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朔2
気乗り薄で参加した金曜日の合コンは、薫が想像していたよりも案外楽しかった。
高校時代も大学に入ってからも、勉強とアルバイトに明け暮れていた薫にとって、酒を飲みながら同世代の男女とたわいもない話で盛り上がるのは、新鮮で刺激的な経験だった。
遊び慣れている悠貴の、厳選チョイスのおかげでもあるのだろう。参加した女の子たちの雰囲気も良さげで、不慣れで口下手な薫でもすんなり溶け込めた。
「おまえ、この後どうする?」
中座してトイレを済ませて手を洗っていると、悠貴がやってきて意味ありげな顔をした。
少し飲み過ぎたかもしれない。
ちょっと頭がぼんやりする。
「この後? 場所を変えるのか?」
この状態で2次会にも参加したら、間違いなく明日は2日酔いだ。
薫は濡らしたハンカチで火照る首筋を冷やしながら、首を傾げた。
悠貴はにやっと笑って
「おまえ、結構良さげな感じだったじゃん。飯島さんと」
「……飯島……?」
「とぼけるなよ。ずっと隣で話してただろ? 飯島冴香」
「……ああ……。あの娘か」
たしかに。隣に座った女の子は、かなりの美人だったが気取ったところがなく、話しやすくて楽しい人だった。薫が場の雰囲気にすぐに溶け込めたのも、多分彼女のさり気ない気配りのおかげだろう。
「いい娘だろ?あっちもおまえのこと、かなり気に入ってたみたいだしな」
「……ああ。いいな、彼女。美人なのに全然気取ってない。話しやすくて気配り上手だ」
薫の手放しの賛辞に、悠貴はちょっと苦笑して
「早速ノロケかよ。まあいいや。じゃ、彼女で決まりな」
「……決まり……って……何がだ?」
「俺と雄二で他の3人送っていくからさ。おまえは飯島さんをよろしくな」
(……なるほど。そろそろお開きだから、女性陣を手分けして送れってことか。たしかに、もうこんな時間だ。女性1人で帰らせるのは危ないな)
「分かった。彼女を家まで送っていけばいいんだな」
「そうそう。じゃ、頑張れよ」
納得して頷く薫の肩をぽんっと叩いて、悠貴は先に洗面所を出ていった。
居酒屋の前で悠貴たちと別れ、薫は約束通り、飯島冴香と肩を並べて歩き出した。
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