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第363話 番外編~和樹ver.~
俺が帰って来てから2時間近く経った頃、玄関からドアが開く音がした。
「ただいま」
和樹の声だ!
帰って来てくれた‼︎
ずっと待ってた時間が凄く長く感じたが、和樹が帰って来た事で、そんな気持ちも吹っ飛んだ。
直ぐにソファから立ち上がり玄関に向かった。
俺は和樹が無事に帰って来た事でホッとし、廊下に居る和樹の姿を見た瞬間に駆け寄り思いっきり抱きしめた。
「海?」
「良かった! 無事で……帰って来ると信じてた」
「何言ってんの⁉︎ 俺の帰る場所はここだよ?海の居る場所が俺の帰る所だよ」
嬉しい事を言ってくれる。
そう思ってくれた和樹が愛おしくて堪らない。
「そうだ‼︎ どこに行っても誰と会っても、俺が居る場所が和樹の帰る場所で、和樹が居る所が俺が帰る場所だ!」
「うん! 海、痛いよ~」
「悪い! ずっと心配だった」
「ごめんね」
「ん?酒飲んだのか?」
微かに酒の匂いがした、柏原君と?……違う誰かと?それとも1人で?
「柏原君と少しだけ。柏原君が追い掛けて来て……たぶん、お酒が入った方が話し易いと思ったんじゃないかな。柏原君に連れられて」
「そうか、ここじゃ何だから話はリビングでしよう」
俺は和樹の手を離さずリビングに向かった。
和樹の表情や態度から、思ったより塞いで居ないし冷静になってるように見えた……時間を空けた事が良かったのか?
それと柏原君と何を話したか…気になる。
リビングのソファに和樹を座らせ、俺も隣に座った。
そして俺から口を開いた。
「まず謝らせてくれ‼︎ 寝てて不可抗力だったとしても和樹に嫌な想いをさせた。済まない‼︎」
海が悪いわけじゃ無いのに……俺の事を気使い謝ってくれる……海の優しさだ。
「ううん……海が悪いわけじゃ無いのは解ってた……でも、あの時はショックで…ごめん。あそこに居られ無かった…逃げたんだ。ごめんなさい」
和樹の気持ちは解る。
誰だって恋人が他の人とのキス現場を見たらショックで、咄嗟に逃げてしまうだろう。
あそこで神谷君と対峙する強さが和樹にあれば……と思うが、それは性格的にも無理だろうしそんな勝ち気な和樹は和樹じゃない。
待ってる間に、そう思うようになった。
自分では冷静で居たつもりだったが…色々考える時間があった事で、本当の意味で冷静に考えられた。
「和樹が居なくなって、神谷君と並木と3人で話した。神谷君がどうしてあんな真似をしたのか聞いた」
それから俺は神谷君から聞いた話を和樹に伝えた
「そうなんだ。柏原君から聞いた話しと殆ど同じだ」
今度は俺が柏原君から聞いた話しを海に事細かく話した。
「そうか、高校生の思春期にそんな事があったら性格も変わるよな。それ程、神谷君にはショックな出来事だったんだな。ショック受けて何も言えない神谷君の代わりに怒ってくれた柏原君を信頼して依存していく気持ちも解らないではないが…自分の気持ちを優先にし、周りを巻き込んで振り回して良いって事にはならない。はっきり言っていい迷惑だ。柏原君と離れたく無いってだけで…俺達は振り回されたな」
海の言う通りだけど……昔の俺も神谷君と一緒だったから気持ちは解る。
俺は我慢する事で……俺と神谷君のやり方は違うけど……。
「それで柏原君の言う事も解るが、不安になってそう言う事をする神谷君に好きだって言ってやれば不安も解消されて落ち着くんじゃないか?」
「俺もそう言ったけど……柏原君は色々言ってたけど……長く付き合いたいから、今の神谷君じゃいずれこの先上手くいかなくなるのが目に見えてるって、俺にはそう言ってた。付き合ってなくても嫉妬させようと他の人に言い寄ったり、柏原君を束縛するような事したりしてるから、付き合ったら尚更酷くなるんじゃないかって、画策とかしないで素直な神谷君となら長く付き合っていけると、それに神谷君が気付くのを待ってる感じでした」
柏原君の気持ちと俺が思った事を憶測も含めて話した。
「まあ、あのままなら上手くはいかないな。お互い疑心暗鬼になるのは柏原君が言うように目に見えてる。お互い疲れてしまうだろうな。それと俺が思ったのは柏原君も男同士の付き合いに踏み込めないんじゃないのかなぁ~。好きな人とキスだけで男だったら済むわけがない。好きだったらキスもセックスもしたくなるもんだ。キスしてるなら、尚更その先に進みたいと思うはずだ。柏原君にも時間が必要だと言う事かも知れないな」
海の話す事も一理あると思った。
「そうかも知れない。それとね、柏原君はこの先色んな人と出会いお互い他に好きな人が出来るかも知れないしと言ってた。まだ自分でもどこまで神谷君の事好きなのか?はっきりしてない感じもした。かと言って…ほっとけないとも言ってた。あのままなら…また周りが振り回されるよ」
「お互いが好きなら時間が掛かっても落ち着く所に落ち着くさ。あとは柏原君が神谷君の事を見張り周りに迷惑掛けないようにするしか当面はないだろうな」
時間の問題か~。
人生にはタイミングってあるしね。
「何だか話しが2人の話しになってるが……和樹あのキスは無かった事にしてくれ! 触れただけでキスとも言えないようなもんだ。浮気現場を見たようなショックを与えたかも知れないが、俺は浮気はしない‼︎ 和樹だけを愛してる‼︎ それは信じて欲しい‼︎」
海は気にしてるんだ。
俺が辛い経験してるから…また同じ目にあわせた事で嫌な記憶を思い出させたんじゃないかって思ってるんだ……確かにそうだったけど……今の俺は幸せで……もう終わった事だと普段は思い出す事もないけど……海にとっては忘れられずに心の中に残ってるんだ。
それ程、あの時の俺は酷かったんだ⁉︎
自分では解らなかったけど……。
大好きな海の心にそんな記憶を残してる事が……申し訳無かった。
「和樹?」
「あっ!ごめん。確かに…ショックだったけど……海は寝ててキスされたわけだから…海の意志ではないって事は解ってるから安心して。だから……うん‼︎ 忘れた‼︎」
海も俺も神谷君の嫉妬と画策に振り回され巻き込まれただけだ。
「そうか! 許してくれるのか?」
「許すも許さないも海は何もして無いじゃん……1つだけ聞いて良い?」
「何だ?何でも聞けば良い」
「神谷君がキスして……その後……海が…神谷君のキスに応えようとしてたように見えたけど…海の手が動いて神谷君の後頭部に回しそうに見えた……それもショックで……違ってたら……ごめん‼︎」
……見られてたのか。
誤魔化すのは簡単だ……が、和樹には正直で居たい。
「あの時、うとうと…してて、キスされた時には和樹だと思い込んでた。俺にキスするのは和樹しか居ないから。それで…いつものように深いキスをしようとした所で、和樹から声を掛けられハッとした。ごめん‼︎」
申し訳なさそうに正直に話す海の言葉に嘘はないと思った。
俺の勘違いだと言い張ったり誤魔化す事もできたのに、そうしなかった海の言葉は信じられる。
「俺だと思ったなら……納得出来る」
そう言ってくれた和樹を思わず抱きしめた。
「ありがとう‼︎」
「でも、これからは気を付けて」
「解った」
チュッ‼︎
抱きしめてた腕から離れ和樹は俺に触れるだけの可愛い~キスをくれた。
……可愛い!
「消毒だよ」
自分で言って恥ずかしいのか照れてる姿も、可愛い~。
「もっと消毒してくれ」
俺の頬に手を当て触れるだけのキスから深いキスに変わった。
チュッ!チュッ!チュッ…少しだけ口を開けると和樹の舌が入ってきた。
レロレロレロ…チュパチュパチュパ……クチュクチュクチュ……
唇を離して
「これで、大丈夫?」
「あ~~‼︎ 和樹をこのまま抱きたいけど……色々あって、もう今日は疲れてだめだ。少し早く起きて明日の朝にシャワー浴びる事にして、このまま和樹を腕の中に抱きしめて眠りたい」
「ちゃんと早く起きて下さいね。じゃないと、俺が並木さんに怒られるんですから」
「……和樹が怒られるなら、早く起きる‼︎」
「じゃあ、良いですよ」
可愛く笑う和樹の笑顔を見て……安心した。
こんな時だからこそ和樹を抱きたい気持ちはあるが精神的に疲れてた。
こう言う時は和樹に癒されるのが1番だ。
帰る場所は俺が居る所だと言う和樹を胸に抱いて実感して眠りたい。
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