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君のことが好きだから6
「樹っ。頼む!ここを開けてくれっ、樹っ」
薫は叔父の制止する手を振り払って、奥のドアへと飛びつくと、ドンドンと叩いて必死に呼びかけた。
中から返事はない。ドアノブをガチャガチャと回してみるが、鍵が掛かっていて押しても引いてもビクともしない。
「薫。いい加減にしないか。おまえのやっていることはめちゃくちゃだ。樹は嫌がっているんだぞ」
馬鹿にしたようなため息まじりの言葉に、薫は振り返ってキッと叔父を睨みつけた。
「あんたが何か言ったんだな?樹に」
叔父は笑いながら首を竦めて
「何を言ってるんだ。俺がいつ、あの子に何かを言う暇があったっていうんだ?あの子はおまえが勝手に連れ出したんだろうが」
「樹を出せっ」
「自分で部屋に入って行ったんだ」
「ふざけるな!あの男と樹を2人きりにさせるなんて、どういうつもりだ!」
叔父はこれみよがしなため息をつくと、ドサッとソファーに腰をおろし
「頭を冷やせと言ってるんだ。少し落ち着いて自分のやっていることを冷静に考えてみろよ」
薫は叔父に駆け寄ると、掴みかかった。
「ドアを開けさせろ」
「樹は嫌がるぞ」
「そんなはずはない。樹は」
「おまえではなく、月城くんを選んだんだ。おまえも聞いただろう?樹が奥で休みたいと、月城くんに言っているのを」
薫は叔父の襟を掴んで締め上げた。
「樹はまだ子どもだ!あの男に騙されているんだ。いや、ひょっとしたら脅されて、」
「その子どもを勝手に連れ出して、おまえは何をやってたんだよ?ん?樹の身体を調べてみるか?おまえが自分の欲望の捌け口にした痕が、いろいろ残ってるんじゃないのか?え?」
叔父は口調をガラッと変えて、ドスの効いた声で問い詰めてくる。
薫はぐっと言葉を詰まらせた。
「俺から見れば、おまえの方が危ないんだよ。まだ中学生の弟に、おまえはいったい何をさせてる?セックスの相手をさせてたんじゃないのか?」
押し黙った薫の手を襟元から引き剥がし、巧はふんっと鼻を鳴らした。
「まあ、どうせ誘惑してきたのはあの子の方だろうがな。言っただろう?あの子はいろいろと問題があるんだよ。兄さんも手に負えない状態で困り果ててたんだ。だから俺が預かって、専門医をつけて保護することにしたんだよ。おまえもこれでよーくわかっただろう?」
「……嘘だ」
「嘘じゃない」
「違う。嘘だ。あの子は、樹はそんな子じゃない。きっと月城って男に、」
「薫。おまえにな、ひとつ、教えてやるよ」
叔父は少し声のトーンを落とすと、苦々しげに口の端歪めた。
「これは兄さんと樹の母親と俺しか知らないことだ。おまえには絶対に言うなと、兄さんには口止めされていたんだがな」
声を潜めて思わせぶりに自分を見上げる叔父に、薫は眉を顰めた。
「とにかく、そこに座れ、薫」
……父さんに口止めされていること、だと?……いったい……何を言うつもりだ。
叔父の言葉など信用ならない。
また樹のことを悪く言って、こちらを丸め込もうとしているに違いない。
薫は警戒しながら、向かいのソファーにしぶしぶ腰をおろした。
……何を聞かされたって、俺は樹のことを信じる。絶対に惑わされたりしない。
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