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碧い兎3
「あいつの所に泊まりに行くんなら、俺のアパートに来い。あんな男の代わりぐらい、俺がいくらでもしてやる。おまえが家にいるのが嫌で、夜、外に出たいって時は、まず俺の携帯に電話しろ」
(……え……。……えっと……)
「約束出来るな? 月城にはもう絶対に会うなよ。どっか泊まるなら、必ず俺の所に来い。連絡くれたら、兄さん車で迎えに行ってやるからな」
多分、自分は今、ものすごい間抜け面していると思う。薫は冗談を言ってる様子はなく、すごく真剣な表情で、顔を覗き込んでくるけど……。
(……え、ちょっと待って。なんで急に、そういう話になったんだっけ?)
「っそんなの、無理だよっ」
「どうしてだ? 俺じゃあいつの代わりにはなれないか? おまえの話、ちゃんと聞いてやるぞ。どこか行きたい所があったら、いくらでも連れて行ってやるし、したいことがあれば、言ってみろ。俺に出来る限りのことはしてやる」
(……いや、そういうことじゃ、なくて)
「だいたい、社会人だとか親の塾の手伝いしてるとか言っていたが、見るからに胡散臭い男じゃないか。裏でおかしなことやってる遊び人かもしれないぞ。おまえは騙されているんだよ、樹。あんな男がおまえの恋人気取りで、おまえの身体に、……その、なんだ、ああいう痕が残るようなことをしているなんて、俺は絶対に許せない」
「っっ。ち、違うからっ。兄さん、あれは」
「なあ樹。おまえは、俺と月城と、どっちが好きだ?」
(……っ!?)
樹はびっくりし過ぎて、薫の顔を穴の開くほど見つめてしまった。
(……え。今、義兄さん、何て言った? 月城さんと義兄さんの、どっちが好き……って? ……え。どっちって……)
薫は怖い顔して、ゆっくり近づくと、樹の肩をがしっと掴んだ。
「兄さんより、あいつの方が大切か? 月城の方を選ぶのか?」
(……待って、義兄さん、何言っちゃってるの?!
だって、そんな、おかしいよ。
月城さんは、僕の恋人だって言ってるわけで。
……や、ほんとは違うけど。
でも、どっちが好きって言われても。
……や、もちろん僕が好きなのは義兄さんの方だけど。
でも……っていうか、義兄さん、顔が近いよ。そんな目で見られたら僕……)
「え、選べないよっそんなのっどっちって、そんな」
「いいから選べ。月城か兄さんか」
「むりっ。兄さん、言ってること、めちゃくちゃだしっ。つ、月城さんは恋人で、兄さんは兄さんじゃんっ」
「だから月城とは別れろ。おまえが寂しいなら、俺がそばにいる。あいつの分もずっとそばにいてやるから。なんなら兄さんがおまえの恋人になってやる。だからあんな男とは別れてくれ。頼むよ、樹」
薫はそう言うと、樹の身体をぎゅっと抱き締めた。
「……っ?!」
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