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君のことが好きだから3
「ふん。おまえが俺にお願いだと?なんだ、言ってみろ」
叔父の嫌な視線に怯みそうになるのを必死に堪えて、樹は再び口を開こうとして、薫に両肩をガシッと掴まれた。
「よせ。おまえが何を言う気だ?樹、にいさんと約束しただろう?」
能面のような無表情だった薫の形相が変わっている。その強い眼差しに睨まれて、樹は目を逸らした。
憎まれても、恨まれてもいい。
こうすることが義兄の将来の夢の為なのだ。
「僕、」
その時、ガチャっとドアが開いて、月城が姿を現した。そちらに視線を向けた樹は、驚いて息をのむ。
月城の頬には赤黒く変色した痣がある。唇の端も切れて腫れていた。
「月城さんっ」
樹が叫んで、薫の手を振りほどきながら立ち上がる。驚いた薫も振り返って、月城を見てはっと息を呑んだ。
「その顔、月城さん、どーしてっ?」
月城は顔を背けながら弱々しく苦笑して
「なんでもないよ。ちょっと転んで怪我をね」
……嘘だ。
恐らく叔父にやられたのだ。自分があそこから逃げ出したせいで、庇ってくれた月城が……。
樹は月城に駆け寄ろうとした。
その手を薫が必死に掴んでくる。
「樹、行くなっ」
「っ、離してよ!月城さんが、」
「ダメだ、樹っ」
薫は手を離すどころか、逆にぐいっと引っ張ると、腕の中に樹を閉じ込めた。
「離してってば。にいさんの、ばかっ」
もがく樹を薫は痛いほど抱き締めてくる。
「樹……約束しただろ」
「でも、」
「まったく……。何をやっているのだ。おまえ達は」
それまで黙っていた叔父の苦々しげな声が響く。
「月城くん。こちらに来なさい」
「……はい」
月城は樹たちの方を見ないようにして、少し遠回りしながら叔父のもとへと歩み寄った。
「話があるというから、2人をここに通したんだがな。とんだ茶番を見せつけられているのだ」
巧は苦笑混じりにそう言って、呆れたように首を竦めた。
「樹くんは、罪作りですから。きっと甥御さんもあの子の毒に当てられたのでしょう」
月城は静かにそう言って、巧の隣に腰をおろした。
自分を腕の中に閉じ込めている薫が、わなわなと震えながら月城を睨みつける。
月城は、自分のお願いを実行してくれているのだ。
樹は月城の顔をじっと見つめた。
昨夜、自分が電話でお願いしたこと。
薫が自分に愛想を尽かすようなことを言って欲しい。どんな酷いことを言って自分を貶めてくれても構わないからと。
そのお願いを、ちゃんと聞き届けてくれている。
ならば、自分も躊躇していてはいけない。
せっかく月城が、嫌な役割を演じてくれているのだから……。
「離してよっ!」
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