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月の腕(かいな)に抱(いだ)かれた星9※
「熱は、ないみたいだな」
薫は独り言のように呟いて、力なく樹の額から手を外そうとした。その手首を、樹の細い指がきゅっと掴む。
「……っ」
緊張して頬が引き攣った。樹は黒目がちな大きな瞳で、じっと自分を見ている。その息遣いがさっきよりも荒い。
「気持ち悪いのか? 樹、吐きそうか?」
樹はゆるりと首を振り
「ちがぅ、っでも、あつい……っ」
掠れた声は弱々しくて、でも甘ったるい艶がある。
「あつい? でも熱は……」
樹が握り締めた手に力を込め、それを自分の身体へと引っ張っていく。樹に導かれた先は、下腹だった。戸惑い、手を引っ込めようとする薫の手首に絡みつく細い指に、意外なほどの力がこもる。
樹はひゅうひゅうと喉を鳴らして喘ぐと、もどかしげに薫の手を自分の股間に押し付けた。
……っ。
そこは、樹の言う通り、まるで火傷しそうなほど熱い。そして、細い身体の1部とは思えぬほど、大きくふくらんでいた。
「にぃさ、あつぅ……い、ここ、取って?はずし、おねがぃ……」
……取る? 外す? 何のことだ?
薫は混乱しながら、樹の下腹を覆うガウンを思い切って開いた。
「なっ……」
……なんだ、これは?
樹のソコが異様にふくらんでいたのは当然だ。完全に勃起したソコにおかしなものが取り付けられている。
「樹、これは」
「取って? は……外して?これぇ……」
樹は焦れたように身体を揺らして、自分のソコを手に擦り付けた。その表情は切羽詰まって苦しそうなのに、とろりと妖しい蜜を滴らせているようだった。
薫はゴクリと唾を飲み込んだ。
射精出来ないようにしてあるのか?
月城がこれを、樹に付けたのか?
さっき見た情景が、また鮮やかに脳裏によみがえってくる。
こんなおかしな道具を使って、2人はお楽しみの真っ最中だったわけか。
ただ普通に愛し合うだけじゃなく、より刺激的な快感を求めて。
父から、そして叔父から聞かされた、信じたくない樹の本性。その証拠を、目の前に突きつけられている気がする。
薫は、堰き止められても淫らに雫を溢れさせている樹のペニスを、食い入るように見つめた。怒りとも、激しい嫉妬ともつかぬものが、ふつふつと沸き起こってくる。頭が焼けるように熱い。そして、冷水をかけられたように凍っていく心とは裏腹に、身体も熱く滾ってきていた。
「月城に抱かれて、気持ちよかったのか?樹」
……ダメだ。冷静になれ。
「こんなものまで使って、あいつに抱かれていたのか」
「に、さん、ね、とって……」
薫は、むずかるような樹の懇願に顔を歪めた。
「ダメだ。あいつの代わりに、俺がおまえを満足させてやる」
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