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君のことが好きだから7

「おまえ、兄さんから樹の母親との再婚の話は、どんな風に聞いた?」 「どんな風にって……別に。母さんが死んですぐに再婚したい人がいるから、食事会におまえも出席しろって言われただけだ」 ちらちらとドアの方を気にしながら薫が答えると、巧はふんっと鼻を鳴らして 「行ったのか?食事会に」 「行くわけがないでしょう。母さんの葬式が終わってまだひと月も経ってないのに」 「なるほどな。で、おまえの了承も得ずに、あの女と樹を家に呼んだのか、兄さんは」 薫はイライラと爪を噛んだ。 「あの人はいつもそうだ。俺の意見とか聞くことなんかないし、俺がどう思おうが気にしちゃいない。そんなことより、何なんですか?俺に教えることって。悪いけど俺はあんたの言うことも信じませんよ、早くあの部屋の、」 「まあ待て。おまえがそうやってぎゃーぎゃー騒ぐうちは、樹には会わせんぞ。まずは冷静になるんだな」 薫は大きなため息をついた。 「俺は冷静です。おかしなことやってるのはあなたの方だ。何故、月城って男を追い出さないんです。どんな経緯があろうが、あいつが樹にしていることは、」 「引き離そうとしたんだ、俺だってな。そうしたら樹のやつ、睡眠薬を飲んで自殺をはかった」 巧の言葉に、薫は息を呑んで叔父の顔を見つめた。 「…っ、自殺…?」 「まあ、あれは狂言だったと俺は思ってるんだがな。大事には至らなかったが、母親の方がパニックになって大騒ぎだった。それに樹は家出の常習犯だ。あの見てくれで夜中に街中をぶらついて変な相手を引っ掛けるよりは、月城が側にいる方がまだこっちの目が届く。兄さんだってあいつの母親だって、おまえが知らないだけでいろいろ大変だったんだよ」 ……家出。たしかに樹は家出を……。 初めて自分のアパートに来た時も、樹は家出をして友人の所に泊まると言っていた。 「だとしても、他に方法が、」 「だからな、薫。その為に俺が樹を預かったんだよ。勝手にしゃしゃり出てきて邪魔をしているのは、お前の方だ」 薫は唇を噛み締めた。 たしかに叔父の言うことは、いちおう筋が通っているように聞こえる。 だが、何かが違うのだ。 どこか、おかしい。 それはたぶん、叔父から聞かされる樹の話が、自分の知っている樹とは別人のようにしか思えないからだろう。 どうしても噛み合わない。納得がいかない。 ……やっぱり直接、顔を見て話さないと。 この話だって、樹の目の前で聞いてあの子の反応を見たい。そうでなければ納得出来ない。 何故、樹はこの手を振りほどいて、月城の方へ行ってしまったのだろう。 昨夜の樹は何処にいってしまったのだろう。 あんなにも幸せそうに微笑んで、自分のそばにいてくれたのに。 昨夜、夢で見てしまった樹の、儚げで寂しそうな姿が脳裏に浮かぶ。 ……違う。やっぱり違う。樹は……俺の樹は……

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