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月の想い・星の願い2

薫が差し出す紙切れを、樹は受け取った。 紙には、かっちりした四角い文字で 『藤堂薫 ○○○ー○○○○ー○○○○ いつでも電話してこいよ』 ……と書いてあった。 「…………」 樹はじっとその字を見つめた。 義兄に繋がる番号。 ここにかければ、義兄といつでも話が出来る。 「おまえ、なんでそれ睨みつけてるんだ? すごい怖い顔してるぞ」 はっとして顔をあげると、薫が笑いを堪えてこちらを見ていた。樹は顔が熱くなるのを感じて、慌ててぷいっとそっぽを向いた。薫は笑いを噛み締めながら 「なんかおまえって、いろいろと予測不可能なやつだよな」 そう言って、樹の頭を優しく撫でた。樹は飛び上がるほどびっくりして、思わずぱしっと薫の手を振り払った。 「……っ触んなっ」 咄嗟にそう言ってしまってから、ちらっと薫の顔を盗み見る。薫はちょっとバツが悪そうに笑って 「あーごめん。つい、な。そんなに怒るなよ」 出した手をどうしようかと、微妙にひらひらさせている。 「……怒ってない。びっくりしただけ」 (……義兄さんの手……叩いちゃった……) 樹は内心落ち込んでしまった。どうしてこういう態度を、してしまうのだろう。言わなくていいことを言ったり、優しくしてくれているのに嫌な反応をしてしまったり。 「な、樹。これからちょっと人が来るんだ」 「……え……?」 玄関のチャイムが鳴る。 「お。ちょうど来たな」 薫がそう言って玄関に向かおうとすると、樹は慌てて立ち上がった。 「ねえ。誰、来んの?」 焦った顔の樹に、薫はにっこりして 「紹介するから、おまえもおいで」 手招きして玄関に行くと、ドアを開けた。ドアの外に立っていたのは冴香だ。昨日、樹が風呂に入っている間に、電話して今日の約束をしていた。 「どうしたの? 急に。私に会わせたい人って誰?」 「ああ、呼び出して悪いな。冴香。俺の弟の樹だ」 「……え……?」 薫がドアを開けたまま後ろを振り返ると、樹は大きく目を見開いて、ドアの外の冴香と見つめ合った。 「樹。おまえ、こないだここに来た時に見かけてるんだよな?こちら、飯島冴香さんだ」 「……っ」 樹は驚いた顔のまま、固まっている。冴香は樹と薫の顔を見比べて 「……弟……さん?あ、前に話してくれた義理の?」 「ああ。ちょっと前にここに訪ねてきてくれたって話しただろう? 昨日、また来て泊まっていったんだ」 冴香はほっとしたように微笑んで 「そう。弟さんだったのね。もう……電話で言ってくれればいいじゃない。改まって会わせたい人なんて言うから、誰なのか考えちゃったわ」 「ごめん。びっくりさせたかったんだ」

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