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想いいづる時3

(……こないだの遊園地もそうだったけど、義兄さんと一緒の楽しい時間は、どうしてこんなに早く過ぎてっちゃうんだろう) 薫のお勧めのチーズハンバーグは、チーズがとろっとしてて本当に美味しかった。 せっかくバイトでもらった義のお金を、あまり使わせたら悪いんじゃないかと、樹は内心すごく心配だったが、薫は遠慮なんかするなと笑って、デザートのパフェまで奢ってくれた。 あまり話すことが得意ではない樹に、いろいろな話を聞かせてくれて、薫は凄く楽しそうに笑った。樹はそんな義兄の様子が嬉しくて、ずっと夢見心地だった。 食事の後、薫のお勧めで、図書館の近くの美術館に行った。 樹は美術館に行くも初めてだったから、ちょっと緊張していたが、薫がいろいろな展示品を分かりやすく説明してくれたおかげで、とても楽しく過ごせた。『アリスの庭』という中庭がとても不思議な雰囲気で、ひっくり返ったかえるにロボットが乗っかっているオブジェを、指さして笑う薫の笑顔に、樹は内心ドキドキしていた。 薫はすごく楽しそうに、よく笑う人だ。くっきりした顔立ちが、笑うと目尻に皺が寄って、こっちまでつられて笑ってしまいそうな、独特の雰囲気がある。 樹がつられて思わず頬をゆるめると、茶目っ気たっぷりに目をくりくりして 「お。笑ったな。おまえ、笑うと笑窪が出来て可愛さ倍増だ」 嬉しそうに言ってくれる薫に、樹は恥ずかしくなって、ついむすっとしてそっぽを向いてしまう。でも、薫の笑顔につられて笑うのは、ほんとは凄く楽しいのだ。なんだか心がぽかぽかあたたかくなる気がする。 美術館を出ると、薫は腕時計を見て 「夜飯にはまだ早すぎるよな」 そう呟いて首を捻った。樹は、薫が「そろそろ家まで送って行こうか」と言い出すかもしれないと、内心はらはらしていた。 (……まだ家には帰りたくない。もうちょっと義兄と一緒にいたい。 わがままだって分かってるけど) 「よし。樹。俺のとっておきの店に行くぞ」 「……?」 薫はまた何か思いついたのか、ちょっと悪戯っぽい目をして笑うと、信号を左折した。

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