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第17章.蒼い月1※

樹の身体にのしかかるようにして、その甘い蜜を貪りながら、薫は夢中になり過ぎている自分を、必死で自制していた。 (……ダメダ。モウヤメテオケ。コンナコトハ、イケナイ。ケダモノカ? オレハ) 樹がしがみついてきて、甘えるように鼻を鳴らし、ちゅくちゅくと舌を吸う。そんな樹に愛おしさが込み上げてきて、ダメだと思ってるのにどうしようもない。 この熱くて甘い唇を、自分は前から知っているような気がする。夢の中でこの甘い香りを感じていたような気が……。 薫がちょっと身をひくと、ちゅぱっ……と唇が離れた。樹はうっとりとした表情で、虚ろにこっちを見つめている。 潤んだ瞳。ほんのり染まった目元。長い睫毛に涙の粒が引っかかっている。そして誘うような赤い濡れた唇。 (……ああ……やっぱり俺は、この樹を知ってる。夢の中で、この唇を……) 「……もっとぉ……」 樹の掠れたおねだりの声が、鼓膜を通して脳を震わせた。 (……なんだろう、この狂おしい愛しさは。俺はこいつのことを……) 「……樹……」 樹は目を閉じて、柔らかそうな唇をぷくっと突き出した。薫は樹の小さな顔を両手でふわっと包んで、その抗えない甘い蜜に再び唇を寄せた。 ついばむような口づけは、すぐに熱を持って深くなる。互いの舌を絡め合って、吐息と唾液を与え合う。これはもはや親愛のキスを超えてる。いやキスすらも超えて……まるでセックスみたいだ。 ずくずくと下腹が疼く。溜まった熱が、どんどん形になっていく。 心の隅にある罪悪感も良識も理性も、この媚薬のような甘い衝動に、打ち砕かれて霧散していく。 ふいに、樹の首や肩についていた生々しい跡が脳裏に浮かんだ。 月城は、この樹を知っているのか。この唇を知っているのか。この可愛い愛しい生き物と、こんな風にキスをして、唇だけではあきたらず、柔らかい肌に点々と吸いあとをつけたのか。噛み跡まで。 (……許せない。なんなんだ、あの男。顔がちょっと綺麗なだけの優男じゃないか。何が愛おしいだ。ふざけるな。俺の樹に、ちょっかいかけやがって。まだ穢れのない樹の肌を汚しやがって) 眩暈がしそうな位、むかついてきた。あんな跡、消してやる。全部消して綺麗にしてやる。 薫は樹の唇を吸いながら、手を下に滑らせた。首に触れると樹は、んっと呻いて擽ったそうに身を捩る。薫は構わず樹のシャツの襟を掴み、左右に開いた。邪魔になる首元のボタンを外す。上から3つボタンを外すと、シャツの前を肌蹴させた。薫のしていることに気づいて、樹がはっとして目を開ける。 「……んぅ……?」 薫は唇を離すと、樹の形のいい鼻先にそっとキスを落とした。樹は擽ったいのか、またきゅっと目を閉じる。 そのまま、樹の顎にキスを落とし、唇を下に滑らせていった。耳の下、首筋、鎖骨。触れる度に樹は、小さく呻いて身を捩る。 (……可愛い) 薫は、目に飛び込んできた樹の首筋の紅い跡に、唇を寄せた。 「……っっぁ」 触れるだけのキスの後、じゅっと強く吸い上げた。樹は痛かったのか、きゅっと眉を寄せ、喘いで身を捩る。 樹の首に、つけたばかりの自分の刻印。薫は満足して次の跡に唇を寄せた。点々と散らされた朱の上に、自分の印を刻み直していく。薫は夢中で樹の白い肌に唇を這わせ続けた。 (……義兄さんのキスは気持ちいい。 あ……どうしよ。すっごく気持ちいい。触れたところがとろとろに溶けそう。甘くて熱くて、ほんと溶けちゃいそうだよ。 僕は、キスってほんとは好きじゃない。叔父さんに無理矢理されると、気持ち悪くて吐きそうになる。口から僕の身体の中が汚れてくみたいな気がして。 でも、義兄さんとのキスは、全然違う。胸がきゅんきゅんして、頭ん中がふあふあして、嬉しくて幸せで、全然違う) 樹は夢中で、薫の熱い舌をちゅうちゅう吸った。もっと欲しい。もっとして欲しい。 (……あ……。僕のお腹の下、むずむずしてきた。あの病気、始まっちゃったんだ。……どうしよう) 薫が急に口を離した。 ちょっと心配そうに顔を覗き込んできて、にこっと笑ってくれた。 (……格好いいな。義兄さんの顔。男らしくて優しくて、見てるとドキドキする。 ねえ、もっとキスして。義兄さんの唇が欲しい。僕、もっともっと気持ちよくなりたい。 義兄さんと、ひとつになりたいよ) 思わず唇を突き出すと、薫はまたキスをくれた。 (……ああ……嬉しい……。幸せだ……僕)

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