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蒼い月2
薫の熱い舌が、樹の舌をぎゅうぎゅう絡め取る。
(……こんなキス、僕、初めてだ。どうやって息すればいいのかな。酸欠かも……。頭ぽーっとなってきちゃった。もう何にも考えらんないよ……)
キスしながら、薫の手が、樹の首を撫でる。樹は擽ったくて、もじもじした。その手が、今度は樹のシャツの首元でもぞもぞ動く。いつの間にかボタンを外されて、シャツの前が開いていた。首のとこがやけにすーすーして、樹は、驚いて目を開けた。
(……義兄さん……?)
目が合うと、薫はふ……っと笑って、樹の鼻の頭にそっとキスをしてくれた。樹が思わず目を瞑ると、薫の熱い唇は顎から耳へ、首へと移動していく。
(……わ。それ、擽ったいよ、義兄さん。でももう、キス、してくれないのかな……。もっと、したかったのに……)
外された唇が、なんだか寂しくて、そんなことをぼんやり考えていた樹は、突然首のところにぴりっと痛みが走って、思わずびくっとした。
(……え……っなに……?)
慌てて下を見たが、首のところに顔を埋めている薫の頭しか見えない。痛みは一瞬だけで、後はじわじわと熱くなった。すぐにまた、ちょっとズレた場所がぴりっとする。
(……なんだろ、義兄さん、何やってる……?)
ぴりっ。じわじわ……は何回も続く。樹はその度にびくっとして、変な声が出そうになって困った。
(……なんだろ。身体がどんどん熱くなってきて、むずむずが強くなってきたけど)
「……これで全部だ。樹、うつ伏せになってみろ」
薫が顔をあげて、樹を見るなりそう言った。すごく真剣な表情で。
「………?……うつぶせ……?」
「首の後ろとか背中にもあった。全部、上書きしてやる」
樹はきょとんとして、薫の顔をまじまじと見てしまった。
(……え……。うわがき……って……なに? 義兄さん、何言って……)
「おまえの目、本当に大きいな。そうして見開いてると、ぽろっと零れ落ちそうだ」
薫はそう言って、なんだか眩しそうに笑うと、伸び上がって、僕の唇にまたキスをした。樹は慌てて目を閉じて、薫にしがみつく。
仰向けの樹の、見える範囲のキスマークは、全部、上書きしてやった。次は後ろだ。
自分は多分、この時、ちょっと逆上せていたのだろう。自分では冷静に考えて、至極当然のことをしている気になっていたが、後で考えたら全然、冷静なんかではなかった。
無垢な弟の身体に散る、紅い月城の刻印。そんなもの、あっていいはずがない。でも、だからと言って、その上から自分の印を重ねても、消せるはずもなかったのだから。
何をされているのか分かっていない樹の、あどけない綺麗な瞳が切ない。再びキスをすると、必死にしがみついてくる。
(……綺麗で可愛い、俺の弟。守ってやりたいと、痛切に思う。
この思いが恋だなんて、俺は知らなかった。今思えば馬鹿みたいな話だが、俺はこの時、全然分かっていなかったんだ)
月城につけられたと、嘘をついた吸い跡。薫がその跡を全部上から吸って、新しい跡をつけているのだと、ようやく気づいた時には、樹は薫に後ろから抱き締められていた。シャツは完全に脱がされて、首の後ろや肩に、熱い唇や舌が這い回っている。
(……義兄さんにこういうことされるの、嫌じゃないけど、恥ずかしい。だって僕の身体は熱くなって、お腹の下がすっかり硬くなっちゃってたから。
最初はただぴりっとして、じわじわしただけだったのに、義兄さんが触れる度に、むずむずぞわぞわして、何だか変な気分になってく。両手で口を押さえてたけど、時々、猫が鳴くみたいな声がもれて、ひやひやする。僕の身体がおかしくなっていくの、義兄さんにだけは知られたくないのに)
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