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見えない光24

「黙れ!」 薫は締め上げた襟を掴んだまま、巧の身体を壁に押し付けた。 「あんたの言うことなんか、誰が信じるか!」 「ふん。だったら何故そんなにムキになるんだ。おまえだって本当は薄々感じていたんだろう? あの子に……特別な何かを。だから抱いた。あの子の誘惑に抗えずにな。違うか?」 「違うっ。樹は俺を誘惑なんかしていない」 「だったらどうして一線を越えたんだ。まだ幼い弟に、おまえみたいな真面目馬鹿が、何故手を出した? よーく考えてみろよ、薫。あの子は無邪気を装って、最初からそういう目的でおまえに近づいてきたんだよ。あの子とどうやって仲良くなった? おまえから近づいた訳じゃないんだよなぁ」 叔父の首を締め上げ、優位に立っているのは自分のはずなのに、叔父は少しも怯む様子はない。それどころか、憎らしいほどの嫌味な笑みを浮かべ、薫の弱点をついてくる。 ……惑わされるな。こいつの言うことに耳を貸すな。 薫はぐっと唇を噛み締めた。 まるで見てきたようなことを言っているが、こいつに自分と樹のこれまでの経緯など分かるはずがないのだ。 「勝手な邪推はやめろ。俺と樹の関係は、あんたが言うようなそんな不純なものじゃない」 途端に巧は下卑た笑い声をあげた。 「薫。やっぱりおまえは若いな。俺が何故、そんな想像が出来るのか分かるか? 俺自身が、あの子の誘惑に危うく乗りかけたからだよ。それにな、俺の研究室の助手をしている男が、うっかりあの子の誘惑に負けてな。ずるずると関係を続けているんだ。分かるか? あの子が自分の異常な性癖を満たす為に誘惑しているのは、おまえだけじゃないんだぞ」 薫は思わず、締め上げる手の力を緩めた。 ……樹が……こいつと? こいつの助手と? それは……誰だ。 「頭を冷やせよ、薫。少し冷静になって、よく考えてみろ。おまえはまだ若くてくそ真面目だからな。すっかりのぼせ上がっているだけだ」 薫は襟を手放すと、1歩後ずさった。 この叔父の言うことなど、信じたくはない。 自分の知る樹は、そんな子ではない。 でもだったら何故、こいつはこんなにも、自信たっぷりに言いきれるのだ。 「……嘘だ」 「嘘じゃない。証拠ならあるぞ?」 「……証拠?」 巧は乱された自分のシャツを直すと、嫌味な笑みを消して急に真顔になった。 「兄さんから樹のことを頼まれて診察を始めた時から、全て動画で記録を撮っている。それは兄さんに報告する時に全部渡してしまったがな。俺の研究室で樹が助手の男を誘惑している動画は、そいつに相談を受けた後で隠し撮りしていた。今、俺の手元にあるぞ? 観てみるか?」

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