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月の腕(かいな)に抱(いだ)かれた星13※
悲鳴のような大声をあげた樹の身体が、不自然なくらい弓なりに反り返る。瞬間、自分のモノを握り潰されそうな締め付けにあって、薫は思わずググッと息を詰めた。樹の身体が、自分を咥えたままガクガクと震え出す。
突き入れた自分のモノに押し出されるようにして、樹は高みにのぼりつめていた。
あぁぁ、あぁぁ、っと掠れた鳴き声が、いつまでも続く。
薫がはっとして彼の下腹をまさぐると、ソコを縛めている拘束具は外れていない。樹のそれは大きなままで彼の震えに合わせて揺れている。
出せないままで、中だけでイったのだ。
薫は、樹の細腰を両手できつく掴み締めると、ゆっくりと腰を引いた。わななく内壁が逃すまいとして絶妙な力で締めてくる。熱い肉が絡まりながら密着して擦れる感覚に、思わず呻き声が出てしまう。
「……っいつ、き、あ……っく……、ああ……っ」
ギリギリまで抜いた切っ先を、今度はズブズブと沈めていく。気持ちよくて堪らない。
薫はおめきながら、抜き差しを繰り返した。
……ああ、ああっ。頭が、煮えるっ。
細くて高い樹の喘ぎ声と、低くて太い自分の呻き声が、重なり合って共鳴する。イったばかりの樹の身体が、またガクガクと震え出した。
「樹っ、一緒にっ」
薫は激しく腰を使いながら叫んだ。声にならない悲鳴をあげた樹を、乱暴に揺さぶり続ける。
やがて、唐突にその時がきた。
樹の身体がしなやかに反り返るのと同時に、薫の欲情が決壊する。
目も眩むような暴力的な絶頂に、全ての意識がさらわれていく。
薫は奥まで突き入れたまま、動きを止め、激しい放出に身を委ねた。
自分の身体が自分のものではなくなったような激しい快感は、しばらく尾を引いていた。
やがて、潮が引くように感覚を取り戻していく。
薫は、ああ……っと深く呻いて、がっくりと樹の身体に自身の身を預けた。はあはあと荒い息遣いだけが、いつまでもおさまらない。
身体はこの上なく満たされていた。
放出の歓びに、じんわりとした疲労感までもが心地よい。
だが、身体の感覚と共に戻ってきた理性が、せつなく心を萎ませていく。
この交わりは歪だと、囁く声がする。
樹は、望んでいないのだ。
自分にこうして抱かれることを。
強引に奪ってしまった。
他に想う人がいる樹の身体を。
満たされた身体とは真逆の虚しさが、容赦なく心に押し寄せてくる。
薫は、泣いた。
樹のぐったりと沈んだ身体をかきいだき、声を押し殺して泣いていた。
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