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雨夜の月3

(……え……うそっ。月城さんに……義兄さんが会う? そんなのダメに決まってるじゃんっ) 樹は薫の顔を見て、ぶんぶんと首を振った。 「ダメだよっ。つっ、月城さんは、忙しい人、だしっ」 「社会人なのか? もちろん、それなら向こうの都合をキチンと聞いて、時間をとってもらうから大丈夫だ」 「そういう、問題じゃ、なくてっ。だって兄さん、月城さんに会って何、聞くんだよ」 「おまえが詳しいこと話したくないっていうなら、無理に聞いたりしないさ。ただ、俺はおまえの兄として、助けてくれたお礼が言いたいんだ」 (……兄さんは真剣な表情で、僕に迫ってくる。ちょっと、待って。顔、近いよ……っ) 樹は顔が火照ってくるのを感じて、仰け反った。 「俺、やだからねっ。義兄さんが月城さんに会うのなんか、絶対やだ」 「どうしてだ? 別に俺は余計なことは言わないぞ。お礼を言うだけだって」 「だって、そんなの恥ずかしいじゃんっ」 「恥ずかしい? どうしてだ?」 「格好悪いじゃん。俺、絶対にやだっっ」 樹は追求されて、何故か真っ赤になって焦っている。 (……なんでだ? 何をそんなに赤くなることがある?まさか……) さっき、樹はおかしなことを言っていた。何故キスマークがついてるんだと聞いたのに、「自分が好きになるのは男の人だ」と。キスマークは誰かに乱暴されて無理矢理つけられたはずなのに、その答えはちょっと噛み合わない気がしたのだ。 (……ひょっとすると……樹が好きな男の人っていうのは、その月城ってヤツなのか? だからこんなに真っ赤になっているのか?) だとしたら、樹の首筋や肩や背中についているこれは、やっぱりその月城って男につけられたんじゃないのか? 誰かに乱暴されたっていうのは、それを隠す為の言い訳じゃないのか? 薫はなんだか、ムカムカしてきた。 (……社会人だと言ったな。ちらっと見ただけだが、俺と同年代ぐらいに見えた。成人して仕事も持っている男が、まさかまだ中学2年の子供に手を出しているのか。 俺の、大切な、可愛い弟に) 薫は樹の両肩を掴んで、じっと顔を見つめた。 「樹。おまえ、正直に答えろ。誰かに乱暴されたっていうのは、嘘なんだな?」

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