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見えない光18

「はい、水。身体……起こせるかい?」 ぼんやりしていたら月城が戻って来て、氷と水の入ったグラスを差し出してきた。 樹はのろのろと頭を動かそうとしたが、やはり身体が重怠くてピクリともしない。 「ごめんなさい……無理」 囁くようにしか出せない声で答えると、月城は優しく微笑んでくれた。 「謝らなくていいよ。じゃあ起こしてあげる」 月城はサイドテーブルにいったんグラスを置くと、ベッドの上にあがってきて樹の身体を抱き起こした。しっかり支えてもらっていても、またベッドに沈み込んでしまいそうな位、身体が重い。 月城は自分の身体にもたれ掛けさせながら抱っこしてくれると、手を伸ばしてグラスを掴んだ。 「ストロー、持ってくればよかったかな」 樹は必死に首を横に振り 「だい、じょぶ」 月城の手からグラスを受け取ろうとするが 「待って。そのままじってしててね」 そう言って、グラスの水を自分の口に含むと、顔を近づけてきた。 月城が相手でも、口移しに水を飲まされるのは嫌だった。でも、拒絶したくても動けない。 嫌々だったが、月城の与えてくれた水は、冷たくて気持ち良かった。自分の喉がコクコク鳴る音が聴こえて、ひどく喉が乾いていたんだな……としみじみ感じた。 「もっと飲む?」 3回口移しされた後、口の端から零れる水はを指先で拭いながら、月城にそう言われて、樹はのろのろと首を振った。 「も、いい。ありがと」 背もたれにと、月城が大きな枕を2つ折りにして、背中にあててくれた。 本当はまたベッドに横たわりたかったが、樹は大人しくされるがままになっていた。 「お腹は空いてる?」 樹はゆっくりと首を横に振ると 「僕……ずっと、寝てた?」 途端に月城が痛ましげに顔を顰めた。 「覚えてない?」 水を飲まされている間に、頭の中の靄は晴れていった。自分は病気で寝ていたわけじゃない。 叔父に次から次へとやらされた行為のせいで、意識が朦朧として……気を失ったのだ。 最中は何が何だか訳がわからなくなっていた。 まるで自分の意思をなくした人形のように。 でも、自分が何をされたか、どんなことをさせられたかは、全部……覚えている。 身体の奥からどろどろに腐って、真っ黒になっていくような気がする。 もう後戻りは出来ないのだ。 自分はもう、元には戻れない。 油断するとチラつく優しい薫の笑顔。 樹はぎゅっと目を瞑って、幸せな幻影を脳裏から追い出した。 「……覚えてる」 「そう……。辛い、よね……」 「辛く、ない。僕が、自分で、選んだことだから」 すかさず返した言葉に、月城は目を見張り息をのんだ。 そんな顔、されても困る。 月城さんは何も悪くないんだから。

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