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第369話 番外編~和樹ver.~

「海、ありがとう。家に一緒に行ってくれた事もここに連れて来てくれた事も……そして父さんや母さんに話してくれてた事も」 「いや、俺がそうしたかったからだ。和樹に何も相談もせずにした事は悪かった。どうなるか?解らなかったし、和樹に言ったら ‘気にしなくて良い’って言うだろうと思ってな」 確かに、俺に言われたら……そう言ったと思う。 親の事はどこかで気になってたけど…このままでも充分幸せだったからだ。 「ここには、いつも来てたの?」 「ああ、最初は和樹の家に2度目に行った時だった。1度目は何も知らないご両親は和樹が世話になってる社長と言う事で、和樹の様子を聞けると喜んで迎えてくれた……けど、付き合ってる事や同棲してる事を打ち明けた時には、やはり顔が強張って態度も変わった。たぶんショックと信じたくない.受け入れ難いと言う気持ちだったんだろう結局、認めてはもらえず2度目に伺った時には、話しも聞いて貰えずに門前払いだった。それも覚悟の上だったが、やはり気落ちしてな。東京に帰る途中で展望広場の看板を見つけて行ってみたんだ。暫く、さっきのベンチでボーっと景色を眺めてたり次の事を考えたり、ご両親の気持ちを考えたりしてたが、周りに人が居てもっと静かな所で心を落ち着けたいと思ってた時に、あの小道を見つけて、そしてこの場所に辿り着いた。殆ど、人が来ないし静かで、このベンチで考えたり心を落ち着けてから家に帰ってたが、やはり和樹の顔を見ると情けないが弱音を吐いたりした。幾ら、ここで心を落ち着けても俺の1番の癒しの和樹には敵わないからな。それからは、和樹の家に行く度に必ずここに寄るようになった」 「そうだったんだ。ごめんね。てっきり大きな仕事の為だと思ってた。俺、何も知らなくてのほほんと生活してた。海に嫌な思いさせたり1人で矢面に立たせて……父さんと母さんの事もごめんなさい!」 「それは俺がしたいからした事だ。気にする事はないよ。ご両親の気持ちも解るし和樹が謝ることじゃないよ。確かに、ご両親に黙って同棲してても良かったかも知れないが……いずれは通らなければならない.はっきりさせないといけない時が遅かれ早かれ来る。俺は和樹がずっと実家に帰省しない事や家族と疎遠になってるのも気になってたし、そろそろそう話す時期だと思った。だから行動に移したまでだ。何度、門前払い食らっても絶対に認めて貰うまで何度だって通うつもりだった直ぐに認めて貰えない事も怒りも想定内だったし覚悟の上でそう決意してた。世間には認められなくても自分達の知合いや家族には認めて貰って気兼ね無く付き合いたいし同棲したかった」 「海がそんな事を考えてるなんて全然気付かずに居た。家族に黙ってるのは正直言って、後ろめたかったけど……。俺はこのままでも充分に幸せだと思ってたし……。男の人と付き合ってる事や同棲してる事を……やっぱり親には知られたくないって気持ちがあったんだ。父さんと母さんに話す事でどんな目で見られるか……怖かった。だから……黙ってれば皆んな幸せなんだ!って思ってた 俺はそんな自分勝手に考えてたのに……海、ごめんね……そして本当にありがとう」 「和樹の気持ちも解ってるつもりだったが、和樹には家族に後ろめたい思いを感じながら生活させたくなかった。そして付き合ってる事や同棲を認めて貰うのは……先を考えての事だ」 「先って?」 「やっと、ご両親に付き合う事や同棲を認めて貰ったばかりだが………和樹‼︎」 海が真剣な顔で俺に向き合う。 何だろう? こんな怖いくらい真剣な顔の海も珍しい。 もちろん真剣な顔で仕事をしてるのを見た事は何度もあるけど……怖いぐらいだと思ったのは初めてだ。 「何?」 「俺と結婚して欲しい‼︎」 えっ! 結婚⁉︎ 結婚って言った? 聞き間違いじゃ……ないんだ‼︎ 何て答えれば良いのか……返事は1つだけど…。 「……海は……俺で良いの?」 「もちろんだ‼︎ 俺には和樹しか居ないし離したくないし離れたくない‼︎ 狡いかも知れないが、男同士で付き合って恋人同士で居ても同棲してても…やはり心のどこかで不安なんだ。若い和樹には俺よりもっと良い男がこれから先出て来て和樹を拐(さら)っていくんじゃないか?喧嘩して拗れて離れていくんじゃないか?考えたら切りがないが…和樹を信じてないわけじゃないが、幸せであればある程和樹が離れていく事を考えると怖いんだ‼︎ 口約束の不確かな事より戸籍上で確実なものにしたい‼︎ 束縛しすぎだろうか⁉︎ 嫌か⁉︎」 海の露呈した事は……俺の心の底にもあった事だったから海の気持ちは凄く解る。 そこまで俺の事を……。 「海の気持ちは凄く解るよ。俺も海にもっと相応しい人が居るんじゃないか?俺より好きな人ができるんじゃないか?とか考える時があるから。海、もう一度言ってくれる?」 海は俺の両手を握り目を見つめ真剣な顔で話す。 「和樹! 俺と結婚して下さい! 大切にします! 幸せになろう‼︎」 幸せにしたいじゃなく幸せになろう‼︎って言うのが海らしい。 俺は笑顔で答えた。 「はい! 不束者ですが末長くお願いします!」 「和樹‼︎」 俺の体をギュッと抱きしめ、何度も「ありがと」と耳元で言われた。 「'ありがと’と言うのは、俺の方だよ」 海の背中に手を回し抱き合う。 そして体を離して俺の顔を見た。 「今日、ご両親に認めて貰ったばかりだから、結婚の件も焦らすに時間掛けて説得していこうと思う。これからは2人で、たまにご両親に会いにいこう。俺達の気持ちが変わらず真剣だと解って貰えば、きっと結婚も許してくれるはずだ」 「うん! たぶん大丈夫だと思うけど……焦る必要はないよね。俺と海の気持ちが変わる事がないんだもん」 「できれば、これから半年以内には許して貰いたいが……それもなるべく早くが良いが…」 「さっき焦る必要ないって」 クスクスクス……思わず笑ってしまった。 「1日でも早く和樹を本当の意味で俺の者にしたい……それで心から安心したいんだ」 焦る必要ないとか1日でも早くとか……海の心の内が凄く解る。 俺の親の気持ちを考えて…そして海の本当の胸の内と……それで妥協案で半年以内なのかな? 「俺はいつでも良いよ。旦那様にお任せします」 クスクスクス…… 旦那様と聞いて一瞬目を見開き、そして破顔した海は可愛い‼︎ 「俺の嫁さん⁉︎……奥さん⁉︎……じゃあ、俺に任せてくれ‼︎ 奥さん‼︎」 「はい。旦那様‼︎」 クスクスクス…… くっくっ……はははは…… 俺はこの日とこの時を絶対に忘れない‼︎ 俺の愛する人…そして旦那様……もう不安に駆られる事もないんだ。 これからは海を信じて側に居てついていこう‼︎

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