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月の光・星の光38

(※描写で苦手と感じる部分があるかもしれません。閲覧注意です) 緊張に顔を強ばらせる和臣に、月城は穏やかに微笑むと 「もうすぐ回診の時間だから、少しだけ」 和臣は黙って頷くと、ゆっくり車椅子の前にまわった。 「巧さん」 月城が身を屈めて、車椅子に座る男の耳に囁くように声をかける。俯いていた男が、緩慢な動きで顔をあげた。 「……っ!」 息が止まるかと思った。 和臣は危うく声をあげそうになって、口をぐっと引き結ぶ。 のろのろと上を向いた男には、半分、顔がなかった。 いや、正確には、頭部左側が1部欠損していて左目も潰れている。顔全体に引き攣れたような火傷の痕があって、口も醜く歪んでいた。 男の右目だけがギョロリと動いて、こちらを見ている。が、視点が定まらず、絶えず落ち着かなく目線が揺れていた。 「大丈夫かい?和臣くん」 月城に声をかけられ肩をそっと掴まれた。 和臣はハッと我に返り、呆然とした表情で月城の顔を見上げる。 「……これが……あの男?」 「うん。巧さんだ。驚いただろう?ごめんね」 月城が哀しげに微笑む。 驚いた。当たり前だ。 こんな再会は予想外過ぎる。 「事故で……?」 「アメリカでね。事件に巻き込まれて……銃で撃たれたんだよ」 和臣はゴクッと唾を飲み込むと、もう一度恐る恐る車椅子の男に視線を戻した。 「銃でって……」 「奇跡的に一命は取り留めた。でも、身体の機能は大部分、麻痺している。脳の機能もね。喋ることも出来ないよ」 ガクッと膝から力が抜けそうになって、和臣は焦って手を伸ばす。月城はすかさず腕を掴んで支えてくれた。 「ショックを受けるのも無理はないよね。さ、こっちに。ここに、座って」 すぐ側にあるレンガで積まれた花壇の縁へと誘導されかけて、和臣は思わず足を踏ん張って抵抗した。 「平気。や、平気じゃないけど、いい。座んない」 嗄れた声が出て、慌てて咳払いする。 「俺が誰か、とか……分かるの?」 月城は首を横に振り 「いや……。多分、認識出来てないかな」 和臣は両足に力を入れると、再び車椅子の男を見下ろした。 ……これが……あいつ……? かろうじて原型をとどめている顔の部分にも、あの尊大で傲慢だった男の面影は欠片もない。 中身はともかく外見は、藤堂薫と同様、かなり見映えのする容姿だったのだ。 それが見る影もない。 髪は老人のように真っ白で、長身で恰幅の良かった身体も、肉はそげ落ち貧相に萎んでしまっている。 あの男だと言われなければ、全く分からない。いや、あの男だと言われているのに、自分の目が信じられない。 「銃で頭吹っ飛ばされて……よく生きてたよね」 呟く自分の声が、何処か遠くから聞こえた。

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