いてますけど帰るの気が重かったら、俺のアパートに泊まりますか?」 柏原君の突然の誘いに戸惑う。 急に、何で? 俺を気遣ってくれてる? 確かに…逃げるように会社を出たから…気が重いのは確かだ。 考える俺を柏原君はジッと見て居た。

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