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朧月6※

「うううっんっう゛ーっんうぅんっうっっ」 巧の手が動く度に、樹は髪を振り乱して身悶えた。外に声が聞こえないようにと、猿轡を噛まされた口から、苦しげな声をもらしている。もう半分は意識が飛んでしまっているのだろう。月城は、泣き濡れて虚ろになっている樹の顔を、感情のこもらない表情でじっと見つめた。 こうなることは予想していた。樹が巧に連れられて、この研究室を初めて訪れた日から。 少女かと見間違うくらい、中性的で綺麗な顔だち。体つきもまだ幼くて頼りなげで、巧の好みにぴったりだった。 (……この子のおかげで……僕はようやく解放される……) 数年前の自分と樹の姿が重なった。 ほっとする気持ちと、後ろめたさ。本当は、かつての自分と同じ苦しみを味わう前に、助けてやるべきだなのだ。今この子を救えるのは、多分、自分しかいない。 でも……。それを実行に移すには、月城はあまりにも、巧に教育され過ぎていた。長い月日をかけて心も身体も躾けられていて、どうやったら巧の意に反した行動が出来るのかさえ、分からない。 「樹、どうだ?……ん?気持ち良くておかしくなるか?」 巧は興奮に掠れた声で囁きながら、大きなディルドを樹の中に打ち込んでかき回している。樹の白くて小さな尻の間に、グロテスクな黒のディルドが生えている様は醜悪で、眩暈がしそうなくらいエロティックだ。 前を塞がれたまま、樹は強制的に何度も空イキさせられている。そろそろ出させてやらないと、本当に気が狂ってしまうだろう。 月城は巧の指示を待たずに、樹の前の縛めを外してやった。 「樹。お待ちかねの天国だ。たっぷり出せよ」 巧は月城のやることを咎めることもなく、笑いながらそう言って、樹の前立腺を集中的に攻めたてた。 「っっっんぐーーーーっっっ」 樹の身体ががくがくと激しく痙攣する。ようやく熱の開放を許された樹のペニスから、熱い迸りが噴き出した。 ※※※※※※※ 義兄がぐっすり眠っている間に、樹は台所でご飯を炊いた。こないだカレーを一緒に作ったから、どこに何があるかは大体分かっている。 冷蔵庫の野菜室に人参と玉ねぎ。棚をのぞくと、調味料を見つけた。叔父が言ってたおじや。樹が作り方を聞くと、通いの家政婦はちょっと変な顔をしてから、紙に作り方を書いてくれた。 樹はポケットからくしゃくしゃになったメモを取り出し、まな板の上に人参と玉ねぎを置いて、包丁を探した。おじやを作るのは初めてだが、母と2人暮らしだった頃に、うどんとか卵のお粥は作ったことがある。こないだのおじやのように美味しく作る自信はないけれど、味見しながらなら大丈夫だろう。 樹は、どうにかこうにかおじやを作り終えると、火を止めて部屋の方へ戻った。 義兄はまだぐっすり眠っている。 ベッドの側に近寄って、樹は義兄の顔を見下ろした。 (……良かった……。兄さん……何も覚えてなかった……) さっき義兄が目を覚ました時、樹は怒られるんじゃないかとびくびくしてた。どうしてあんなことをしたんだと、罵られるかもしれないと怯えていた。でも、義兄は何も覚えていなくて、前と変わらず優しかった。 罪悪感はもちろんある。義兄が覚えてなくたって、樹は自分が何をしたか、全部はっきり覚えている。 樹は、義兄の顔に恐る恐る手を伸ばした。 義兄はくっきりした顔立ちの美男子だ。学校で女男と友達に揶揄われる樹と違って、すごく男らしくて格好いい。俳優の福○雅○にちょっと似ていると樹は心密かに思っていた。 この唇が、自分の唇を貪るようにキスをしたのだと思い出すだけで、顔が、身体が、かっと熱くなる。 (……好き。大好き。ダメだって分かってても、どんどん好きになる。この気持ち……どうしようもない) 起こさないように、そっと、樹は義兄の唇に、指先で触れた。 せつなくて、苦しくて、涙が、零れ落ちた。

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