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迷い猫6

(……うわ。こいつ可愛くないな) とは思ったが、本当のことなので反論はしない。薫は首を傾げつつ、残りのカレーライスをつついた。 樹はペロっと1杯目を平らげると、水を飲みながら物言いたげに薫の方を見る。 「お代わりしろよ。まだまだたっぷりあるぞ。余らせても俺1人では食いきれないからな。好きなだけ食べろ」 薫がそう言うと、自分の空の皿に視線を落とし、ちょっと小首を傾げて悩んでから 「じゃあ……もらう」 皿を持って立ち上がると、台所に行った。 昨日から、なんだか、迷い込んだ猫に餌付けしてる気分だ。腹が減っているからなのか、もともと痩せの大食いなのか、樹は見た目は華奢なのに食べっぷりがいい。それも、がつがつと品のない食べ方ではなく、とても美味そうに綺麗に平らげる様子が、見ていて何だか楽しくなる。 (……俺は案外世話好きなのか?) 樹の食べる姿に、妙に和んでいる自分がいて意外だった。子どもが美味しそうに食べる姿を見て、幸せを感じる親の気持ちってものが、ちょっと理解出来た気がする。 (……いやいや。兄貴じゃなくて、父親の心境なのか? さすがにまだ早いだろう) 薫は何となく可笑しくなってきて、1人で苦笑しながら内心突っ込みを入れていた。樹がカレーライスの皿を片手に戻ってきて、こちらを見て変な顔をした。 「……なんで……笑ってんの?」 「何でもない。ちょっとな。思い出し笑いだ」 薫の返事に樹は微妙な顔をしたが、それ以上は何も言わずに、椅子に座ってまた食べ始めた。 「なあ、樹。おまえ、遊園地って行ってみたいか?」 昼食を終えると、走り回って汗をかいた樹にシャワーを浴びさせた。 樹は濡れた髪をタオルでわしゃわしゃしながら、ソファーに座っている。腹も満たされすっきりして、気持ちよさそうに寛いでいる樹に、問いかけると、樹は手を止めて顔をあげこちらを見上げた。 「……遊園地……?」 「ああ。半額優待券を貰ったんだ。一緒に行ってみるか?」 樹はじ……っと俺の顔を探るように見つめてから 「いいの、それ。カノジョと行く予定だったんじゃねーの」 「いや。あいつはそういうのは好きじゃないんだ。おまえがいいなら行ってみないか?」 樹は俯いて、今度は手に持っているタオルをじ……っと見つめてから 「……いいよ。行っても」 「よし。じゃあ出掛けるか」 薫がそう言って笑いかけると、樹はまた顔をあげ、何故か眩しそうに大きな目をパチパチさせた。
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