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想い2

カーテンの隙間から射し込む、朝日の眩しさに目が覚めた。微睡みが心地よくて、まだ起きたくない。薫は腕の中の温もりを確かめるように、抱き締め直した。 (……冴香のやつ……いつもはさっさと先に起きてしまうくせに、今日は寝坊か。こういうシチュエーションは久しぶりだ) 薫は半分寝惚けた頭で、腕の中の華奢な身体に指を這わせた。 冴香は着痩せするタイプだ。背が高くスレンダーだが、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。細くて長い手脚。括れたウェスト。だが、胸や尻は豊かで、男心をくすぐる肉感的な身体だった。 (………? 少し……痩せたか? そういえば、ダイエットしてるって言ってたよな) 薫は若干の違和感を覚えつつも、指先に感じる、滑らかな肌の感触を楽しんだ。柔らかい脇腹から胸へと指を滑らせる。擽ったいのか、腕の中の身体は、ぴくっと震えて微かに身を捩り始めた。 朝、起き抜けのセックスを冴香は好まない。目が覚めたら、またつれなく拒絶されるかもしれない。完全に覚醒してしまう前に、ぐずぐずにしてその気にさせてしまうか。 薫はスケベ心に負けて、ちょっと指の動きを大胆にした。両手を伸ばして、たっぷりとして弾力のある彼女の乳房を鷲掴みに…… (……!?) ない。あるはずの場所に、あるはずのふくらみが。 「っこの……変態!!」 這わせた手を思いっきり抓られて、薫は一気に覚醒した。 「寝ぼけてんの? あんた。それともそういう趣味、あるのかよっ」 冴香だと思っていた抱き枕は、薫の腕を引き剥がして起き上がった。ものすごい形相で睨みつけられ、薫は呆然とその綺麗な顔を見上げた。 「……樹……?」 「そ。俺。やっぱカノジョと間違えてたんだ?」 樹は片眉をあげた。その大きな瞳には侮蔑の色が滲んでいる。 (……そうだった。昨夜こいつを泊まらせて、一緒にベッドで寝たんだった) 「すっごい間抜け面だよ、あんた。女じゃなくて残念だったよね」 (……怒っても綺麗な顔だな) 薫は現実逃避気味にそんなことを考えながら、樹の顔をぼんやりと見つめていた。そんな薫の反応に苛立ったのか、樹はますます顔を歪め 「なんで黙ってんの? まだ寝惚けてるわけ?」 薫は自分の勘違いがだんだん可笑しくなってきて、思わず吹き出した。 「……悪い。寝惚けた。そうだよな、おまえだったんだよな」 薫がくくくっと喉を鳴らして笑い始めると、樹の顔に戸惑いが浮かぶ。 「……なんで、笑うんだよ」 「いや。自分の間抜けっぷりが可笑しくてさ。ほんと、ごめん。気持ち悪かっただろ」 樹は半分怒って半分不安そうな、なんとも微妙な顔をしている。それはそうだろう。気持ちよく眠っていたら男に身体をまさぐられたんだ。怒って当然だ。 薫は壁の時計をちらっと見て 「まだこんな時間か。起こして悪かった。もう少し寝てろよ」 そう言って、薫が起き上がりベッドからおりると、樹が焦ったような声が出した。 「っどこ、行くんだよっ」 「トイレだ」 薫は振り返り、不安そうに自分を見上げる樹に、照れ笑いしてから部屋を出た。

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